ミクスチャーという価値観はもはやことさらにいうべくもなく浸透して久しい。
ていうか、もはやミクスチャーという言葉自体が意味をなさない時代となったといっていいだろうね。
それこそ2000年代初頭に日本ではDragon Ashの存在によっていわゆるJ-POPシーンにも現れて、幾多のバンドによってフォローされまくるうちに普通の一つになってきたわけで、この辺りの感覚はある世代以降はピンとこないだろう。
かくいう私もギリギリリアルタイムでそれをみていた世代であるが、当時そんなに熱心に音楽を聴いていたわけではなかったので、結局後から振り返るような体感の仕方であったわけである。
ともあれ、そうして世間的に浸透する以前から当然インディーズシーンではすでに取り入れる人たちはいて、それこそエアジャム世代と呼ばれるバンド群はその代表格だろう。
中でもミクスチャーというジャンルで突出していたのはThe Mad Capsule MarketsとBack Drop Bombの2組ではないだろうか。
マッドはすでに解散して久しいが、BDBはまだまだ健在、幾たびのメンバーチェンジなどはあったが、結局今はオリジナルメンバーで活動中だ。
そして、彼らのデビューアルバムにして日本のミクスチャーロックの金字塔的アルバム『Micromaximum』のリリースから今年で20周年ということで、12月のリリース日には再現ライブを行う予定。
うっかりチケットを取り損ねてしまった私だが、せめてここで彼らを改めて知ってもらうために記事に起こした次第である。
無念。。。
ヤンキー感満載、でもセンス溢れるインディーズ時代
彼らは千葉県のヤンキーで1994年に結成されたバンドで、インディーズ時代からすでにミクスチャーサウンドを展開していた。
ハードロック、メタル、ヒップホップ、レゲエ、パンクなどが大きなルーツだろう。
初期代表曲といえばやはりこの曲である。
BACK DROP BOMB - BAD NEWS COME
野太いベースイントロもかっこいいわけだが、音源ではラッパも使っているのでレゲエ的な要素もあり、それがまた攻撃的な雰囲気をいい感じに出している。
当時からほぼ英詞の曲で、ハイスタよりも少し後のバンドながら、英詞ロックの走り的なバンドの一つと言っていいだろう。
彼らの特徴のひとつとして歌メロは結構ポップでメロディアスだったりする。
ツインヴォーカルの掛け合いもありつつなので、そうしたとっつきやすさは彼らの大きな武器の一つだろう。
この曲はデビュー前のEPに収録されている。
日本のミクスチャーの金字塔『Micromaximum』(1999年)
そして1stアルバム『Micromaximum』のリリースである。
音的にもどこか洗練されており、厳つさよりも何か新しいものがここから始まるような高揚感に満ちており、これだと一つだけ選ぶことが難しいくらい名曲満載。
本当にマスターピースと呼ぶに相応しいアルバムだが、これぞ彼らのミクスチャーと言える曲といえばこれだろうか。
BACK DROP BOMB「THAT'S THE WAY WE UNITE」
レゲエ調からロック調にと転調しまくりでライブでもいい感じにゆるさとハードさが心地いい。
こうした陽気さも彼らの魅力の一つだし、まさにミクスチャー的感覚に溢れている1曲だろう。
とはいえ、やはり実質アルバムのラストを飾るこの曲は最高に好き。
Flow (It's Like That) [PV] / BACK DROP BOMB
序盤は割と穏やかというか、ミドルテンポに展開していくんだけど、終盤に向けて徐々にペースが上がっていくような展開と、特にラストのヴォーカルパートの気持ちよさ。
カラオケで入っていたら歌いたいなと思っているんだけど、今のところ彼らの楽曲は1曲もない。
今聞いても余裕でかっこいいので、もし彼らを初めて聞く人があったらやはりこのアルバムをお勧めしたい。
ハードロック色強めな2ndアルバム『Nipsong』(2003年)
続く2ndアルバム『Nipsong』はロック色の強いアルバムになっており、ハードロックとか海外のミクスチャーが好きな人はこのアルバムの方がマッチするかもしれない。
Back Drop Bomb - Mastadabestah
例えばこの曲なんかはかなりヴォーカルも強めだし、重心重めな楽曲で率直にかっこいい。
特にギターなんかは雨たる色が強く、元々そういう出自なのかしら、などと思ったり。
このアルバムに収録されている”Remaind Me”という曲は、個人的彼らのベストソングの上位に入ってくるくらいめちゃくちゃ好き。
こちらも転調多めで、冒頭からのラップパートからサビ部分でのメロディーカートでのカタルシス的な展開。
てかどんだけ詰め込むんだという感じもするが、これはライブで聴くとマジでたまらんですよ。
ちなみにこのPVと音源では歌詞がちょっと違う。
このアルバムから、アルバムの冒頭では"Intro"、ラストは"Outro"という曲を必ず入れて、ダンスレコードっぽい作りがしばらく定番化する。
ロック×ダンスの3rd『breakdown』(2006年)
続く3rdアルバム『breakdown』では少し方向転換が見られる。
音楽的にはよりダンスミュージック的な色が強くなり、歌詞においても日本語詞が登場する。
ファンからは賛否両論があったことは言うまでも無く、確かに日本語の歌詞になると意味がダイレクトに入ってくる分、あまりクールではなかったのは事実だ。
ただ、曲そのものはカッコ良くて、私はこのアルバムが実はBDBはじめましてであった。
このアルバムの代表曲といえばこの曲ではないだろうか。
この曲のベースラインがほんと好き。
こういううねりながら展開していくようなベースラインって、カッコよくないですか?
乾いた感じのギターや、歌詞はともかくヴォーカルもメロディ自体はいいと思うんだ。
イヤほんと、英語詞で作り直してみてほしい。。。
それにしても、本当に1曲にいろんなものを詰め込むバンドだな。
このアルバムもなんだかかんだ言って好きなんだけどね。
メタル×メタル、4th『Venometeoric』(2008年)
続く4枚目『Venometeoric』は、今度はメタル色を強めた作品になっており、アルバムタイトルも、確かVenom(毒)とMetaricを合わせた造語だったかと思う。
私が初めてライブを観に行ったのはこのアルバムのツアーであったね。
アルバムの1曲目であるが、ドラム叩きまくり、ヴォーカルもめちゃ早い。
彼らのキャリア史上で最もアグレッシブなアルバムになっているだろう。
シンプルにかっこいいんだけどね。
ちょっとダサいくらいベタなシンセ音も入っているあたり、かなり狙ってやっているんだろうなと思う。
この当時は、すでにオリジナルドラマーの有松さんは脱退しており、ドラムはサポートだったかな。
彼らもこのアルバムの曲はあんまり好きではないのか、ライブでも演奏される機会は少ない気がするな。
ファンク×ロック、5thアルバム『The Ocracy』(2012年)
この辺りからややバンドとしては不安定というか、なんとなく突き抜けていないなと感じることが増えた気がする。
ベストアルバムを挟んでリリースされた『The Ocracy』は、彼らのレゲエ、ファンク的な要素を改めて出すようになり、楽曲的にもポップなものが多かった気がする。
ライブでもしばしば演奏されるこの曲は、代表曲の一つだろう。
冒頭から始まる早口パートもなんだか勢いがあっていいじゃないか。
タカとマサの2人のヴォーカルパートの色もより鮮明に違いが出てきている気がする。
日本語でちょっと厳つ目のところをマサが歌い、英語でちょっとクールなパートをタカが歌うというような。
ちなみに、この頃にはタカはAA=のメンバーとしても活動していたんだけど、あるときにふとタカがかなり意識的にヴォーカルを練習しているんかなと思うような場面があって、それをきっかけに彼の歌が好きになりましたね。
このアルバムでは珍しくゲストも迎えており、なんとあのハマケンである。
BACK DROP BOMB / READY ON THE GROUND FEAT. ZAINICHI FUNK (THE OCRACY Recording Off Shot Movie)
彼ららしいハードなサウンドにハマケンのポップで親しみやすいソウルフルな歌唱が思った以上にいい感じにマッチしているのだ。
何よりかなり耳応え的にはマイルドになっているのが驚きで、ハマケンのキャラクタというか個性というか、結構強いんだななんて思ったものだ。
一度だけライブで演奏する場面も見れたんだけど、ハマケンの踊りもキレキレでよかったね。
とはいえ、冒頭でも書いたようにこの頃のライブはどこかメンバーが噛み合っていないというか、なんか微妙な感じが多かった記憶だ。
ドラマーがサポートからメンバーとしてクレジットされていた人がはまりきらなかったのか、ライブでは毎回サウンドチェックで時間をかなり使っていた。
ギターには寿というこれまた強烈に個性的な人が入っていて、この人は結構嵌っていたんだけど、マサの方がなんていうか、投げやりな印象もあって、詳しくは分からないがなんとなく不和な印象だったので、私は当時このまま解散してしまわないかしら、と心配したものだ。
オリジナルメンバーでロック色強め、6thアルバム『Lofitication』(2014年)
しかし、その心配は杞憂だったようで、その後ドラマーは脱退、オリジナルの有松さんが復帰して、その後ギターの寿さんも脱退(以降はスポットでサポートしているらしい)を経たものの、様々なバンドが参加したトリビュートアルバム、EPを挟んで6枚目をリリース。
割とロック色の強い曲が多くなったが、メロウな曲も入っており、この辺りは何か心境の変化だろうか。
とはいえこのアルバムに収録されている”Road”という曲は、映画の『闇金ウシジマくん』に使用されるなど、また次のキャリアアップを期待させるようなところもあった。
BACK DROP BOMB "Road" LIVE CLIP from「59days preface」
彼らの曲にあっては比較的展開もシンプルでストレートな曲と言っていいだろう。
ライブでも、有松さんの復帰と言うこともあり初期の曲を多くやることが増えており、慣れ親しんだ曲ということもあってかなんとなく彼らも楽しそうな印象を受けるようになり、復活したやんけ!とファンとして嬉しくなったものだ。
ここ最近は活動はあまり活発ではなく、スポットでライブをやったり、直近ではライブDVD+未発表シングルのパッケージを出したりしている程度で、『Micromaximum』ツアー以外はこれといったトピックも出ていないのが実際である。
新しいアルバムも作っているとかいう話も出た気がするが、どうだろうか。
ともあれ、アルバムごとに様々な変化を遂げてきた彼らなので、ここらで一息ついて音楽的な冒険よりも本当に自分たちが演奏して楽しいと思える曲を演奏して楽しく過ごす、という期間だったのかもしれないしね。
来年から再びギアを踏んで、アルバムもリリースしてツアーもまたやってくれたら嬉しいね。
日本のミクスチャーロック(という言葉をあえて使う)を語る上では欠かせないバンドだと思うし、今聴いても余裕でかっこいい曲満載のバンドなので、是非一度聞いてみてほしいところである。