音楽放談 pt.2

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表現の手段として -These New Puritans

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日本でミクスチャーという言葉が流行ったのは2000年前後くらいのことだろう。

Dragon Ashラップメタル、というとちょっと違うけど、ロックにヒップホップ的な要素を取り入れてバカ売れしたことで一般化した。

その後ヒップポップなどという言葉も出るくらい同時にラップ音楽も市民権を得たものだ。

このミクスチャーという言葉、音楽に関していえばRed Hot Chilli PepperもRage Against The MachineもLimp BizkidもKornも日本ではミクスチャーとして紹介されているが、概してラップ+ロックという組みわせがあれば十把一絡げであった。

言葉だけを取り出せば異なる要素を混ぜ合わせた的なところなのだけど、そこはプログレと同じだろう。

その時の言葉だけが残って形骸化してしまうあたりがいかにもだが、まあ仕方あるまい。

シーンを表す言葉を生み出すのは難しいということだ。


さて、本来的な意味でのミクスチャーという言葉で考えると、最近の音楽はすべからくミクスチャーで、元々別の畑にあったと思われていた音楽がごちゃ混ぜに混ざっている。

寧ろ純粋な何かってなんだかわからないくらいだ。

もはやジャンルという枠組みで捉えること自体がナンセンスなのかもしれないね。

とはいえ、大きなくくりで見ればロック的なもの、ジャズ的なもの、クラシック的なもの、といった具合には捉えらえる訳で、その大きな枠組みの中で発展、進化させていると見ればそれはそれで面白い。

だけど、だんだんどっちのカテゴリから捉えるのがいいのかわからないバンドも出てきている。

その最たるものの一つがThese New Puritansだろう。


バンドのメンバーは双子の兄弟を中心にしており、音楽的なイニシアチブも彼らによる。

実際彼らの音楽の特徴の一つはドラムを中心にしたビートである。

そのドラムは双子の弟の方がやっており、兄貴がヴォーカル/ギターその他だ。

彼らはデビュー盤ではポストパンク、ゴス系の色が強く、バンド名自体もThe Foalの曲から取ったというから、ある方面からは絶賛され、ある方面からはかなり批判もされていた。

かなりダークで呪術的な雰囲気もあって、しかしロック的なダイナミズムもある曲もあって個人的には好きだった。

アルバムとしての構成もコンセプチュアルで、冒頭とラストが繋がっており円環構造になっているあたりも凝っていて素晴らしい。

続く2ndはさらに呪術性を増して、ポップさはやや減退したものの、ややホーリーな感じというか神聖さを感じさせるもので、奇妙な安らぎすらあったものだ。

その時に単独公演を見たのだけど、いわゆるロックバンドのライブというよりはアートパフォーマンスのようでもあったのが今でも印象に残っている。

そして3rdアルバムではもやはやロックのカテゴリからは外れている。

いわゆるチェンバーポップ的な色が強く、それまで音楽の中心にいたドラムも交代して、メロディが中心にある感じで、方向性も大きく変わったといっていいだろう。

もちろん彼ららしさみたいなものはあるのだけど、それまでのファンを突き放す結果になったに違いない。

一応日本盤も出ていたと思うけど、さして話題になることもなかったが、業界筋ではそれなりに評価を得ていたように思う。

その頃にもHosstessやサマソニで日本にも来ているが、完全に独自の世界であった。

特にサマソニでは深夜枠での出演で、客もまばらであったし、少ない客も"Elvis"だけ聴きたいみたいな人が多かった。

だけどそのライブがめちゃくちゃよかった。

もっと話題になってもよかったと思うが、サマソニの客に求められるものとは少し違ったのかもしれない。

でも、こんなライブやるバンドなんで少なくとも同世代では他にいないだろう。

そんな彼らも最近ではあまり音沙汰もなくて、個人的には待ちわびている、


で、アルバムもなかなか出ないので、とりあえずライブ盤を買って来た。

件の3rdアルバムの際のものであるが、完全にロックバンドのライブ盤ではなく、クラシックとかそんな雰囲気だ。

実際会場もホールのようなところで、オーケストラを率いてのライブである。

日本でも大御所と呼ばれる連中が金にモノを言わせてオーケストラと共演などということはあるわけだが、彼らの場合音楽的な必然性がある、ていうかこれが普通なくらいだ。

荘厳な雰囲気がここまで似合うバンドってないだろう。

聞いていてカタルシスを覚えるタイプの音楽ではないのだけど、世界観に浸るという意味では最高である。

もっとも、眠くなるという人の方が多いのかもしれないけど。


彼らはクラシックとロックのミクスチャーと呼べなくもないけど、もはやそんなジャンル分け自体がナンセンスに思えてくる。

要するに表現したいものがあって、それを形にする時に何を選ぶかだけの話である。

彼らは音楽だけでなく、ファンションモデルもやるし、ディオールとコラボして香水も作っている。

ユニクロのモデルもしていたことがあるのだ。

彼らにとっては音楽もその手段の一つでしかなく、それゆえいい意味でこだわりがないのだろう。

音楽性の割にそのフットワークの軽さが素晴らしいよね。


いずれにせよ大きく売れるバンドではないし音楽性でもないと思うけど、違う世界を覗くという意味では非常に面白いバンドだと思う。

普通に綺麗な曲もたくさんあるので、この秋に是非。


"Fragment Two"