音楽放談 pt.2

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美学 -Plasticzooms

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美学という言葉がある。

その人のこだわりとか価値観の根本のような意味合いで使用されることが多いけど、この人には独特の美学があるんだろうなと感じる人はちょいちょいいる。

街を歩いてさえ、きっとこの人は独自の美学があるんだろうなと感じる人はいるし、そういう人はやっぱり隠せないし隠す気もないのだろうと思うけど。

仲良くなろうと思うとやっぱり感性がうまく合うかどうかによるわけで、しかしそこまで色の濃い人とはなかなか難しいだろう、というのが実際だ。

まあ、大体は根はいい人が多くて、単に面倒臭いだけという場合が多いんだけど。


私の好きな日本人バンドの一つでLilies and Remainsというのがあって、彼らも独自の音楽的な美学を持っている。

音楽性はポストパンク、ニューウェーヴ期の音楽を参照しており、Depech ModeやEchoe and the Bunnymenなどの音楽を現代的にアップデートしており、高い評価を得ている。

ただ、いかんせん売れたいという野心のなさとマイペースすぎる活動により大きく売れることがないのが残念だが、もし80年代の少しとんがった音楽が好きな人だったら確実に刺さるものがあるだろう。

そんな彼らと仲の良いバンドとして一部で知られているのはThe NovembersとPlasticzoomsである。

いずれもやはり80年代的な音楽が一つの参照点だが、前者は割と日本のヴィジュアル系や90年代のUSオルタナ系の要素も強く、後者はよりエレポップ的な感じが色濃いバンドである。

私は気がつけばいずれもよく聴いているし、ライブがあれば積極的に観に行きたいバンド達だ。

彼らは音楽性は近しいところがありつつもそれぞれに異なる要素もあり、しかし独自の美学を貫いているバンドたちで、日本のバンドながらに世界に通じる要素もあると思う。


で、来週にはPlasticzoomsの新譜が出る。

EPは2014年に出ており、その作品はシンセポップの色が全開で、彼らのダークな佇まいとは裏腹に非常に明るくて爽やかで、晴れた日に元気に出かけるときにBGMにはもってこいな作品だった。

それを踏まえての新譜は、彼らが名刺的な作品を作りたかったというところで作られたアルバムなので、どんなものを出してくるか非常に楽しみなのだけど、インタビューなどを見る限りはかなりポップでアッパーな作品に仕上がっているように思われる。

楽しみだ。


そんな彼らのアルバムのうち、今日書くのは2ndについて。

これを2ndと呼ぶべきか、1stフルアルバムと呼ぶべきかは微妙なところだが、それは置いておこう。

彼らの1stはイメージとしてはThe Horrorsの1stと近く、Bauhouse的な猥雑でパンキッシュな色の濃いものだった。

私が最初に聞いた音源はこれだったし、まだ音源未聴で観たライブのイメージもそんな感じだったので、バンドの音楽的にもそういうバンドなのだと捉えていた。

それは決して外れていないけど、それ以降のアルバムを聴いていると、どちらかというとキラキラした音色とロマンチックな空気感こそが本質なのではないかと思うよね。


で、この2nd『Starbow』であるが、このアルバムはヴォーカルでこのバンドの実質的な全てと言っていいShoの美学というか、センスというか、そういうものを徹頭徹尾追いかけたものだという。

このアルバムのイメージを一言で表現すれば星空である。

Starbow(星虹)という言葉からもそれは明らかだろう。

1曲目はインストなのだけど、絵本のBGMにでもなりそうな曲である。

2曲目は一直線に空を目指すみたいな展開の曲で、とっても爽やか。

もちろんアルバム中には1st的なパンキッシュな展開の曲もあるけど、でもすべからくロマンチックな感じの曲ばかりで、とても綺麗な音楽だという印象を抱かせる。

歌詞に目を向けると、どちらかといえば内向的なものが多く、1人部屋で述懐しているようなものが多い。

ラブソングといえばラブソングだけど、まるで昔話のような語り口である。

中には少しコミカルな印象のものもあり、"Cat"という曲で飼い猫の真理を描写しているようなリリックだけど、それも人懐っこさよりは飼い猫を演じているようなところがあって、冷めたような態度とも言えるが逆説的に愛を感じる内容でもある。


こうして詩の内容を見ていくと、多分この語り主は直接本人に愛の言葉を伝えることはしないし、多分周りからも何を考えているかわからないと言われているような人だと思われる。

でも、内実はそんなことはもちろんなくて、たんに思っていることをそのまま言葉にすることをしないだけで、そんなあからさまなものをどこか信じていないだけのように思われる。

それが周りに理解されにくいだけで、きっと本当はいい人で、世界平和を本気で願っているタイプのように思われる。

まあそれは半ば妄想に近い想像なのだけど、歌詞の表現や音楽から滲んでくる暖かさみたいなものは彼の本質だろう。


ちなみにこのバンド、このアルバム制作当時は5人だったのだけど、音楽的なイニシアチブはSho1人が握っており、実質彼の作りたい音を作るためにメンバーがいたというようなアンフェアな関係性だったようだ。

その後メンバーの変更や、今は3人になってしまったことを考えると、表現という意味においてはかなりセルフィッシュだったのだろうと思うし、今回の新作に合わせてかはわからないが、バンドのコンセプト自体もShoの表現の一つとして存在し、全ての権限が彼にあるということが宣言されている。

それについていこうというメンバーが2人だけだったというわけで、それはそれで寂しさはあるものの、逆にいえばそれでもなお彼についていこうと言ってくれるメンバー2人に対する信頼は大きいだろうね。


新作も間も無く出るタイミングではあるが、過去作についても是非じっくり聴いて見てほしいバンドである。

特にこのアルバムは、今のような冬の時期にはぴったりの音楽だ。

前編英詞なので、言葉の意味に縛られずに耳に入る音だけで楽しめると思うので、聴いて見てほしいですね。

”Shooting Star”