音楽放談 pt.2

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今こそNine Inch Nailsを聴け(前編) -Nine Inch Nails

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90年代オルタナ世代の生き残り達はみんな元気だ。
 
スマパンはオリジナルメンバーでの再結成の話がついたり消えたりしているが、その間にソロ作などをしれっと出している。
 
Rageのメンバーはザックがあまりに仕事が遅いのか、結局別バンドでやっている。
 
Soundgardenはクリスがなくなってしまったので再始動したが止まってしまった。
 
Foo FightersQueens Of The Stone Ageも、新しい側面を見せつつ高評価を得ている。
 
そのほかマンソンも新作をちゃんと出しているし、先に出たリアムの新作は軒並み高評価を獲得している。
 
デーモンはゴリラにブラーにと大忙し、マイブラは新作を出すとかださないとか。
 
年齢的にもキャリア的にも完全にベテランな人たちだが、相変わらずアグレッシブでみんな攻めているのは頼もしい限りだ。
 
 
他のバンドが解散や休止、メンバーチェンジを経ている中で、割と途切れることなく活動しているのが我らがNine Inch Nails=Trent Reznorである。
 
NINとしての活動は一時休止状態があったが、その間ソロ作など含めずっとコンスタントに活動しており、特に最近はリリーススパンも短くなっている。
 
かつては4年に一度が当たり前だったのに、すっかり元気である。
 
音楽性も少しずつ変わってはいるものの、彼なりに進化も見えて、ファンとしては嬉しい限りだ。
 
また、他方では彼の90年代のインダストリアルと呼ばれた音楽が参照される機会も増えており、数年前のカニエほか、今年リリースされたHorrors、St. Vincentの新作においても大きな参照点になっている。
 
混沌とした時代にはこうした無機質と呼ぶべきサウンドがマッチするのかもしれない。
 
ともあれ、そんな今だからこそ改めてNine Inch Nailsの(個人的に)抑えて置くべき楽曲を勝手に紹介しておこう。
 

■記念すべき1st『Pretty Hate Machine』(1989年)

まずは何と言ってもこちら。
 
1stアルバム『Pretty Hate Machine』の1曲目にして未だにライブラストを飾る文字通りの代表曲"Head Like A Hole"。
 
ミニストリーのアルからは「ただのポップバンド」などと評されてもいたくらいだが、いわゆる「インダストリアルというよりはエレポップに近い曲ではあるが、何と言ってもその歌詞である。
 
「I Rather Die Than Give You Control」というこの1節に彼の哲学の根本が要約されていると言っていいだろう。
 
一時はメジャーレーベルとも契約していたが、早々に自主レーベルを立ち上げ、その後はずっとメジャーでインディーはスタンスを貫いている。
 
彼の根本はここから始まっているのである。
 
 
続いては同じく1stからこちら。
 
 
"Sin"を出そうと思ったけど、あえてここでは ”Something I Can Never Have”を。
 
彼のキャリアの中でも変わり種の1曲である。
 
もともとのメロディの美しさと、鼻にかかりながらもすんだ若かりしトレントの声も十二分に堪能できる1曲だ。
 
彼の書く曲にはしばしば喪失感や、俺には手に入れられたはずなのに、という後悔のような念を歌う曲があるのだけど、この曲もその系列だろう。
 
ライブアルバム『And All That Could Have Been』のバンドルで入っていた『Still』収録のピアノverも実に美しい1曲である。
 
この映像がそのverであったので好都合。
 
大好きだ。
 

■怒りまくったEP『Broken』(1992年)

1stの頃はそれほど話題になっていなかったらしいが、彼を一躍スターダムに押し上げたのは2枚目『Broken』の伴うツアーである。
 
1stのレコード会社TVTとかなりもめたらしく、当時彼は裁判のための費用を稼ぐためにツア~をしていたとか。
 
その怒りを込めたこのミニアルバムは、実に激しい内容になった。
 
代表曲は何と言ってもこれ。
 
"Wish"であるが、この曲でグラミー賞も獲得することになる。
 
いわゆるインダストリアルと言ってイメージするようなノイジーなギターと、レイヴのようなリズムが実にかっこよく、しかもサビの爆発もあって実にキャッチー、こちらも中盤に放り込まれる爆発曲で、モッシュ必須である。
 
この頃にロラパルーザで泥まみれのパフォーマンスが話題となり、彼は一躍時代の顔の1人に躍り出た。
 
まだまだ細身で、やや病的な雰囲気は一部の女子の心を鷲掴んだとかなんとか。
 
このミニアルバムは全編素晴らしいのだけど、一方でPVも過激さが話題になっていた。
 
 ザ・インダストリアルな1曲"Happiness In Slavery"
 
このミニアルバムのテーマは人とで言えば「怒り」だろう。
 
激しく歪んだノイジーサウンドは、ミニストリー譲りのインダストリアルであるが、それでもポップさは欠かせないのは彼の何よりのすばらしさだろう。
 
ちなみに、このアルバムからリミックスアルバムを兄弟作としてリリースするようになっていた。
 

■Industrial/Alternativeの金字塔2nd『Downward Spiral』(1994年)

続いては、彼の代名詞的作品でもあり90年代を代表するアルバム『Downward Spiral』である。
 
インダストリアルというジャンルを完結させたと言っても過言ではないだろうこのアルバムは、そのテーマにもかかわらず大ヒットアルバムとなり、このリリース後彼はアメリカで影響力のある25人に選ばれるなど、まさに時代の寵児となる。
 
そんなアルバムの代表曲はいくつもあるが、まずはこちら。
 
先行シングルにもなった”Closer”。
 
このアルバムに入っている曲の中では比較的ポップで聴きやすいと思うが、独特なねじれ具合というか、暗鬱さを感じさせる曲である。
 
歌詞も過激だが、よかったら調べてください。
 
ちなみに、このアルバムを製作当時、トレントは「売れないアルバムを作っちまった」とプロモーターに漏らしたらしいが、それに対してプロモーターが「Closerがあるから大丈夫だ」といったとか。
 
もっとわかりやすい曲といえばこちらだろう。
"March Of The Piggs"である。
 
この曲もわかりやすいインダストリアル的な無機質なドラムとノイジーなギターの交錯する素晴らしい曲である。
 
ちなみにこの音源のドラムは全て打ち込みによるもので、生ドラムではないらしい。
 
トレントの変質的なところがうかがえる話だろう。
 
でも、今でも余裕でかっこいい曲である。
 
 
で、このアルバムを語る上では欠かせないのはやはりこの曲である。
希代のバラード"Hurt"である。
 
遅ればせながら、このアルバムのテーマは自殺である。
 
1曲目の自己否定から始まって、自分の頭に引き金を引くところで一つの幕を下ろすのだけど、そのあとにアルバムラストを飾るのがこの曲である。
 
絶望の中に一筋の希望を託したこの曲は、『Downward Spiral』を単なる鬱アルバム以上にした何よりの存在であり、トレントのプロデューサー的能力というか、コンセプトの構築力を物語っている。
 
日本盤にはJoy Divisionの"Dead Souls"のカバーがボーナストラックとして収録されているのだけど、この曲はアルバム中盤に差し込まれている。
 
これは、トレントがどうしてもアルバムの流れ上犯したくないものがあったからというのは有名な話である。
 
余談だけど、このアルバムのリリースは94年で、奇しくもあのカートが自殺したすぐ後くらいのリリースだったはずである。
 
故に、その喪失感を彼があたかも代弁したかのように受け取られてしまったことはあったらしい。

 

 ■歴史的名盤3rd『The Fragile』(1999年)

この次にリリースされたのは、個人的には最高傑作だと思っている2枚組の超大作『The Fragile』である。
 
1曲目から大好きなんだけど、私はこのアルバムがNIN初めましてであった。
 
この曲はまだインダストリアルっぽさを感じさせるのだが、実質それがあるのは前半のみで、より多様な音楽性を見せるのがこのアルバムである。
 
全体的に静かで地味で、どんどん水中奥深くに潜っていくような展開のアルバムである。
 
キャリア随一のバラードで歌詞も美しいタイトルトラック"The Fragile"。
 
先に紹介の『Still』にはこの曲のピアノverも収録されており、必見だ。
 
他にも最近改めて話題のこんな曲もある。
 
日本のファンにとっては思い出深い1曲"Starfuckers. inc"。
 
あの人も出演しているこのPVは必見である。
 
ちなみにファンの中でも実は賛否があり、このアルバムにあって毛色の違う楽曲なので、合ってないという声と嫌だからこそ、という声が半々である。
 
私は大好きだ。
 
ただ、私個人的に一番好きな曲はこの曲である。
 
"Into The Void"。
 
「try to save myself, but myself keep slipping away」という1節を中心に、当時受験生だった私にはひどく刺さったのである。
 
当時、といっても聴いていた当時なので、2002年とかなんだけどね。
 
その頃から聴き始めたのである。
 
ちなみにこのアルバムには、こんなちょっとヒップホップ的な要素を取り入れた"The Big Comedown"という曲もある。
 
これらを見てもわかるように、すでにこの頃にはインダストリアルというジャンルではくくれない多様な音楽性を示しており、すでに別次元にいたことがわかるはずである。
 
 
彼の場合、やっている音楽はかなりコアだし、どちらかといえば玄人筋が唸るようなプロダクションなどがとても大きな要素だった。
 
だって、トレントは絶対オタクだから。
 
一方で、もともと音楽の目覚めにはEaglesQueenといったスタジアムバンドであって、故に彼の中には成功に対する健全な欲求もあったのである。
 
それがこうしたポップ性につながっているのだろう。
 
ミニストリーは発明者の1人だと思うけど、このジャンルが今も参照されるまでになったのは、やはり彼の功績が圧倒的だろう。

 

 ■映画のサントラ(90年代)

彼のキャリアはこのアルバムで一つの区切りを迎えると言っていい。
 
最後に2曲のシングルを紹介して、NINおさらい前編は終わりである。
映画、『Lost Highway』の際に書き下ろされた"The Perfect Drug"。
 
NIN史上、随一にポップな1曲だ。
 
そしてこちらは『Tomb Rader』に提供された"Deep"。
 
この頃から映画にはちょくちょく関わっていたのである。
 
どちらもアルバムの曲からは少し毛色が違うが、それ故に彼のポップな側面が割と素直に出ている名曲である。
 
チェックされたし。
 
続く・・・

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