音楽放談 pt.2

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新たなるステージ ―Nine Inch Nails in Fuji Rock Festivsl

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今週末はフジロックフェスが開催されている。

毎年良いラインナップを揃えてくるので、行こうか行くまいか迷うのだが、なんだかんだ見送ってきた。

一つに地理的要因、一つに割と毎年忙しい時期、そしてもう一つは天候の問題である。

野外フェスであるが故に、雨は非常にキツい。

しかも、フジは毎年かなりの豪雨に見舞われている。

だから今まで敬遠していたのであるが、今年はついに参戦した。

何故なら、それはNine Inch Nailsが出るから。

それだけだ。

それだけで私が参戦するには十分であった。


NINは2009年に活動休止後、当時はもうNINとして音楽活動をするかは不明であった。

少なくともツアーには消極的なコメントを発していたので、既に諦めていたんですね。

その間の活動はと言えば、『Social Network』に代表されるサントラワークやゲーム音楽などの裏方か活動、またHow To Destroy Angelsのように自身は一歩引いたところでの活動であった。

その時のサウンドは、『Ghost』を発展させたような世界で、トレント自身の音楽遍歴を総括するような印象もあった。

もともとこのアルバムを作った動機も、極純粋な衝動である。

「白昼夢のサウンドトラック」と自ら語ったように、アンビエントな電子音と生楽器の動機という、今のトレントの音楽を語る要素が強く感じられるものであった。

それをベースにしたかのような上記活動、特にHTDAのアルバムはその一つの到達点でもあった。


それらの活動が在り、ついに今年NINとしてアルバムがリリースされる事も発表され、既に数曲ネット上でもアップされている。

David Lynch監督のPVという新曲”Came Back Honted”は、やっぱりかっこ良かった。

The Slip』のようなブリブリの電子音楽ではなく、生楽器と電子部分のバランスが絶妙で、曲もポップ、これぞトレントの曲と言う出来で、アルバムへの期待値も俄然高まった。

いよいよ本格再始動という時に、世界最初のライブが日本のフジロックで開催される訳である。

行かないわけにはいかない。

という訳で、有給休暇を取得し、えいやと苗場の地に初上陸したのであった。

イベント全体については別項に譲るとして、ここではNINについてのみ書く。


当日は朝からずっと天気がよく、あまりピーカンでもなかったので非常に快適であった。

フジロックの割には恵まれてるね、なんてあちこちで言っているのが聴こえる。

ところが、夕方から急激に天候は悪化、19時過ぎには雷雨と化した。

その後も断続的に降ったり止んだりであったが、NINの愛撫が始る頃には止まない雨になっていた。

しかし、時折雷で光る空ですら、まるで演出のように感じられるのはいかにもNINのライブらしい。

思い返せば、活動休止前のラストライブとなったサマソニでも彼等の時間帯だけ雷雨であった。

まるで天候すら演出に利用しているかのようなライブは、神がかって素晴らしかった。

そんな記憶も共有しているファンが多いのか、何も始る前から勝手に盛り上がっている。

わかるよ、その気持ち。


そして21時30分、いよいよライブが始まる。

ステージ上には今もって機材は1つだけ、シークエンサーというのかな?ツマミ装置のに。

そこへトレントが一人歩いてきて、おもむろに歌い始める。

曲は新曲”Copy Of A”。

徐々に加速して行くような楽曲に合わせるように、少しずつメンバーが加わって行く。

今回ツアー前に2人もメンバーが離脱している。

一体どんな激しいのをやろうとしたのか?と訝ったが、むしろこうした演出面での価値観の相違が大きな理由だったのかもしれない。

ギタリストのロビンすら、始めたツマミ機材で登場である。

ドラマーのアイランも電子ドラムだし。

メンバー全員が横一列に並んで、非常にハイファイなビジュアルになっている。

そこから楽曲が次第に盛り上がっていき、最高潮に達した瞬間一気に暗転し、そこからバックの白いスクリンにメンバーの影を映し出すという演出に。

曲との動機具合といい、その時のバッと変わった瞬間は最高にかっこ良かった。

久しぶりにアホみたいにテンションが上がってしまった。


2曲目は"Justified"。

意外な選曲だったが、それ以上に新しいアレンジで披露された。

1stの曲なので元々デジタル的な曲では在るが、曲そのものが変わっていると言っても良い位のアレンジであった。

これだけでもう1回リリースしてくれ、と思った。

そんなKraftworkみたいなハイファイさは最初のみ、"March Of  The Pigs"からは一気にライブセットで展開される。

今回のステージでは、またライティングの非常の凝った演出であった。

以前より最新機材を使ったライティングは使われていたが、こまめにスクリーンを動かしながら展開されるビジュアルは曲とも合っていて本当にかっこ良かったな。

バンドセットになってもフラッシュライトとスクリーンの演出が実に素晴らしい。

"Closer"ではその場で写した映像をLEDか何かでスクリーン状に投影されるというもので、これ絶対この技術を使いたかっただけだろ、と思ったりして。

さすが新し物好きトレント


セットリストは割と鉄板のラインであった。

それでいて曲の配置がとにかく素晴らしい。

アッパーで攻撃的な曲をやるつつ、間には"Me, i'm Not"や"Piggy"といったテンションを抑え気味の曲を入れて、うまく盛り上げて行く。

これぞ百戦錬磨。

雨はますます強く、空には雷光、しかしクラウドの熱気で湯気が立ちこめている。

どうしてトレントはいつもステージに雷雲を連れてくるのだろうか。

一々粋だぜ。


ライブもいよいよ終盤、ここで何より嬉しかったのは、ひさしぶりの"Head Like A Hole"を聴けた事。

1stの1曲目にして、何よりトレントの精神を一番表している曲である。

やっぱりこれぞNINという曲。

ここで聴けたのがすごく嬉しかった。

そしてラストは"Hurt"。

再びスクリーンは開始当初の位置に。

まさかNINのライブで大合唱が起きるとは・・・。

ある意味で1周回った感覚が浄化されているのだろう。

いつもさっとステージから去るトレントだが、今日は最後に一言あって、去って行った。

余韻、冷める事なく、アンコールを求める声は止む事はなかったが、帰れとばかりにBGMとライトアップ。

まあ、フェスだからね。


今年のフジはNINを見る為に参戦した。

その期待には数十倍もおまけを付けて答えてくれたライブであった。

今回はYouTubeでリアルタイム放送がされたようだが、後からその映像をちょっと見ると、やはり風も強かった事も在り、遠目に見るとスクリーンの演出も少し迫力に欠ける(カメラワークが悪いのは言うに及ばないが)。

やはりあの場にいてこその感動である。

ホント、行ってよかったよ。


ここ数年でも色んなバンドを聴くようになっている。

ライブもいくつも行った。

それぞれ求める事や、音楽性自体も違うから一概な比較は出来ないけど、ただこのバンドだけは自分の中で特別な位置を今も占めている。

一体何故だろうかと色々考えてみるのだけど、断言できる要素にはたどり着いていない。

もちろん歌詞の世界もある。

だけど、やっぱり曲そのもののフィーリングがまさに自分にフィットするのだと思う。

トレントはいつでも正直だ。

音楽に自分の強い感情を表現することでカタルシスを求めるタイプの人だと思う。

作るべくして音楽を作っているというか。

The Slip』は個人的にはあまりピンと来ないアルバムだった。

その訳はひょっとしたらトレントのそのアルバムに対する動機が故かもしれない。

まあ、詳しいインタビューは読めなかったので実際のところはわからないけど、主たる動機が音楽以外にあったき気すんだよね、あの時は。

今再び音楽に向き始めているから、きっと次のアルバムは良いはずである。


ところで、今回HTDAの活動とほぼ並行する形でNINは復活となった。

アルバムも出して、一部ライブも行う中なので普通であればこれが一段落してから動き出しそうなものだが、そうしなかったのはおそらくだが、一重にトレントが自分のアイデアを抑えられなくなったことと、とにかく自分の音楽をやりたくなったんだろうね。

HTDAのアルバムは非常にドライな印象があった。

それがよかったのだけど、でもそのドライさは何に由来するかと言えば、自分で歌う曲ではなく嫁が歌いことを想定した曲だったからだろう。

一歩引いて曲を作っているので、それが曲自体のイメージをより反映しているのだろう。

NINの曲があれだけデジタル全開にも関わらずどこから肉体的で血が通っているのは、とにかくトレント自身の感情やそうしたものが反映されていたからだろう。

この人は死ぬまで音楽活動をしている気がするし、音楽を作らなくなった時は死ぬ時じゃないかとさえ思える。

カートは世間に負けて自殺した。

だけど、トレントは今日も生きている。

それは彼には音楽があったからだろう。

ある意味で人間を求めなくても彼は生きていける人なのだと思う。

だけど、今はそういう自分を理解してくれると感じられる人間もたくさんいるんだろうね。


ほんと、これからも素晴らしい音楽を作り続けてほしいね。

本当に今回は来てよかった。

帰る頃には雨も止んでいた。

やっぱりトレントが連れてきたんじゃないかな。

服装もかつてなくラフで、ドロだらけの足下もいかにもロラパルーザ!なんて。

いつまでも引っ張るつもりはないけど、だけどその時のままの精神を持ちながら今に至るのはやっぱりなかなかやろうと思って出来る事でもないしね。

だからトレントは信頼できるのである。


いやぁ、言葉は尽きないね。