音楽放談 pt.2

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Broken Social Sceneが素晴らしいと思っている話 -Broken Social Scene

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 大人になってから聴くようになる音楽もあれば、反対に聴かなくなる音楽もある。

 
何が違うかって、ひとえにその時の自分にフィットするかどうかである。
 
10代の頃は激しい音楽が刺激的でかっこいいと思っていたし、20代の頃は少しひねくれた音楽がかっこいいと思っていた。
 
我ながらなかなかの厨二病的な青春時代だったと思うわけだが、ともあれ今迎えた30代にはやはり穏やかで深みのある音楽を好んで聴いている気がする。
 
まあ、相変わらずラウドもアヴァンギャルドも聴いているから単純に幅が広がっているだけなのだろうが、そんな中で出会ってからずっと聴いている音楽というのも当然あるのだ。
 
そういったものが必ずしも共通した音楽的特徴があるかといえばそんなことはないと思うけど、強いていえば精神性みたいなものかもしれない。
 
純粋に音楽を作っているような人たちの音楽って、やっぱり聴いていて楽しいのだ。
 
楽しいという感情ばかりではないけど、少なくとも私にとってはポジティブに感じられるので、それが救いになるし、聴いていて心地いいし、ずっと聴いていたいと思うわけである。
 
そんなバンドの一つが、しばしば登場させているBroken Social Sceneだ。
 
今のところこのバンドを好きだという人には出会ったことがないんだけど、彼らの音楽は本当に好き。
 
音楽的にはポストロック、エレクトロニカ的なところからスタートしつつ、Pavement的なローファイ感もあり、90年代U.S.オルタナ的なダイナミズムもあったりと、多くの要素を内包しつつも根本には音楽そのものへの信頼というか、そういうものが根っこにあるような感じがしていて、大学時だからずっと聴いている。
 
作品としては2019年にEPとして何部作なのかはわからないが、とりあえず5月までに2部作出ているが、そんな彼らのキャリアを総ざらいしつつ、改めて聴いたことない人にも興味を持ってもらえればというところだ。
 
 
軽く彼らの紹介をすると、結成は1999年、ロック史的にはまさに大きな過渡期を迎えていた時期だ。
 
彼らはカナダを拠点として活動しており、地元の音楽仲間が集まってできたバンドで、ARTS &Craftsというレーベルも運営している。
 
首謀者はKevin DrewとBrendan Canningという2人で、そのほかのメンバーはいろんなバンドも兼任している人たちで、曲によって参加者が変わる。
 
アルバムのクレジットは20人近くになることも多いフリーフォームなバンドである。
 
参加しているメンバーは、Stars、Metric、さらにソロでもやっているFeistなど様々でそれぞれカナダでは人気バンドだし、世界的に評価を得ているバンド、アーティストもいるのである。 
 

Broken Social Scene 前夜、KC Accidental(1998年頃)

先のKevinとBrendanは元々KC Accidentalというバンドをやっていて、2枚アルバムも出している。
 
この頃から曲によってサポート的にいろんなメンバーも参加しており、ロックというよりはエレクロトニカとかの色の方が強かった印象だ。
 
 
アルバムとしては2枚出していたのだが、こちらは2枚のバンドル版として現在でも入手可能である。
  

1stアルバム『Feel Good Lost』(2001年)

そんな彼らが改めて組んだのがBroken Social Sceneな訳だが、1stアルバム『Feel Good Lost』はあくまでその延長という感じで、ロックよりもやはりエレクトロニカな色合いが強かった。
 
全体に穏やかな曲が多く、アルバム1枚で1曲という感じである。
 
中にはロック的な曲もあったりヴォーカル曲(Feistも歌っている)もあったりするが、ぱっと聴いた感じではやはり地味に映るだろう。
 
私は最初に聞いたのは2ndからで、このアルバムは結構後になって聴いたんだけど、やはり後年のアルバムとはだいぶ違う印象だったので始めの頃はピンとこなかったというのが正直なところだ。
 
しかし、最近改めて聴いているとすごくいいのよ、これが。
 
この頃はまた好んで聴いているアルバムである。
 

 出世作、2ndアルバム『You Forgot It In People』(2002年)

世間的な評価も似たようなものだったらしく、彼らが注目されるようになったのは2ndアルバム『You Forgot In People』である。
 
SE的な1曲目で始まり、2曲目はユニット名"KC Accidental"を冠した曲。
  
激しいドラムとギターが印象的で、一気にロック的な色合いを強くしたこのアルバムは今でも彼らの代表作と言えるだろう。
 
この曲も終盤にだけ歌があるが、そこでグッとスピードを1度落として3曲目"Stars and Suns"へと繋がる流れも秀逸だ。
 
私はこのアルバムに収録されている"Cause=Time"が、彼らのキャリア通じても一番好きな曲である。
 
この曲のフィーリングがなんか知らないがめちゃくちゃ好きで、個人的にはこのバンドの魅力が一番わかりやすく詰まっている曲なんじゃないかと思っている。
 
どこか青臭い感じもありつつ、ちゃんと地に足をつけた大人っぽさもあって、そのバランス感覚が絶妙だと感じるのだ。
 
この曲はイントロから最後までたまらない。
 
このアルバムの曲は他にも名曲満載で、"Anthem For Seventeen Yeas Old"”Lovers Spit"など聴き処満載なので、初めて聴く人におすすめしたいアルバムである。
 
Sportifyの人気楽曲でも、このアルバムの曲が上位を占めている。
 
私も最初はこのアルバムで、当時Arcade Fireの出現によりにわかにカナダの音楽シーンが注目された時があったんだけど、その時に紹介されていて知ったのがきっかけだった。
 
あれがなければ今頃どうなっていたか・・・。
 

充実のEP『Bee Hives』(2003年)

『You Forgot It In People』とほぼ同時期に制作された楽曲が収録されたEP?が『Bee Hives』。
 
全体にアコースティックだったり、エレクトロニカアンビエントな曲が多く収録されているのだけど、この作品も実にいい。
 
はっきりいって全体に地味ではあるが、静かな休日に聴くにはぴったりだ。
 
中でも出色なのは、"Lovers Spit"の別ヴァージョン、こちらではFeistが歌っているのだけど、彼女の少しハスキーながら透明感のある声が私は大好きなのだ。
 
この1曲のためだけでも聴く価値のある作品だ。
 

充実の3rdアルバム『Broken Social Scene』(2005年)

続く3作目はセルフタイトルということもあり、彼らの一つの集大成と言ってもいいアルバムだった。
 
よりロック/ポストロック色を強め、バンド感もより一層強くなったアルバムである。
 
曲も最もポップで聴き易いのではないかと思う。
 
全体にアップリフティングでポジティブで、聴いていて本当に心洗われる楽曲が満載だ。
Feistもヴォーカルととる"7/4 Shoreline"。
 
この曲を朝の通勤電車で是非聴いてほしい。
 
彼らのポジティブさには押し付けがましさがないのがいいんだよね。
 
彼らも憧れるTortoise的なクリーンさも満載なので、本当に綺麗な音楽だななんて思うわけだ。
 
ちなみにこのアルバム収録の"Fire Eyed Boys" のPVは謎PVの一つだ。
 
是非チェックされたし。
 
このアルバムの時に単独公演があり、私は初めて彼らのライブを見て、楽しかった思い出だ。
 
ちなみにこのアルバムは2枚組で、前作でいう『Bee Hives』的な楽曲集がついてくる。
 
お得だ。
 

音楽性を広げた4th 『Forgiveness Rock Record』(2010年)

続くアルバム『Forgiveness Rock Record』は、ついの彼らのヒーロー、Tortoiseのジョンをプロデューサーに迎えた作品で、これまでとはまた少し違うアルバムとなった。
 
初めて聴いた時の印象は、なんかとっちらかっているなという感じだったんだけど、思うにその理由は彼らのこれまでのアルバムによるかもしれない。
 
先にも少し書いたけど、元々KevinもBrendanもPavement大好きなので、その影響がもろにあり、特にドラムラインはいってしまえばバリエーションが少なく、ほとんど一緒じゃね?というところもないではなかった。
 
それが、このアルバム以降は多様性が増したこともあったのだろう、音楽的な印象が大きく変わったのである。
 
時は既にロックが立ち位置を失いつつある2010年だ。
 
そんな時代にあって、あえてロックという言葉を冠したこのアルバムは、かつてなくメッセージ性もある歌詞も相まって、彼らの一つの転換点だったのかもしれない。
 
曲調の幅も広がったわけだが、中でも私のお気に入りはニューウェイヴ的な色の強いこの曲。
"All To All"という曲だが、展開もすごく好き。
 
時代的にも世界的に不安が募っている頃にリリースされたこのアルバムは、改めて見返しても歌詞含めてメッセージ性が強い。
 
"Sentimental X"という曲のPVは、ファンが自主制作した映像をそのままPVに採用したという話もある。
 
全体的にアグレッシブで、彼らにしては何かに怒っているような感じが伝わってくる。
 
この年のアルバムランキングでも評価を得ていた記憶である。
 
確かこの年にフジロックでも来日したんだけど、単独はなく、またそれ以降来日もない状態だ。
 

再開の5th『Hug Of Thunder』 (2017年)

それからしばらくバンドとしては活動休止状態に入る。
 
その間ソロ活動などもやっていたが、バンドとしての音沙汰はなく、実際彼らもひょっとしたらモチベーションをなくしていたのかもしれないと思うが、7年の時を経てリリースされたのが『Hug Of Thunder』。
 
このアルバムのために彼らは再結集したのだけど、その理由はやはり今の世界情勢を見て伝えたいことがあるんだ!といって再結集したのであった。
 
前作以上に曲調はバラエティに富んでいたんだけど、なんだかんだ彼らの本質は変わらなかった。
タイトルトラックではFeistもヴォーカルを取っている(このライブ映像は別な人)。
 
前作以上にとっ散らかった印象だったけど、珍しくアルバム最後の曲もものすごく主張が強くて、彼らの思いがひしひしと伝わってくるような作品だった。
 
どんな状況にあっても、すいもあまいも知っている大人な彼らである。
 
しんどくても必ず良くなることを信じているような力強さって、地味だけどとても素晴らしいと個人的には思っている。 

再びギア全開、EP『Let's Try The After』シリーズ(2019年)

そんな彼らはまた活動を活発化。
 
2019年2月にEPをリリース、その続編が5月にリリースされている。
 
まずはVol.1と題されたEPは、曲数も5曲と少なくどうしても物足りない思いがするが、また一皮向けた音楽を見せており、次を期待させるに十分であったし、何より彼らがまた曲作りを楽しみ始めたのかな、ということが伺えてファンとしては嬉しくなったものだ。
 
中でも"1972"という曲は私の琴線に触れてしかたなかった。
歌うはStarsのAmy Millanだ。
 
シンプルで淡々としたベースラインがすごい好きで、曲としては派手な展開はしないがその分ヴォーカルメロディがとても心地よい。
 
 
続くVol.2は冒頭からアグレッシブな曲なのだけど、Broken Social Sceneにあっては珍しいタイプの曲かもしれない、と思ったものだ。
とても力強いし、空が開けるような前向きさがあって、この曲を聴いていると私は本当に元気になる。 
 
その他タイトルトラックもVol.2 に収録されているが、終わり側は彼ら得意の少しテンションを落としていく。
 
果たして次はどう出るか、と思っているうちに1年経ってしまったのだけど、このシリーズは今後どうなるのだろうか。
 
 
音楽を聞く理由って人それぞれだと思うし、何に反応するかも人それぞれだと思うけど、ポストロック、エレクトロニカなど音楽的な特徴としてそういったものが好きな人はもとより、とにかく音楽に励まされたいんだよね、という人にもおすすめである。
 
今の音楽シーンの最先端というわけではないが、人が求める本質は時代が変わっても変わらないと思う。
 
新しい音楽を知っても、昔好きだった音楽を聴かなくなっても、それでも聴いている彼らの音楽には、私にとっての本質が彼らの音楽にはあるのかもしれない。
 
ともあれ、是非聴いてほしいし、せめてもう1回来日してほしいので、まずはサブスクでいいから聴いてみてほしい。