割合色々の音楽を聴くようにしているし、あまりジャンルという概念で区分けをしないように結構意識しているところがあるんだけど、なんだか知らないがこれは好きだなと思う音楽、バンドに出会うことがある。
それらを俯瞰してみたときに、一つのジャンルとして括られている場合もあるから面白いなと思うんだけど、その一つがポストパンクと呼ばれる一群だったりする。
主に80年代前半くらい、文字通りパンクムーブメントのすぐ後に出てきたイギリスのバンドたちを中心にそう括られるわけだが、この時代のバンドの音楽はなんか知らんが好きなものが多い。
少し仄暗さもある一方で微かに希望を称えるようなフィーリングや、俺たちはこれがかっこいいと思っているからやってるんだ、みたいなある種ナルシスティックというか、そういう感じもキライじゃないのだ。
そんなバンドたちに影響を受けたバンドが多く現れたのが今から15年くらい前、2005年とかそれくらいだが、私が大学生の頃だったけど、ポストパンクリバイバルなどと呼ばれたバンドたちだ。
Franz Ferdinand始め、Future Heads 、KASABIAN、Bloc Partyや、Deperturesとかもいたね、そうしたバンドたちの中にあって、私が特に好きで1stアルバムからずっと聴いているのがMaximo Parkだ。
XTCなどの引き合いに出されていたが、シンセをふんだんに使ったアレンジととてもわかりやすいポップなメロディ、しかしどこかひねくれた感じの音楽がなんだかすごくハマったのだ。
ここ日本ではあまり人気のない彼らだが、個人的に大好きなので勝手に彼らのキャリアをまとめてしまおう。
アート系のセンス満載、ジャケットからしてお洒落さん
Maximo Parkは、元々ギタリストのダンカン・ロイドを中心に結成されたそうだ。
ヴォーカルのポール・スミス始め、確か芸術系の大学を出ていたはずである。
バンド名は実在のキューバの公園らしいが、結構政治色の背景を持つバンド名とも言えるだろう。
とはいえ、彼らの歌詞にはあまり直接的な政治的な言及はあまりなされないように思うが、その辺りは彼らの知性だろう。
デビュー当時は、特にヴォーカルのポールは変な髪型をしていたので、最初はコミックバンドなのかと思ったものだ。
1stシングルは今でもライブで演奏される"Grafitti"という曲だった。
ポップな曲調とは裏腹に、歌詞は割とパンク的でもある。
現状に対する不満を「もうたくさんだ!」という内容なので、デビューとしてはなかなかのセレクションだ。
当時はテクノ系レーベルの老舗であったWarpの目に泊まり、彼らはレーベル初のロックバンドとしてデビューすることになる。
記念すべき1stアルバム『A Certain Trigger』(2005年)
2005年には1stアルバム『A Certain Trigger』がリリースされて、当初から注目されていた。
このアルバムジャケットのモチーフはシングルなども全て統一されており、こうしたところにアーティスティックなものを感じるところだ。
プロデューサーは当時The Lakes、Bloc Partyなどの1stも手掛け、シンセを立たせたややプラスチックなアレンジが時代の寵児ともなっていたころだ。
特にFuture Headsと並び称されることが多かったように記憶しているが、こうした統一されたアート的なセンスとひねくれながらもポップな楽曲、何より彼らのアグレッシブなライブパフォーマンスが評判を呼び、この年のフジロックにも出演していた。
中でも出征作となった曲は"Apply Some Pressure"である。
Maximo Park - Apply Some Pressure - Later With Jools Holland 2005
この曲が当時MTVなんかでもよく流れていたな。
私が聴き始めたのはいうてもリアルタイムのちょっとあと、フジロック出演も終わった頃に、何かのきっかけで彼らを知って、なんだか好きだぞとなってずっと聴いている。
ちなみに、改めてこのアルバムの歌詞をみてみると、なんだか逼迫しているというか、「ここままじゃだめだ」「俺は空っぽのままは嫌だ」といったような内容の歌詞が多い。
私は割と歌の耳心地だったりとか、ちょっと変な展開の曲が面白くて聴いていたんだけど、彼らの歌詞は実は曲の印象ほど明るくはない。
それこそヴォーカルのポールの佇まいも、こんな変な髪型だけど、それがむしろペーソスというか、ある種の悲哀を感じるくらいだ。
それが私の何かに引っ掛かったのかもしれない。
なお、このアルバムの後にアルバムみ収録曲を集めたEPもリリースされたのだけど、その中の曲を聴くとアレンジのシンプルさも手伝ってそもそもの曲の良さが堪能できるのでおすすめだ。
ロック色を強めた2nd『Our Earthly Pleasures』(2007年)
デビューから2年後には2ndアルバム『Our Earthly Pleasures』をリリース。
当時スマパンの名前もインタビューで上がっていたが、前作以上にロック色の強い楽曲が並び、シングルカットされた"Our Velocity"もアグレッシブで後半の高く舞い上がるような感覚が私は大好きで、今でも彼らのキャリアの中で上位にくる名盤だと思っている。
Maximo Park - Our Velocity (from Our Earthly Pleasures)
この年にはサマソニでのダンスステージという4番目くらいのステージのヘッドライナーにも抜擢されたのだけど、客入りはかなり厳しく、彼らにとっては苦い経験になったのではないかと思っている。
とはいえこのアルバムは本当によくて、曲もいいし、歌詞もこの頃から社会的な目線も入ってくる。
中でも個人的に印象的だったのがこの曲の一節だ。
"Nosebleed"という曲だが、「He Changed Looks For You, But You Changed Life Him.(彼は君のために見た目を変えた、でも君は彼のために人生を変えた)」という歌詞があるのだけど、ここに関係の非対称性みたいなものがあって、なんだか切なくなるものがある。
彼らの歌詞はこうしてどこか批判的な目線がある。
決して明るくないというか、どこか割りを食ってしまう人に向けられるような目線があると思っていて、それが彼らの表現の本質なのかな、とも思っている。
迷い始めたか?少し陰りの見える3rd『Quicken The Heart』(2009年)
続く3rdアルバムはまた印象の異なるアルバムであった。
この『Quicken The Heart』を最初に聴いた時の印象は「なんか音がこもってね?」ということと、これまでのようなフックが弱いような印象であった。
ひょっとしたら、彼らにとってもかなりの自信作だったはずの2ndが思いの外いいリアクションを得られなかったのかもしれない、そのことを意識してかはわからないけど、このアルバムの1曲目はこんな始まりだ。
「こんな曲ならわかりやすいんじゃないかな?」
これまでの2作は、1曲目はかなりキャッチーで明るい曲を配してきたが、このアルバムではむしろ静か目で大きく盛り上がるという感じではない。
つづく2曲目もやや暴力的なニュアンスもある内容で、どうしたポール?!と思わず思ってしまう。
そして3曲目がシングルにもなったこの曲だ。
Maximo Park - The Kids Are Sick Again
曲自体は相変わらずポップなんだけど、歌詞は結構暗い。
やってられるか、お先真っ暗だ、というメッセージと、お前らがなんて言っても俺は負けないぞ、という気概みたいなものも感じるけど、結構悩んでいたのだろうか、なんて勝手に勘繰ってしまうが、元々彼らはデビュー当時からそこ明るいバンドではない。
改めて歌詞をみていくと、彼らの歌詞は全体的に何かにまとわりつかれているかのような描写が多いように思う。
アルバム中随一の曲だと思うのがこの"Calm"という曲だけど、歌詞はなんだか悲しくなってくる。
歌詞の大半はヴォーカルのポールが書いていると思うけど、彼は結構闇っぽいのかもしえれない。
実際彼のソロ1作目は非常に地味で、お世辞にも商業的に成功するとは思えないものだったけど、Maximo Parkとは違う表情が垣間見えてその意味では興味深い作品ではあった。
日本版ではDVD同梱の素敵なパッケージだったが、商業的にはかなり苦戦したらしく、この後のアルバムでは日本版がリリースされるのはだいぶ時間を減ることに。
苦難の4thアルバム?『National Health』(2012年)
続く4枚目のアルバム『National Health』はリリース当時日本版はなかった。
ジャケットをみると、年を模しているのかなという気もせられるが、この頃には雑誌でも扱われないし、リリースの報も探さないと日本では見つけられなかったので、「あれ、出てるやんけ!」と驚いた記憶がある。
輸入盤を取り寄せて購入したのだけど、正直このアルバムはピンと来なかった。
曲は相変わらずポップだし、前作よりも思い切りよく作ったのかな、という印象はあるんだけど、やはり録音がなんだかこもった印象があったし、アルバム全体では突き抜けた感がなかったのだ。
Maximo Park - The National Health (Recorded Live at Vada Studios)
今聞けば曲もいい曲入っているんだけどね。
この頃には当然来日もなかったし、世の中のトレンドも大きく変わり始めていたころで、すでにバンド音楽が下火だったことも手伝って彼らも大変だったのかもしれない。
ちなみにこのアルバムからWarpからも離脱しているので、バンドとしてはやっぱりしんどい時期だったのかな、なんて勝手に思っている.
渾身の傑作アルバム、6th『Too Much Information』(2014年)
そしてその次のアルバムが個人的には彼らのベストと言ってもいいくらいの渾身のアルバムとなった。
全体に抑揚の効いたポールのヴォーカルも印象的で、またサウンド的にもポストパンク的なクールさが前回、歌詞も自分という視点から一つ先に行って社会の日陰者に焦点を当てるようなところがあって、実にいい。
シングルカットされたこの"Brain Cells"も、彼らのイメージからはやや遠いような静かというか、クールな印象の曲だが、ベースラインはしっかり跳ねていて、この感じが個人的にもドツボだった。
この年久しぶりの来日講演もあって、私にとってはようやくの初ライブとなったのだけど、パフォーマンスは変わらずキレッキレ、新曲も旧曲も織り交ぜたバランスの良いセットリストだったけど、良いライブだったな。
このアルバムも、正直かつてのような派手さはない。
落ち着いたアルバムなんだけど、ラストを飾るのも"Where We're Going"という曲で、「これから僕らがどこにいくかはわからない」なんて歌われる。
ここで一つ彼らとしては今後のキャリアの焦点も定まったのだろうか。
ここからはマイペースに、7thアルバム『Risk To Exist』(2017年)
なんやかんや彼らはコンスタントにアルバムをリリースしており、そこから3年後にはアルバム『Risk To Exist』をリリース。
耳心地的には正直5thに近いけど、どこか肩の力も抜けたような印象でファンとした安心したものだ。
私はなんだかんだこのバンド好きだな、なんて思ったものだ。
残念ながらこのアルバムリリース後にメンバーの1人が脱退してしまったものの、バンドとしてはまだまだ活動していくようだし、またの来日も期待している。
Maximo Park - Risk to Exist (Official Video)
彼らの音楽を好きな理由を述べようと思えばできるけど、本質的にはなんか好き、という以外にはないように思う。
彼らのインテリジェンスと、それにより隠されている陰鬱なところがひょっとしたら共感するのかも、というのはきもち悪いファンの典型的な精神かもしれないが、ともあれ音楽においては言葉なんて本質じゃない。
音楽に限らず、すべからずアートはそういうものだろう。
気がつけば前作からもう3年も立つのだけど、これからどうなっていくか、引き続きファンとしては期待して待つだけである。
Maxïmo Park - Where We're Going