昔からガヤガヤしたところよりも、そこから少し距離を置いたようなところが好きで、できれば人気のないところである方が好ましい。
私は結構気い遣いなのだがあまり上手ではないので、疲れてしまうんだよね。
そうはいってもたまにはしゃぎたくもなるんだけど、そこに気恥ずかしかを感じてしまうのは私のさがだろうか。
最近の休日はもっぱら一人で酒を飲んで過ごすことが多いのだけど、音楽を聴いたり、ライブ映像を見たり、ゲームをやったりしながらゆるゆると過ごす時間はやっぱり気が休まる。
一方でたまに寂しい気持ちに苛まれるようにもなってきたんだけど、そんなときには娯楽に癒されるわけだ。
何かを生む出すわけでもない、ただ人生の時間を浪費しているだけのような瞬間ではあるが、そんなものだろうと思っている。
そうして私の心を癒してくれるものの中で、一番大きいのはやはり音楽だ。
いい音楽を聴いているととても幸せな気分になれる。
外出する時には、携帯はなくてもいいがiPodはないと困る。
その時の気分、環境にマッチする音楽が流れ出すと思わずにやけてしまうこともあるわけだが、最近休みの日に外をウロウロしながら聴いていて、いいなとしみじみ思ったのはアナログフィッシュの目下最新アルバム『Still Life』である。
近年のトレンドでもあるR&B的な風味をたたえた曲たちで、機材のためか全体に音も柔らかく温かみがある。
歌詞も彼らの曲においては抽象的な度合いの強いものが多く、優しさに満ちた作品になっている。
30分ちょいの収録時間で非常にコンパクトではあるにせよ、本当にあっという間に聴き終わってしまうし、アルバムとしての構成も見事なので、しっかりと余韻を残しつつ満足感はバッチリだ。
繰り返し聴きたくなるこの感じはとてもいいよね。
で、彼らの曲、特に下岡さんの書くラブソングに出てくる女性像というのが実に素敵で、私はとても好きである。
前作『Almost A Rainbow』収録の"No Rain (No Rainbow)"に登場する女性の感じは、彼女に、嫁にするならこういう女性がいいなと思える。
『Still Life』に収録されいる"Sophiscated Love"はその続きのような印象もあって、一方でヤマアラシのジレンマのような感じもある。
「もうどうにでもなりたいのに、どうにもなれない君と、どうにもなれない僕」という歌詞が印象的である。
「触れ合わなくても分かり合えるのかしら?」と問いかける彼女の気持ちと、それを受けておどおどする男の姿が目に浮かぶ。
初めの数行でなされる情景描写ですぐに景色がはっきりするんだけど、その後あっという間に視点が客観化するのも面白い。
曲そのものはギターのカッティングも気持ちいい、穏やかでゆったりとした曲調で、大人なムードが漂っている。
強い展開があるわけでなく、どちらかといえば淡々としているんだけど、その感じが却って歌詞の持つ情景を際立たせるような思いだ。
大人であるということと、そのことによるある種のジレンマみたいなものかもしれない。
結局二人がどうなったのかはわからないけど、こうした距離感というのは今風かななんて思わないではない。
ていうかまあ、今風かどうかは別にして個人的に妙にしっくりきてしまったのだ。
でも、聴いていて気持ちいいとてもいい曲だと思う。
今日は久しぶりにアナログフィッシュのワンマンだ。
今年20周年の彼らは対バンツアーを行なっており、それはそれで面白いのだけど、やっぱり私は単独でじっくり聴きたいのだ。
会場も小さなところなのでチケットはソールドアウト。
楽しみだな。