社会人になってもう10年以上が経過して、新卒の子たちとも関わる中でつくづく歳を取ったと感じるわけであるが、もし今新卒に戻れるなら、もう少しちゃんと就活やっただろうなと本当に思う。
今も別に年収は低いわけではないけど、多分もっと余裕で上を目指せたと本気で思っている。
ベースが低すぎてずいぶん苦労したし、なんならあんまり頓着せずに社会を信じていたけど、やっぱり底辺のやつはいつまでも底辺なのが社会だ。
若者のみんな、ちゃんと勉強して、就活も1回はちゃんとした会社に入っておいた方が、起業したいような野心のあるやつ以外は絶対にその方がいいぜ。
さて、本来であればデビューというのは野心に溢れているもので、音楽においてもそれは顕著だ。
中にはデビュー当時は全然パッとしなかったのに大化けするものもあれば、着実に進化しているもの、中には残念な結末になるものと色々だけど、だからこそデビュー盤というのは味わい深いものだ。
そんなわけで、今も絶賛大活躍のバンドたちのデビューアルバムをいくつか振り返ってみよう。
まずはこちら。
今や日本のオルタナティブ代表、作品ごとにどんどんスケールを増しているThe Novembersである。
私はデビュー当時から聞いていたわけではなく、ちゃんと聞くようになったのは本当に最近のことである。
系譜としてはArt School、Syrop 16gなどに連なる轟音美メロ鬱バンドという感じだった。
ファンの子たちも微動だにしないライブの風景はある種異様な世界だ。
そうしたバイアスで聴くと暗い音楽にも聞こえるが、実はラルクにもめちゃ影響をされているので、メロディやヴォーカルにも影響が出てしまっている。
実際彼らのルーツは別に暗鬱とした音楽ばかりではなくて、基本的にはポップな曲が多い。
今となってはメンバーの出立や音楽業界での立ち位置も含めて、すっかり突き抜けたバンドだ。
現在絶賛ツアー中、といっても3公演だけだけど、ともあれライブが見られるのは嬉しいね。
これからさらにどうなっていくのかが楽しみだし、音楽性だけでなくファン層も大きく変わっている。
RIDEなどの海外アクトの前座や、The Horrors、Pale Wavesなど同時代バンドとのコラボ、またマイブラ特集では必ずといっていいほどインタビュー受けたり、元Boom Boom Satelitesの中野さんともバンドやったり、非常に活動も活発だ。
ますますの活動に期待値絶大なバンドである。
続いてはイギリス・マンチェスターのバンド。
遅れてきたグランジ、アルバムはそこそこ出しているが音楽的には一気通貫ただいい曲をロックにやっているNine Black Alpsである。
Nirvana的な空気を感じるバンドながら、英国らしく全体にウェット、フィードバックギターのノイジーさはあるもののメロディはポップでとにかく曲がいい。
彼らのデビュー当時は80年代的な音楽のリバイバルブームで、Franz Ferdinandなどのバンドが隆盛を極めていた頃だ。
それらに淘汰されたと言える音楽をバリバリに鳴らしていたわけだけど、そんなことは問題じゃない。
私はそうしたギターをダイナミックにんかき鳴らすような音楽って大好きなだけど、彼らの音楽はまさにドンピシャにはまった。
弾丸のようだと例えられたこともあるこの1stアルバム『Everything Is …』は、曲も何も全て最高で、いまだにしょっちゅう聞いている。
世間的に売れたとはいえないし、残念ながら大きく売れることはなかったが、多分今でもバンドは続いているはずである。
衝動をそのまま閉じ込めたみたいな勢いは、聞いていて本当に気持ちいい。
暑くなりはじめのこの季節にはききたくなる素晴らしい音楽だ。
マジでおすすめ。
グランジつながりではこのバンドも好きだ。
インディーズの活動もあるのでこれが1stのなのか怪しいが、ともあれ彼らが世に知られることになったのはこちら『Thank You, Beatles』である。
バンド名は髭だ。
今やダンディな髭がすっかり有名になったおかげで、彼らが検索面で出てくる割合がずいぶん減ってしまったのがファンとして残念だが、音楽性はNirvana+サイケデリックという感じ。
全編に不機嫌さが漂った不穏さを持った空気が非常に魅力的なデビュー版である。
言葉もトゲトゲしいし、当時のアー写もヴォーカル須藤さんは睨みつけるようなものが多い。
それが近年では実にマイルドというか、優しい曲をたくさん書いていて、何かつきものが落ちたような感じだ。
でも、この時のこの音楽が、大学生で世の中の大半を呪っていた当時の私には妙に響いてね。
カッコよかったのよ。
今ではこの手の音楽は少なくなってしまったのかもしれないけど、ただ激しいばかりが攻撃的なわけではない、というのは彼らを聴くとよくわかるところである。
続いてはこちら。
まるでヒッピーみたいな見た目の細身な4人組、Bo Ningenである。
イギリスに留学していた日本人により結成されたバンドだが、ノイジーで狂ったような音楽は唯一無二で、世界のフェスでもお呼ばれしているひそかな世界の日本人である。
まあ音楽的にはめちゃくそアングラなので、どう考えてもこの日本で売れることはないだろう。
様々なアーティストともコラボしており、Boris、MerzbowとかDownyといった日本のオルタナシーンとも繋がっており、また彼らが注目されるきっかけになったのはThe Horrorsのメンバーによるつぶやきによるところでもあった。
かなり曲満載なので聴く人を選ぶと思うけど、体全体で奏でるような彼らのライブはマジで必見である。
今年この1stをセルフカバーしているのだけど、この間の成長というか、表現自体がどうなっているかをみるのも面白いところだろう。
最後はこちら。
解像度が死ぬほど荒い画像だが、Ogre You Assholeの1stである。
最近になって再発されたこともあり、割とイージーに聴くことができるようになったが、少し前まで中古市場で確か5,000円くらいになっていたこともあった気がする。
今やゆらゆら帝国と比較されるくらいの存在になっており、日本国内だけでなく世界的に見ても稀有な音楽をやっているのだけど、デビュー当時はだいぶ具合が違い、元々00年代初頭くらいのUSインディーロックやポストパンクの影響をかなり受けていたようで、そもそも彼らのバンド名もModest Mouseのメンバーに落書きされた言葉だったとか。
音楽的にも今でもギターなんかはわかりやすく影響受けているよね。
このデビュー版を聞いていて改めて思ったところと、曲によってはめちゃGang Of Fourじゃんみたいな曲もあり、この1stからは今の姿は本当に想像できない。
彼らに何があったのか・・・
ともあれ、先日のライブではこのデビュー版に収録された曲が大きくアレンジして演奏されているように、改めて今のモードで演奏する面白さもあるのかもしれない。
すっかり大化けしたバンドの一つである。
エンタメ業界は流行りすたりの世界である。
人気がいつまでも続くわけではないし、当事者の彼らからしたらやりたいことと生活するための間に立たされる辛い場面も多いだろうが、その中で自らの表現を貫きながらこうして素晴らしい音楽を展開してくれているのは嬉しい限りだ。
ともあれ、こうして歴史を遡る面白さはやっぱり楽しみ方の一つである。
割と偏ったセレクションだけど、今聞いているバンドも昔はどんな曲をやっていたのか、なんて見てみるのはおすすめだ。