音楽放談 pt.2

SEO強化をしていこう。

ロックビジネスの陰影 ―The Yellow Monkeys

イメージ 1

先日久しぶりに映画を観に行った。

イエモンのライブドキュメンタリーである。

会社の人でイエモンが好きという子がいて、一緒に行きませんか?とのことでいいよ、とね。

割と可愛い女の子の誘いなのだが、残念ながら美味しい意図のある誘いではなく、単に私が音楽好きというコトで、友人は興味を持ってくれなかったからといコトらしい。

結局もう一人会社の席の近いおっさんも誘って3人で行ったしね。

ガックシ。


それはともかく、私もさすがに彼等の名前は知っていたし、曲もいくつかは知っている。

私が中学生か、まだ小学生だったかもしれないが、そのくらいがピークと言う印象であった。

今にして雑誌なんかでたまに彼等の評価がいい様子はうかがえたが、当時はまだそんなに音楽にがっぷり興味を持っていた訳ではなかったので、どんなバンドかもろくに知らなかった。

なので、中古屋へ行って彼等のアルバムを購入した。

たまたま置いてあったのが画像の『Punch Drunker』という奴で、知っている曲も入っていたからかったのだけど、映画はまさにこのアルバムのリリースのタイミングで行われた大規模なツアーのドキュメンタリーだったので、図らずもいい予習が出来た。


彼等の音楽に対するイメージについては、なんか勝手にグラムロック的なものを考えていた。

まだ子供の私に歌詞の意味まで仔細に考える視点はなく、なんとなく耳に残っているだけだから見た目の印象で勝手にそう思っていたのだろう。

実際に音源を聴けば思いっきりUKだし、ボウイやボランといったところが彼等のヒーローなのだろうという事は伺える。

でも、歌詞を観るとむしろ泥臭いというか、洗練された感じもないし耽美的でもない。

泥臭いんだよね。

吉井さんのイケメンっぷりと比べるとなんだか酷くギャップがあることに驚いた、今更。

そう、当時の吉井さんはメチャクチャかっこよかったんね。

最近のソロの印象しかなかったからあまり意識しなかったけど、これは婦女子はたまらんでしょうに。


そんな具合に付け焼き刃の予習を持って臨んだ訳である。

映画の内容については、ドキュメンタリーなので当時のツアーを追いかけながら、間に関係者の証言を挟みつつ、ちょっと面白いと思ったのは現在のメンバーが集まって当時を回顧すると言う場面がある事。

手法的に敢えて現在の映像の時はモノクロにして、ドキュメンタリー映像は鮮やかに、ていう対比がある意味では夢のような時間というか、いつまでも色褪せない彼等の功績として表現しているのだろうか、などと考えつつ。

正直ツアードキュメンタリーごときで何故映画にまで?と思っていたが、1年間で113公演という、日本のバンドではあり得ないくらいのライブ数を当時のメジャーバンドがこなしたということと、そこから透けて見える音楽ビジネス、ショービジネスとしてのロックと、表現者としてのロックバンドの気持ちの変遷や、あるいはスタンスの難しさみたいなものが見えてくるのが面白かった。

また、バンド自体でいえば、そのツアーの1ステージでフジロックにも出演していたのだが(知らなかった)、なんと伝説の第1回目、レッチリのトリ前、レイジ、フーファイの後と言うハイパープレッシャブルな順番だったりして、そこで世界との違いみたいなのを見せつけられて、彼等なりのロックバンドとしての矜持と言うかな、そういうものが垣間見えるのも面白かった。

個人的に一番興味深かったのはここだったけどね。

変な言い方だけど、彼等は本物のロックバンドを目指してたんだと思う。

成功してからの噺だけど、そこから崩壊して行くまでの過程はある意味ロックならではなのかもしれない。


こういうのを観ると、R.E.M.が同業バンドからリスペクトを多く集める理由や、カートが彼等を慕い続けた理由もわかる気がする。

ツアーをやるときには、基本的には一定のセットリストを毎日やり続ける事になる。

もちろん多少は変えるだろうけどね。

あるいはセットも含めて、いわばパッケージショーみたいな感じになる訳だ。

そのなかで、初日はテンションが上がって衝動的に発生したパフォーマンスでも、次の日からはそれが演出と言われるようになる。

それを最後まで演じきる事が出来るのであればいいが、どこかでそんなのロックじゃねぇ、みたいな思いにもなるし、そもそもなんでこんな事すんの?という疑問符にもなる。

その中で更に世界との壁を見せられて、自分達なりに外国で勝負してみたり。

フジロックの後の楽屋映像での吉井さんの表情がすごく印象的だった。


結局このツアーは1公演も欠く事なく達成されたのだけど、バンドはバンドとしてのモチベーションを恐らくなくし、体に傷を残すものもいるし、精神的に家族がダメになってしまった人もいるし、そして不慮の事故でスタッフが命を落とした事もあった。

その後2年くらいは活動し、アルバムも出したものの、その後2年の活動休止を経てそのまま解散となったようだ。

解散後も彼等は個々に音楽活動は続けているし、バンドメンバーも仲がいいらしい。

モノクロの映像の今の彼等は当時と変わらない空気感のまま場を共有していた。

だけど、だからこそこのバンドは再結成はしないかもしれないね。

喧嘩別れとかではないようなので、あのまま続けてたらどうなってたかな、みたいな興味もわかないだろうし。

するとしても完全に開き直った時だろうね。


ともあれ、ほとんど事前情報なしに観に行ったけど非常に面白い映画であった。

およそロックというものに興味のある人ならそれなりに楽しめると思う。

華やかさの裏側にある葛藤が、客観的な視点で描かれるので非常にリアルで、所謂ロックスターとなる事も出来たのに、なれなかったバンドの姿は音楽ビジネスというものの難しさを表していると思う。

話は少し逸れるけど、海外のバンドでも同じような話はよくある。

それこそカートも成功と自分の希望の狭間で壊れて行った人だし、トレントもNINを休止させた理由はそういうところにあったようだし。

一方でそれをすら楽しめる、なおかつ自分の好きな事もやれるようになると、やっぱりすごいなと思う。


レイトショーのみの公開で、平日くらいしか都内では観られそうにないが、ロックが好きな人なら観ておいて損はないと思う。