音楽放談 pt.2

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ライブドキュメンタリー -音楽を違う面からみてみる

配信ライブがだんだん当たり前になってくると、DVDなどでリリースされる映像作品の位置づけについても再定義がなされるように思う。

 

先日アナログフィッシュが配信ライブを録画、編集、ミックスした形で行い、それをそのままDVD作品にもしている。

 

彼らがいち早く、というわけではないと思うけど、配信ライブと映像作品の差別化の一つといえるだろう。

 

またつい先日ライブを行ったDownyも月末に改めて配信ライブを行うが、そこでは音もミックスした映像作品としての配信になるらしく、おそらくそのままDVD化もされるだろう。

 

そうして質的な差をつけることで、チケット価格についてもまた色々ためされるだろう。

 

サカナクションライブ配信でありながらかなり凄まじいことをやったらしいが、残念ながら私は見逃してしまった。

 

あれはライブであるからこその驚きや感動があったわけで、あれも一つの配信コンテンツのかたちどろう。

 

だが、いかんせん予算が莫大だったようなので、どんなアーティストでも出来わけでもないし、彼らにとってもおいそれとできるものではないだろう。

 

もっと日常になるためには、色々と考えるタイミングだと思う。

 

 

私は以前からライブDVDもちょくちょく買っては見ているんだけど、特に好きなコンテンツはツアードキュメンタリーである。

 

大体ライブ映像との二枚組でリリースされることが多いが、最近はアルバムのおまけで付いていることもあり、ドキュメンタリー付きとしては嬉しい限りだ。

 

そんなわけで、あえて映像化してほしいおすすめツアードキュメンタリーを、あくまで私が持っているものだけだがいくつかご紹介。

 

まずはこちら。

 

 

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The Novembersの『美しい日』。

 

キャリア最高傑作と呼び声高い『Hallelujyha』のツアーの時のもので、当時まだ話題になり始めたばかりだったクラウドファンディングを使ったことでも話題となった。

 

こちらは二枚組で、ドキュメンタリーパートではメンバーのインタビューやオフショット、過去の映像も織り交ぜるものがありながら、彼らと親交のあるバンドも登場する。

 

同世代としてのLillies and RemainのKENT、プラズーのsho、people in the boxの波多野さん、cinema stuffの辻さん、そして先輩バンドではBorisのAtauo、downyのロビン、Art Schoolのリッキー、千葉さんにdipの人などもインタビューに答えている。

 

このバンドは特に近年顕著だが、音楽的にもバンドの佇まい的にも大きく変化したと思うけど、そんな背景を読み解くのに非常に面白い内容になっている。

 

わりとトゲトゲしたイメージもある彼らだが、わりと朴訥な話し方をするのも面白い。

 

ちなみにライブの方も充実度も素晴らしく、このタイミングでのリリースはある意味ではベスト盤みたいな感じだろ。

 

 

続いてはこちら。

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日本のインスト/マスロックバンドとして世界的な活動もしているLITEの『7 days Patst』、アルバム『For All Innocence』リリース時のアメリカツアーのドキュメンタリーである。

 

彼らのキャリアの中での一つの転換期を迎えていた時だと思うが、アメリカの小さな箱を回るツアーの過酷さと、ライブごとにどんどんファンを獲得していく様がとても面白い。

 

また現地の若手バンドとツアーを回るんだけど、そのバンドとも徐々に仲が良くなっていき、仲良くキャッキャしている様もなんだかいいのである。

 

それこそ日本ではアイドルなんかのライブはテレビでも放映されるが、こうしたインディーバンドの現実はほとんどの人が知るところにはないものである。

 

日本の音楽は終わっていると何も知らずに曰う奴もいまだにあるが、彼らのような世界で通じているバンドもいるのである。

 

まあ、インストなのでどうしてもニッチなジャンルではあるけど、音楽性も演奏力も楽曲も、世界が唸っているのだ。

 

それでも貧乏旅行みたいな感じで、現地のライブハウススタッフとちょっと揉めたりするのは非常に生々しいドキュメンタリーだろう。

 

このDVDのリリース時には上映会イベントが開催されたんだけど、そこへも足を運んだな。

 

最近は独自のファンアプリを作ったり、その中でオンラインライブ、打ち上げをやったり、全員リモートでのライブを実現したりと、かなり先進的な取り組みも行っているのである。

 

ギタリストの武田さんは行政書士としての仕事をしており、海外で活躍したいというバンドに色々な支援活動もしている。

 

これがまさにインディペンデントというものだろう。

 

 

続いてはこちら。

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ギターとラップという得意な編成のヒップホップバンド、MOROHAのドキュメンタリー『其の灯、暮ラシ』。

 

彼らの編成同様、こちらもやや変わった作風で、Morohaのツアーに密着しているものの、主体となっているのは其の周辺にいる人たちである。

 

MOROHAの音楽は、聴いたことのある人はわかると思うけど、登場するのはいつも普通の人たちである。

 

普通というのは、歴史にも名を残さない、ごく近いい人にしか認識されないいわゆるモブだ。

 

彼女に振られてどうこうとか、仕事が辛くてどうこうとか、ぶっちゃけ視聴者たるこちらからすればどうでもいい人たちのありふれた人生である。

 

ただ、それを通して人生みたいなものが滲み出てくるようなところがあるから、それがドキュメンタリーとしてのおもしろさだろう。 

 

まさにMOROHAの歌う曲はそういう何気ない人たちの人生を曝け出すような側面があるので、そんな表現とリンクしているイメージである。

 

ちょっと荒削りというか、もう少しなんとかすればもっと面白かったんじゃないかなと個人的には思っている。

 

いわゆるバンドのドキュメンタリーを期待するとちょっと違う感じではあるけど、映像作品というもののあり方を考える上では面白い作品ではないだろうか。

 

 

続いては、海外で、ライブではないがレーベルのドキュメンタリー。

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アメリカのオマハというクソ田舎から世界に存在感を放ったレーベルSaddle Creekのドキュメンタリーだ。

 

地元のバンド仲間が集まってできたレーベルだが、所属アーティストがすごい。

 

当時地元のスターで、兄貴的存在だったというティム・ケイシャー率いるCursive、00年代のボブ・ディランとまで言われたBright Eyesコナー・オバースト、そして私が個人的に大好きで、ポストパンリバイバルの代表格の一角でもあったThe Faintなどである。

 

レーベルの立ち上がりから大きくなって、徐々に分解してまた落ち着くまでの激動の時期を移しており、音楽業界の一旦、特にインディーシーンを覗き見るようなところが面白い。

 

初めは友達同士で、好きで集まったにもかかわらず、規模が大きくなれば会社にならざるを得ない。

 

そうすると、当然個人ではなく法人の視点で話をしないといけない場面も出てくるし、音楽家としてどれだけ優秀でも、レーベル運営という視点では問題児となることもあって、そういう葛藤が結構生々しくドキュメントされている。

 

実際当事者たちもインタビューに答えているので、変な蟠りみたいなものはもうないんだと思うけど、大変なんだなとか思ってしまうよね。

 

一般の会社でも成長痛みたいなものは必ずあって、今私のいる会社もまさにそんな状況である。

 

その中で転職を考えてたり、もう少しがんばってみようかと考えてみたり、今まさに迷っているんだけど、そんな状況に何かを考えるには、いい材料かもしれない。

 

 

最後はこちら。

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The Blue Herbの『Total』というアルバムの時のライブDVD・ドキュメンタリー『PRAYERS』、未発表曲もバンドルされた形でリリースされた。

 

彼らは1stの時からずっとインディーズ、自主制作自主運営でやっているんだけど、このDVD、映像作品のリリースも1stの時からやっている。

 

このドキュメンタリーもつくようになったのは確か2ndの頃からかと思うけど、その都度に表現されているものも違って面白い。

 

このアルバムは、まさに2011年の震災後のリリースだけあって、アルバム自体彼らのキャリア史上最も直接的な言葉で語られているため、かなり賛否が別れたし、なんなら非の方が大きかった。

 

正直私もこのアルバムはあんまり聴いていない。

 

彼らの、というよりも特にBossのリリックは常に彼にとってのその瞬間を表現している。

 

だからこそある時急に刺さることもあるし、反面ささらない時は全くささらないこともある。

 

それでも一定以上の普遍性はあると思うけど。

 

で、そうしたアルバムのツアーだけにかなり感傷的なところもあるけど、何より表現者として自分たちには何ができるのか、ということを真摯に考えた結果がパッケージされている作品となっている。

 

彼ら自身北海道の出身ということもあり、被害が甚大だった東北の現状、リリースされた時はすでに世の中的には落ち着きを取り戻し始めており、ニュースで取り上げられる機会も格段に減っていた。

 

もう10年近くも前になるのかと驚くけど、震災の当日にテレビニュースで流れた映像は、今思い出してもゾッとするし、あまりに凄まじくて現実的ではなかった。

 

あの時の映像が今でもやけにはっきりと思い出せるけど、さすがにその映像はもう流れることはないだろう。

 

東京では当時の喧騒ももうなくなって、すっかり日常である。

 

まあ今はコロナだけど、被災地は今でもそれ以前の日常ではないだろうし、このドキュメンタリーの当時もようやく海岸沿いの一部地域の整地がなされた程度の状況であった。

 

福島はじめ、東北地方の箱でもあえてライブをやるという選択肢を選んだわけだけど、エンタメという稼業はどうしてもそういう時に、どんなことをしても何もしなくても批判を浴びる。

 

ましてメッセージ性の高い曲をやっている人たちには、性格の悪い奴らからそういう批判を言葉を浴びるだろう。

 

たとえ的外れだったとしても、彼らは元々がシリアスだから、色々の夋巡も会ったに違いない。

 

今にして見れば、こんなこともあったんだな、という歴史の記録的な側面が強いかもしれないし、音楽的な側面よりも時代についてのドキュメントかもしれない。

 

でも、カルチャーは常にその時の社会状況を反映しているし、密接に結びついているものだ。

 

日本のヒットチャートはあまりそれが見えにくいけど、そうした意識を持って活動しているアーティストもたくさんいるのだ。

 

別に好きになってくれとは言わないけど、常に自分にできること、自分だからできること、自分のやりたいと思うことを大事にしていくというのはとても大事だなと彼らをみていると思う。

 

ちなみにライブパートも最高で、彼らのライブは平気で2時間を超える。

 

ラップなんてただでさえ情報量の多い音楽だけど、それを完璧にやり切る。

 

まさにプロだ。

 

全国をずっと回って、それをやり続けている。

 

すごい人たちだ。

 

 

ドキュメンタリーは、ファンでもなければなかなか見る機会もないだろう。

 

私も興味のないものはなかなかドキュメンタリーまではみようとも思わないしね。

 

ただ、ちょっと違う角度で作られている作品は、映像作品としての面白さもあるから、それはそれでみてみる価値はありである。

 

こんなご時世なので、配信ライブを合わせてこうしたドキュメンタリーも、音楽を違う側面から楽しめるのでおすすめである。


THA BLUE HERB "PRAYERS" TEASER