
最近2005年前後にデビューしたバンド達の勢いがいささか戻ってきたような印象である。
戻ってきた、といっても本人達は継続的に音源も出しているし、別に評価を下げた訳でもない。
単に世間の流行が変わったというだけであるのだがね。
何もRadioheadだけが偉大な訳でないのだけど、どうも最近は変化して行く事が大きな意味を持つような価値観が蔓延している。
私の個人的な価値観も、どちらかと言えば変化を好むのだけど、一方で変わらない良さ、あるいは進化/深化というものも重要だなと思う訳である。
で、今年で言えばMaximo Parkなんかはまさに深化と進化を新譜で見事に果たしている。
基本的な音楽性は変わらないし、魅力は何より曲の良さで、そこのクオリティーはしっかりと保たれつつ、バンドとして一つの大きなステップアップとなっているのは間違いないと思う。
そしてもう一組、実質2ndから入ったのだけど、以来新譜は彼等のサイトから直接購入するより他なかったものの追いかけていたバンド、Nine Black Alpsも今年はいいバランスの新譜を出してきた。
彼等は時代遅れとも言われるような音楽性で、パッと聴いた感じはまさにNirvanaである。
しかし彼等はイギリスのバンドなので、Nirvanaほど重くもないし、歌詞の内容も破滅的ではない。
所謂フィードバックギターをかき鳴らしつつ、デビュー当時から変わらぬPixiesフォロワーな音楽である。
でも、これがすごくいいんですよね。
まず何より曲がいい。
メロディも奇麗だし、ポップでキャッチー、且つセンチメンタルとイギリス人お得意の内省的な影がうっすらと指していて、その塩梅が絶妙である。
一度聴けば口ずさめてしまう親しみやすさは、却って最近のバンドでは珍しいかもしれない。
今はエキセントリックで過激なものが多い中で、こうも変わらないのはある意味さすがである。
その意味で彼等は全く変化していない。
新譜の曲が1stに入っていても、逆に1stの曲を新譜に入れても多分、ていうかほぼ確実に違和感がない。
アルバムごとにヘヴィな曲が多いかポップ寄りかでカラーはいささか異なるものの、本質的には変わらないので、どちらを好むかだけの話である。
それでも私を引きつけて止まないのは、やはりロックの根源的動機であるところの衝動性を感じるからに他ならない。
刹那性といってもいいかもしれない。
破滅的な訳ではないけど、どこか逼迫したような心象というか、そういうのが見えてくる音楽ってやっぱり好きなんですよ。
Broken Social Sceneのように落ち着いた大人な音楽も大好きな訳だけど、でもこういう音楽的にも背景的にもシンプルな音楽は、シンプルだからこそ力強く魅力的なのである。
このアルバムのアマゾンのレビューが極めて秀逸なので何度も読んでしまうのだけど、本当に彼等は今時っぽくない上にイギリスっぽくない音楽をやっている。
でも、それでいいのである。
時代遅れ、なんていう言葉所詮音楽の評価としては本質ではない。
彼等の前作、前々作はリリース当時は日本盤は流通しなかったが、後に再発兼ねて日本盤が出ている。
何故かディスクユニオンでの取り扱いが多いが、日本では人気が今一なのが実に口惜しい。
今年の春先に投票サイトかなにかで、投票数が一定数になれば来日!みたいな企画があって、俺は意気揚々と投票したが、どうやら有効数には満たなかったらしく、結局亡くなってしまったようで非常に残念であった。
彼等がデビューした当時よりも遥かに洋楽人気は下がっており、音楽までも日本では内需がメインとなってしまっているのは残念なことである。
ともあれ、また引き続き待っていよう。
変なゴシップもないから余計に目立たないけど、純粋にいい音楽を作り続けられるバンドだと思うし。