音楽放談 pt.2

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表現の可能性 -アナログフィッシュ

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と、いうわけで昨日はアナログフィッシュの対バンライブ、相手はトリプルファイヤーであった。

客入りはおそらく8割強と、新代田のキャパにしてはやや少ない印象ではあったが、観る方としてはこれくらいがちょうどいい。

アルバムリリースツアーでもなく、合間の企画ツアーという色合いなのだけど、その中で何を見せるかが見所である。

現在偶数月に何かしよう、という中で4月は別の若手バンドと対バン、今回はトリプルファイヤーである。


まずはトリプルファイヤーについて。

高田馬場Joy Division」「だらしない54-71」などと呼ばれる彼ら、JD好きかつ最近54-71も気に入って聞いている私としては気にならないわけがない。

と、言いつつなかなか音源も聴かずに今に至ったわけであるが、ほぼぶっつけ本番、ライブでどないやと。

彼らの音楽的な特徴は、シンプルかつタイトな演奏に自由闊達、というか奔放な歌ともラップともつかないコミカルな歌詞のヴォーカルが載っていることの絶妙なゆるさだろう。

演奏自体はファンク的な要素が強いかなと思いつつ、とにかく隙間の多い演奏である。

その意味でZazen Boysにも通じるところがあると言えるし、先の評価はそこに由来するのだろう。

ただ、一体どこにJDがあるのかというのが不思議だったのだけど、一つは彼らの曲の中でそのフレーズが出てくるところからだろう。

そしてもう一つは、歌詞にあるかもしれない。

彼らの歌詞は非常に緩く、コミカルである。

ここだけ切り取ったらコミックバンドかと思うようなものも多くあるのだけど、一方でそれをギャグとしてやっているかというとそういう感じはしない。

どこかその状況自体を俯瞰した時の奇妙さとか歪さとか、そういうものが見えてくるような感じがするのが面白かった。

シニカルというか、ニヒルというか、そんな感じがしたんだよね。

この歌(?)の存在感がでかいのと、明確なメロディというよりは音に乗せて発している感じなので、一歩間違うと同じような曲に聞こえてしまうという評価もあるかもしれないが、あれこれ考えながら聞いているとこれはまた見え方が変わってくる音楽だろう。

ちなみに演奏はめっちゃタイトでかっこよかった。



で、続くはアナログフィッシュ

割とメインになる曲は演奏される機会は多いのだけど、その間に様々曲をやるし、アレンジも変わっていくのでそういったところも見所である。

曲によってはベースとドラムだけの演奏で下岡さんが歌っていることもあり、そういうシンプルさもある一方でセンセも使ってバッキバキに聴かせていく場合もあるから、今回はどっちだ、なんていうのも聴きどころだろう。

最新アルバム自体、バンド演奏にフォーカスしたという話があったように、最近は3ピースとして見せていることも多く、今回はその文脈だったね。


1曲目はこの時期なのでやはりというところもあるけど、”Phase”。

この曲はかなりアグレッシブなドラムイントロが印象的なのだけど、歌詞も相当メッセージ性も強いので、ある意味では彼らのイメージを固めてしまう側面もあるのだけど、言葉のチョイスは過激ながら普遍性のある社会性を持った曲だと思う。

「失う用意はある?それとも放っておく勇気はある?」というこのフレーズこそが今の時代に突きつけられているものそのものである。

やっぱりこの曲は震える。

今回はそのモードか?と思ったけど、全体としては満遍なくというか、別にそういうスタンスを明確にするようなものではなく、普通に楽しいライブになった。

代表曲的なところをさらった印象でしたね。

個人的には"No Rain No, Rainbow""Town""Anthem"など、みんな聴きたい曲は概ね網羅されていただる。

できれば”抱きしめて”を聞きたかったけど、最近あんまりやらないよね。


本編ラストは”Hybrid”であったので、やっぱりスタンスというか、彼らとして示したいものはそういうところにあったのだろうなと思う。

そしてこういう曲を聴いても改めて思うのは、歌っている内容のレベルの高さだと思う。

個人の価値観と社会の価値観をうまくいったりきたりする中である種の本質を描くリリックは、世界レベルだろうと。

表現としての土着性みたいなものはあるにしても、海外の人が聞いてもその意味は伝わるんじゃないかな。

この曲も最後のパートが凄く好きで「たまらなく君を愛してる、またたまらなく君が嫌になる、でもたまらなく君を愛しているよ」というところで、愛憎相半ばという中で最後は愛の方が上回るというあり方には彼らなりの願いも含まれるとは思うけど、全て肯定的なものだけが存在することは現実には不可能ながら、少しだけでもその肯定的なものがうわまることができれば、世界はもう少し平和なはずなんじゃないかな、なんて思わせる。

何回聞いてもすごい曲だなと思う。


で、アンコールは1曲だけあったのだけど、"There She Goes(La La La)"。

この曲はある意味一番ストレートにハッピーな瞬間を切り取った曲で、強い曲でシリアスに終わった本編から少しだけ安心させてくれるような狙いでやったんだろうな。

結局彼らが歌いたいのは広い意味でのラブソングなんだと思う。

別に社会に楯突いたり政治意識を喚起させたりすることではなくて、根本は分かりやすい普遍的な平和の在り方があって、その手段や切り口として政治的な視点や社会的な視点も用いているに過ぎないのである。

彼らの曲を私はカラオケでも歌うのだけど、ある友人は口には出さないけどちょっと苦手だな、という印象を持っているようなのだけど、違う曲を歌えば「いろんな曲があるんだね」と意外そうな感想を抱いていた。

こういうのを見ても、伝わりやすいのは分かりやすい言葉による表現で、印象が強いほどそれに左右されてしまって彼らのイメージも固定されてしまうのだけど、もう少し広い目で彼らの楽曲を見ていくとそんなことはなくて、あったかい曲がたくさんあることに気がつくはずで、むしろ強い曲があるからこそ他の曲の優しさも際立って見えるはずである。

いやほんと、今という時代だからこそもっと聞いてほしいアーティストだと本当に思う。


というわけで、8月のライブも行きたいなと思いつつ、先日PVが発表された最新曲”No Rain No Rainbow”を貼り付けて記事は〆。

この曲に歌われる日常の中にこそ愛の本質や、平和の手段があるんじゃないかと思うよね。

ま、難しいことを抜きにして、単純にいい曲です、ほんとに。