音楽放談 pt.2

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暖かな孤立感 -フィッシュマンズ

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たまにどうしようもなく刺さってくる音楽に出会うことがある。

それはふとした瞬間だけだったり、極限定的なシチュエーションだけだったりもするのだけど、その瞬間は世界を全て染めるくらいに影響してくる。

必ずしも明るい音楽でもないし、暗い音楽ばかりでもない。

いつも聞いているアーティストの音楽とも限らないし、なんならほとんど聴いたことがない場合もあるけど、本当にふとした瞬間に染み入ってくるのである。


非常に遅ればせながらだが、最近そんな風に思うのはフィッシュマンズである。

日本のインディシーンではもはやクラシックの領域だろうし、今もって熱烈なファンも多い上、この間ライブアルバムが出たりと、まさに日本の音楽史に名を刻むバンドだろう。

私も昔から知っていたけど、たまたま見た評が癒されるとかあったかいみたいなものだったので、そういうのには興味ねぇや、とか思っていたのだ。

ところが、先日改めて聴いてみようと思って聴き始めたのだけど、これが妙に染みるんだ。

前に別の記事で少し触れたけど、確かにいつか読んだ書評とか、あるいは彼らのアルバム、というかヴォーカルでバンドのイニシアチブを持っていた佐藤さんなんだろうけど、そこで書かれていたようにあったかさみたいなものを感じる瞬間もあるけど、どちらかといえばすっごい冷たい印象だった。

冷たいというのもちょっと違うんだけど、半径数メートルに誰もいないような感触がある。

その言葉自体や、音楽自体には柔らかい感じがあるけど、根本的なところに人を寄せ付けないというか、人が見えていないというか、そういう感じがすごくするのである。

それこそJoy Divisionのそれに近いとさえ思う。

フィッシュマンズの方がウェットな感触だとは思うけどね。


で、そんな彼らの音楽がどんな時に刺さるの?という話だが、夜に1人で帰っている道すがら。

特にこんな寒い夜なんかはまあ染みる。

寂しいとかそういう情緒じゃなくて、ぽつねんとした感じっていうかな。

別に私自身が感傷的になっている訳ではないし、特に悲しいことがあった訳でもない。

ただなんとなく世界と距離感を感じるような時があるのだけど、そんな瞬間にすごくハマるのである。

ゆっくりしたメロディと、隙間だらけの音、特徴的なヴォーカル含め、全てがその瞬間に馴染んで仕方ない。

面白いのはいつも帰り道に染みる訳ではなくて、染みる時とそうではない時があるのである。

その差は一体なんなのかはわからないけど、そこはかとなく気持ちいいのである。


私の中で彼らの音楽の評は、孤独の一言に尽きる。

彼らのアルバムはポリドール時代のベストと『空中キャンプ』だけなので、全てがそうなのかまではわからないけど、少なくともこの2枚を聴いた印象はそうだ。

その意味でJDと同じイメージ。

とはいえ彼らは別に絶望はしていないと思うし、諦めきった感じもない。

ただ、常に何か越しに世界を見ているような感じがあって、描かれる他人との距離を感じさせるところがある。

寄り添っているようでそうはなっていないような感触で、それがたまらなくさせてくる。


最近はやりのシティポップという言葉があるが、彼らはそういう括りではなかったのかなと思うけど、でも田舎町では生まれない類の音楽なのかなと思う。

ちょっと調べてみると、生まれがどこかはわからないがバンドは大学時代に結成されたらしい。

もともとどんな人だったのかもあまり調べていないけど、メンバーは佐藤さんの才能に惚れた、的な記述があった。

単純に音楽的な才能はすごかったのだろうけど、それ以上ににじみ出るものがある。

それが音楽としてのパワーだと思うのだけど、この心地よさはちょっと怖くなる。

まあでも、いいんだよな、これが。

別に何かを誘発する訳でもなくて、ゆったりと身を委ねる感じが心地良いんだ。

明るくないし、気分も高揚しないし、前向きにもなれないけど、それでいいような気持ちにさせてくれて、結果的には少し晴れやかな気持ちにもなる。

そこはJDとの根本的な違いかとは思うけど、でもこれってきっとこの人がそういう意図で作った曲って感じよりは結果的にそうやって感じられるだけな気もするんだよな。


20世紀のマスターピースの一つと名高い彼らのアルバムだが、なるほどなぁと思う。

また他のアルバムも聴いてみよう。

"Night Cruising"