音楽放談 pt.2

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怒りは背後に ―Super Furry Animals

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聴いていてい心地いいな、と思う音楽がある。

もちろん好きな音楽と言うのは何かしらの意味で心地よいから聴いている訳であるが、もっと単純な意味においてね。

気分や天気に左右されず、聴くととりあえず「良い塩梅」と思う訳である。

例えばFeistは個人的にはすごくそういう類いの音楽。

BSSもそう。

要は音楽に引き込まれた上で、そこに広がる世界がすごく心地よくある必要がある訳である。

そういうのをさして良い音楽と言うのだと思う。


昨年聴いて、こらええわ、と思った心地よい音楽の一つが、Super Furry Animals(SFA)の新譜である。

微妙に緩いと言うか、ちょっとふわふわしているような耳心地なんだけど、曲そのものはもちろんのこと、曲順や長さなども含めて、きわめていい感じのアルバムであった。

SFAは有名なのでもちろん名前くらい知っては居たが、まだ全然聴いたことはなかった。

当時そのアルバムの評価は知っていたので、たまたま中古屋で見つけたとき、どれ一つ、といって買ったのでした。

歌詞の世界まで含めて、すごく統一感あるし、訳のわからんジャケットのイメージもぴったりだし、すばらしいポップですよ。

いわゆるシンガロング的なノリのバンドではないが、滑らかな流水のように、そっと身を委ねているとすごく良いんだよね。

漠然とぷかぷか浮いている感じ、と言うか。

柔らかい世界で、ぱーっと灯りが指したような中をずっと流れるみたいな。

う~ん、なんと言ったら良いかわからんが、とにかく良いのである。


前半は割とアップテンポ、あるいはミドルで非常にシングル向きな曲が目立つ。

曲の組み方も、ただわっと言う展開だけでなく、そこから静かに横揺れするような展開にも持っていくし、そうかと思えば性急な曲もあったりと、広い意味でノリノリなのである。

後半になると、もう少し深いところに行くんだけど、そこからの時間の流れは緩やかなものである。

例えば、車もほとんど通らず、人通りも少ない、時折風邪に揺れる植物の葉のこすれる音が聞こえる程度、それでいてあたりは開けていて、ただ漠然と世界が広がっているような空間を体験したことのある人ならわかるだろうが、そういうところでは時間の流れは本当にゆっくりで、ときに止まっているかのように感じられることさえあるほどである。

そういうところで感じる安らぎというか、そういう感覚を覚えさせてくれるような音楽である。

ずっと浸っていたいんだけど、わずか30分あまりのアルバムなので、すぐ終わっちゃうんだよね。

勝手な解釈をすれば、現実世界におけるそうした安らぎと言うのは、ほんの僅かしかないもので、それでも人はそこに幸せを感じられるものだ、と暗に言っているような、いないような。

永遠に続かないからいい、というかね。

もちろんその心地よさに永遠を求めるんだけど、でも人間はわがままだから。


こんな心地よい音楽であるが、詞を精読すれば意外と尖っている。

批判性もあり、ブラックなジョークのようなものもある。

そうしたギャップも非常に面白いんだよね。

結構好きなスタンスだったりするし。

個人的には"Neo Consumer""Baby Ate my Eightball""Suckers!"""Let the Wolf Hawl at the Moon"の詞は好きだね。

良質で上質なポップて言うのはこういうのを言うんじゃないかな、なんて。


昨年彼らはサマソニにきたので、そのとき見たんだけど、これがまたよかった。

このアルバムの曲しか知らないが、それでも問題ないどころか他のアルバムも聴かないと、と切に思ったものである。

大体フェスにこの手のバンドを見ようなんて連中は概してコアなファンである。

従って、ライヴではおなじみであるらしい儀式?(手を頭の上に持ってきて、宇宙と交信、みたいな)なんかもすんなりやっていて、なんじゃこりゃ、と不思議な気分であった。

また、ややこぶりな人参をかじっては吐き、かじっては吐き、最後にあまった人参を客席にばらまいたり。

ちなみに登場のときは戦隊ものみたいなヘルメットをしていたりと、正直さっぱり意味が分からなかった。

あれって何なんですかね、知っている人いたら教えてくれるとうれしいです。


そんな摩訶不思議な集団ながら、ライブはすごかった。

フェスのわずかな時間にも関わらず、完全に自分たちの世界を作り上げ、そこに客を引き込んでしまう。

しかも、アップテンポで親しみやすい曲はもちろん、かなり敷板高いだろ、というような曲での引きつけつ力は、ちょっとすごかったぞ、マジで。

思わず口がぽか~んとなってしまったよ。

なんかすごい世界を突きつけられている感じがしてね。

ここで、これは過去の奴も聴かなくちゃ、となった訳である。


現段階ではまだ聴けてないのですが、最近また探しているのです。

なので、次に見たときが手に取るときであろう。

今年新譜も出すみたいですね。

でも、まずは過去のものをきちっと抑えたいと思います。