今年は楽しみな新譜がたくさん出るわ、と言う話は既にたくさん書いているのでもう書かないが、そうしていくつもあるからついチェックし忘れているものもある。
メディアなんかでしきりに取り上げられるようなバンドであれば、自ずと目に入るんだけど、そうでないとついうっかり、と言うこともある。
例えば、Black Diceなんかは既に出しているし、マンソンも急にサイトでシングル配ったりして、6月には出すそうだ。
今回はかなりまたアグレッシヴさを取り戻したようで、しかもシングルを聴いた感じでは、初期のようなメンタリティで新しい要素も感じさせるようなものを期待できそうだ。
善きかな。
で、かなり好きにも関わらず、最近公式サイトもろくすっぽチェックしていなかったので、不覚にも直前まで失念していたバンドがあった。
Maximo Parkである。
もう5月には出すんだって。
しかも、日本先行発売とな。
最近洋楽CDで日本先行がやたら多いのは、やはり市場的にみて一番CDが売れるのが日本だからだろうか。
世界で見ても稀なくらい未だにアナログ大好きだものね。
まあさすがに今の10代くらいになるともはや音楽は曲単位で、しかもケータイで落とすのが主流なのかも知れないが。
そういえば、今年から高卒の子がまた会社に入ったのであった。
18って。
だんだん10代にギャップを感じるようになるのがいやだ。
それはともかく、今回は初回版にはDVD付きである。
これも是非欲しいが、今回は一体どのような音楽を聴かせてくれるか、実に楽しみである。
そんな彼らはこれで3rdになる訳であるが、前作はかなりクオリティ自体は高く、非常に好意的に受け止められてはいたが、いわゆる実験性の強いバンドでもないし、エポックメイキングでもない。
優等生的なたたずまいで、それでいて非常にセンスのいいバンドなので、メディア的にはそれほど面白い存在でもないのだろう。
アルバムは評価されるが、少なくとも日本での認知度、人気はそれほど高くは無い。
一昨年のサマソニではダンスステージでトリであるにも関わらず、客入りは寂しいものであった。
とはいえ、だからといって彼らが駄目な訳では決してない。
ポップでキャッチーながら、聴いていると実に捻くれていて、面白い展開の曲が多い。
まあ、それゆえにどうしても今一人気には結びつかないのかも知れないけどね。
で、かれらの2ndであるが、1stのようなプラスチックな感じは薄れて、より曲は生身な印象となり、しかもインスピレーションにスマパンなどを上げているだけあって、非常に力強い作品となった。
一方で詞も社会的な要素が強まり、ややセンチメンタルと言うか、一抹の不安のような要素もあって、バンドとしては非常に躍進したアルバムと言える。
ライヴにおいても、元々ライヴには高い評価があった上に、更に力強さを増した印象である。
かなりかっこいいぞ。
あいかわらずキーボードの音がかなり効果的に使われており、そうした部分にらしさを感じつつ、全体にダイナミックになったのはやっぱり良かったよね。
曲についても書くと、半数以上の曲がシングルとして出されても遜色ない粒ぞろいである。
1曲目の"Girl Who Plays the Guitar"も、非常にアップリフティングな曲である。
さわやかで、風が吹き抜けるような、聴いていて胸のすく曲である。
続く"Our Velocity"は先行シングルであった訳であるが、初めてこの曲を聴いたときは、なるほど確かに1stとは全然違うバンドじゃね?とか思っちゃったけど、聴くほどに彼らの曲と言うことが染み渡ってくる。
グランジばりのダイナミックなギターがまず強烈に印象的なんだけど、やっぱりキーボードが曲を展開させるのに大きな力を発揮しているんだよね。
特に2回目のサビ後の展開なんて、本当に大好きである。
空飛びたくなるよ。
続く"Books From Boxes"は、ややメロウさの強い曲である。
ドラマチックですらあるのは、ヴォーカル/ポールの成長故かもしれない。
ちょっぴり切ない感じだけれど、言葉のリズムが軽快なので、決してめそめそしくないし、過剰に湿っぽくないのはさすがである。
この曲もシングルになっている。
次の"Russian Literature"は、かなりアグレッシヴな曲である。
このアルバムの特徴的なのは、こういうアグレッシヴな曲をポイントとして挟んでいるようなところである。
それでも攻撃的にならないのは、やっぱりバンドの人柄なのかも知れない。
彼らの曲は総じて非常にポップソングとして高いレベルである。
アルバムとしても非常にいいし、曲ここに見てもいい。
ただ、みんなで楽しもうぜ、的なノリではなく、どちらかといえばよりパーソナルに語りかけてくるような側面があるように思う。
だからって閉塞的な訳では決してないため、ヘッドフォンで聴きながら外を歩きたくなるような、そんな音楽である。
先にも少し述べたが、詞のテーマとしては現代社会の孤独感だったり、社会問題だったりといったものである。
いわゆる批判的な歌詞を書くタイプではなく、その中での人の有り様なんかを唄っているのかな、という感じである。
攻撃性のなさも、語りかけてくるように感じるのも、そういう部分が大きいのかも知れない。
そういう風に考えると、ヴォーカリストとしての力量はなかなかのものであると言えよう。
で、曲に戻ると、中盤は比較的ミディな展開であるが、終盤ほどドラマチックさを帯びてくる。
でも仰々しく無いから、すんなり入ってくるのである。
"Nosebleed""Sandblasted and Set Free"あたりは、1stにはない曲だと思うし、まずなによりこのバンドはやっぱり曲がいいんだ、と言うことを示すような曲である。
そしてラストの"Parisian Sky"は、非常にアップテンポで、彼ららしい明るい前向き下がって、非常に良い塩梅にアルバムを締めくくってくれるのである。
聴後の心地よさは、良いですよ。
最後に空白が余韻とのごとく残っているのであるが、ここもあえてスキップしないもの。
それこそ風がふわっと吹き抜けていったような、というのが一番すっきり来るアルバムを聴いた感想だね。
ちなみに日本盤にはボーナストラックもついている訳であるが、これがまた良いのである。
アルバムにはないアコースティックな曲であるが、アルバムのおまけとしては非常にしっくり来る。
彼らのこういうB面的な曲は、密かに名曲が多いことでも評価が高い。
1stのときは未発表音源や、アウトテイクなんかも収録したB面が出たんだけど、2ndではなかったね。
また是非出してほしいんだけど。
彼らのアルバムはジャケットなんかのアートワークも非常にセンスのいいものを毎回だしてくる。
アルバムごとにそれぞれデザインに方向性があり、それを集めるだけでもかなり面白いバンドでもある。
あいにく手に入りにくいものも多数あるので、そういうコレクションはしてないけど、こういうセンスは今の時代にあってはかなり活かしたセンスだと思う。
そういった側面も含めて、このバンドは大好きですね。
多分また来日があると思うんだけど、今度は是非単独で見たいものだ。
もちろんフェスにも出ると言うのなら大歓迎だけどね。