今更だが逃げ恥を見ている。
年末年始に再放送がやっていたのは途中からになってしまったのだけど、いつの間にかアマゾンプライムで見られるようになっていたので、この連休でせっせと見ているのだけど、このドラマはなるほど評判に違わず面白いですね。
すでに色々と考察もされているけど、一つのテーマとしてはスティグマというものについてだろうか。
社会的なレッテルという方がわかりやすいかもしれないが、個人的にはスティグマという言葉の方がなんだかしっくりくる気がする。
このドラマでは、結婚、恋愛といったものが主軸にはあるが、仕事、 殊正社員と派遣社員、女性の社会進出、雇用関係や主婦という属性、妙齢の独身女性や童貞の中年手前の男性、ゲイ、帰国子女、イケメン、セクハラ、夫婦、男性の家事など、日常においては場合によっては褒め言葉として使われる類の問題を広く盛り込んでいる。
何気ない会話の中に無意識に登場する上記のキーワードを通して、それぞれの生きづらさや、あえてそれを受け入れたかのような生き方をする人がいて、それぞれの息苦しさがあるのだけど、それをコミカルに描く殊で過度に重くなっていない。
各登場人物もある面ではとても平等な目線なのに、ある目線ではそうした色眼鏡を持っていて、人との会話の中でそれを自覚しつつどうするべきかを考える、というような展開がしばしばある。
それは誰にでもあることで、必ずしも悪意のあることばかりではなくて、意識せずに使ってしまうということがある。
大事なことは、それを鬼の首を取ったかのように論うのではなくて、ちゃんと意識して気をつけていくことが大事で、そしてそれに気がついたらちゃんと是正していく中で、お互いに受け入れていけるように努力することが人間関係の構築というものだろう。
このドラマの中で、それが直接的に語られる場面もしばしばあるのがドラマとしてのバランスだろう。
最近ではアメリカのBlack Lives Matterという社会運動が取り沙汰されるが、日本において「黒人の人にも平等に生きる権利があるんだ!」と叫ぶこともそれはそれで大事だと思うけど、むしろそれを日本にどう置き換えるかということが大事である。
流石にもうあちこちで指摘されているが、女性に対する差別的な扱いは今だにあるし、しかしそれは意識されない。
セクハラ、パワハラ問題もそうだけど、本当にそこに無意識な人は現実にいるのだ。
それが問題だとわかる人からすれば目に見えて問題なのに、本人にはそれがわからないのだ。
だから社会問題って複雑だし、なかなかなくならない。
最近ではコロナもそういうものになりつつあるように思う。
マスクをしていない、外食をする、かかったら謝らないといけない。
かと言って逆に馬鹿みたいな運動を繰り広げている奴もいるから困ったものだが、実際帰省した人は村八分な目に合っているというから、日本はまだまだ現代社会ではない、前時代的な価値観が根付いているのだろう。
かくいう私も、多分意識せずに差別的な言葉を話しているところはあるだろうから一方的な批判はできないけど、せめて気をつけないといけないと思っている。
と、話が少し大きくなってしまったけど、このドラマってそういうものをとてもわかりやすく、身近なテーマや言葉、会話、風景の中で描いているのがいいですね。
言外のメッセージとして、人が人を求める理由は役割や属性じゃなくて、その人であるということであるということもあるんじゃないだろうか。
若いからとか、母親としてとかそういうことじゃなくて、それが存在を認めるということだと思うし、そしてその認めるために必要なことって特別な才能でも他の誰かのどうこうでもなくて、本人同士が波長が合うかどうか、みたいな話で、そう思える人に出会えたら素直になろうぜ、それが幸せの入り口なんじゃないのか、なんていうことを言っているようにも感じる。
今更だけど、これはいいドラマですね。
最後に楽曲はMinistryのこの曲を。
ドラマに似合わぬ激しい、悪意の塊みたいな曲だが、これが今の日本社会の一旦ではないだろうか、というメッセージに代えて。