誰の口でもどこのメディアでも散々言われていることだが、この2020年という年はなんとも印象的すぎる1年になった。
社会の変化という言葉をよく使われるけど、誰の目にも明らかな変化が世界的に起こっていて、果たして収束なんてあるんだろうかなんて思う訳だが、街に出れば以前のような人出が戻っている。
年末年始は実家に帰るという人も周りにも多いので、半年前と比べればだいぶ状況は変わっているが、少なくとも元どおりではないだろう。
個人的にも割と大変な1年だったなと思っていて、昨年の11月末に今の会社に転職して、ちょうど忙しくなる頃にリモートが当たり前になったんだけど、図らずも良かったと思ったのは、仕事はむしろ増えたし、なんなら忙しすぎるくらいではあるんだけど、色々の変化を割とわかりやすい場所でみられたのは良かったことである。
とはいえ稼働が多すぎて、この1ヶ月もあまり記憶がない。
ずっと仕事をしていたな、ほんとに。
ライブをみにいくことも少なかったし、イベントごとは尽く少なかったからな。
アーティストの方では、ライブができない分制作に向いている人も多く、新作を発表している人は多くあったのだけど、その中の1組がTha Blue Herbだ。
昨年2枚組のアルバムをリリースして、本来であればツアー満載の1年だったはずの彼らもそれらは中止、しかしその分制作のペースは凄まじく、シングルを1枚、EPを1枚、コラボ関係の作品も数作と非常に精力的であった。
今もレコーディング中らしい。
近年の彼らの作品については賛否で言えば否の方が多い印象だし、実際私も1回目でいきなり掴まれるか、というとそんなことはなかったというのが正直なところだ。
ところが、何度か聴いているうちになんだかやけに滲みいって、今では不意に聴きたくなる音楽となっている。
かつてのバトルライムと呼ばれば鋭さは当然だけどない。
割と生活に根差したような内容なので、そりゃ刺激ではないだろうという話だ。
でも、戦ってばかりの人生ではないし、やっぱり安心したいよね、という思いがこんな世の中だと強くなるから、そこに寄り添っているのかもしれない。
穏やかなトラックと、今年縛られたあれこれを思い返すような描写があるんだけど、それでも前に行くしかないよね、というのが彼らのメッセージである。
起きてしまったことはもうしょうがない、というのは昔から彼らの作品出てくるリリックの一つだろう。
今年リリースされた『2020』というEPは、まさに今のドキュメントとしてリリースしたような作品だけど、そこで描かれるのは変わった現実と変わらない生活の狭間みたいなものだ。
といって、私は東京に暮らしているので、電車なんかに乗るとダイレクトに感じるところもあるんだけど、一方で地方はどんな感じだろうか。
実家の方ではそれほど変わらず、リモートワークなんてものは概念すらよくわからないというのがうちの両親だ。
ニュース越しに私の住む世界をみているような思いらしいが、一時は正に事後絵図に見えていたらしいからな。
私にとっての日常は、私だけにとっての日常でしかなくて、それは誰にとっても同じだろう。
最近の彼らの音楽を聴いていると、描写されるのはあくまでBossの日常を元にしているだろう。
そのパーソナルな描写が、不意に自分の世界と置き換わる瞬間を描くのかもしれない。
ここで描かれるこの日常は、私にとってはどの場面なのかな、なんてことを考えながら聴く訳である。
個人的にはコンテクストが一般化されて、またそれぞれのコンテクストに落とし込まれていくような、そんな感じだろうか。
年末には有観客でライブもやるが、チケットも取れたので楽しみだ。
THA BLUE HERB "バラッドを俺等に"【OFFICIAL MV】
そんな日常形では、Brahmanとコラボした『Cluster Blaster』に収録された”Back To Life”だろうか。
日常へ戻ろう、というタイトルかなと思うけど、この曲もメッセージ云々というよりは普通の生活である。
今ではこれをやるだけでめんどくさいことをいうやつが出てきてしまうような世の中になってしまったので、なんだか特別にも思えてしまう。
BRAHMAN feat. ILL-BOSSTINO「BACK TO LIFE 」MV
へんな感傷にひたろうとは思わないけど、つまらないことに気兼ねしない暮らしはしたいよね。
まあ、今は仕事が忙しすぎてそもそもままなっていないけど。
ところで、毎年この時期には個人的年間ベストアルバムを選んでいるんだけど、どうしようかしら。
また考えよう。