いわゆるスーパーバンドというやつはどうしてもテンションが上がってしまう。
特に好きなバンドメンバーが組んでいるとなればやっぱり聴きたくなってしまうしね。
ここ最近で一部で大変話題だったのはThe Spellboundというユニットだろう。
いまや日本きってのオルタナティブロックを体現する存在になったThe Novembersのg/Voの小林君と、Boom Boom Satellitesの中野さんのユニットである。
あまり知らない人のために補足すると、ブンサテはこの中野さんと川島さんという人の二人組で、90年代から活動しており日本よりもイギリスなどの海外で先に人気に火がついたバンドで、ダンスミュージックとロックを合わせた音楽は当時の最先端と言われたものだ。
テレビCMや映画でも曲が使われているし、バラエティでもよく使われていたので実はどこかで聴いたことがあるはずだ。
かっこよかったのよ、このバンド。
川島さんは女優の須藤りささんの旦那さんでもある。
ところが、彼は脳腫瘍を抱えており、幾たびの手術にもかかわらずついに亡き人となってしまった。
ギリギリまでライブも音楽活動もしていたのだけど、亡くなって間もなくの頃の中野さんのインタビューは、虚無感とどこかやり切った感もある不思議な、しかしとても印象的なものだった。
それからしばらく音楽活動は休んでいたが、徐々に裏方的に再開し始めて、その中でSNSでパートナーを募集、本格的に活動を再開すると言ってとても期待値が上がったわけだが、そこに応募したのが小林君である。
音楽的には大分違うタイプの2組なので、どんなだ?と楽しみだったよね。
今年に入ってシングルを立て続けにリリースして、今回初ライブが7月の頭に行われた。
平日にも関わらずチケットは即完、私は仕事の都合でどうしても行けなかったが、嬉しいことにその週末にYouTubeで無料配信。
太っ腹すぎるやろ。
そんなわけで、自宅で気持ちよく酒を飲みながら拝見したのでした。
このユニット名義での曲は5曲配信されており、PVも撮影されている。
企画色の強いものではあるが、音楽は流石のクオリティ。
曲的にはブンサテぽさが強い印象はあるが、歌メロは小林くんらしさも感じるものだ。
彼もかなりハイトーンもシャウトも行けるので、ハイファイなアレンジにもハマっており、思った以上に相性がいいという感じだった。
曲はどれもとてもポジティブなフィーリングがあって、どの曲も聴いていて本当に気持ちいい。
ただ、強いて言えばもう少し二人の感性が溶け込んだらもっと面白くなりそうだという印象。
そんな彼らのライブだが、先にも書いたように元々中野さんのバックグラウンドにはダンスミュージックがあるので、曲をアレンジしまくりでダンスな仕上がりになっていた。
小林くんもいろいろなところでギターを引いており、シューゲイザーも影響元にあるので、その展開でも違和感なく楽器を鳴らしている。
さらにドラムにはブンサテでも叩いていた福田洋子さんを据えつつ、もう一人いてダブルドラム編成だ。
これは会場で聞いてこそ響くところもあっただろうから、やっぱり生でみたかったなと思うが、ともあれできるだけスピーカーのボリュームもあげて楽しんだ。
ライブも終盤に差し掛かった頃に、まずはノベンバの”Tokyo”という曲がカバーされた。
割とギターが印象的なオーソドックスな編成のバンドの曲にあってインダストリアル的な曲で、AKIRAのようなサイバーパンク感もあるかっこいい曲なんだけど、このユニットでやっても見事にハマっていたね。
ノベンバの曲をこういう別のバンドでカバーという形で聞くことはほとんどないので新鮮だったね。
で、こっちの曲をやったんだからそりゃやるだろうとなるわけだが、焦点はどの曲かだ。
演奏されたのは"Back On My Feet"で、ハイトーンで歌う分どうしても川島さんと比較してしまうところはあるけど、何の違和感もないし、しゃくり上げるようなところなどは川島さんのそれをトレースしており、リスペクトもしっかり感じらて非常にかっこいい仕上がりになっていた。
やっぱりちょっとこう、グッとくるよね。
川島さんのことは本当に残念だったけど、一方で中野さんも引退するにはまだ早いし、その才能はもっと音楽を作って欲しいと思うよね。
でも、このライブで以てようやく本当の意味で前に進めたのかな、などと勝手に思えてしまって、感動的だったな。
そしてその後に演奏されたのが"Flower"という曲だったんだけど、このセットリストの並びも素晴らしすぎる。
ライブは正味1時間くらいで終わったのだけど、いやね、本当に良かったよ。
ちなみにトップ画は公式のアー写だが、この写真のイメージよりも実際の小林くんはめちゃ好青年だ。
ともあれ、また12月にもライブを行うらしいので、これは行きたいよね。
チケット抽選申し込んでおいたぜ。
私はブンサテもノベンバもどっちも好きなので、このユニットや今回のライブの選曲はとても好意的に映ったし、素直によかったなと感動した。
多分双方のファンの属性は違うだろうから、それぞれにどう映ったかはまた興味深いところだけど、いずれにせよ次回のライブに向けてさらなる曲や、アルバムとしてのリリースも期待してしまうよね。
次回のライブでカバー曲なしで全曲オリジナルだったら、なんだか個人的にはまた嬉しいね。
まあ、カバーでも嬉しいんだけどね。
ノスタルジーというかセンチメンタルというか、そうした感情がどうしても出てしまうけど、純粋に曲としてもかっこいいし、ブンサテとは違う、もちろんノベンバでもない、新しい今の音を鳴らしている感じが頼もしい限りだ。
中野さんがメインのユニットになるため、今後の継続でどんな形になるのかはわからないけど、よりバンド感も強めつつ、かっこいい曲をバンバン世に放っていって欲しいね。
ちなみに、このPVのダンサーは菅原小春さんである。
歌詞も味わい深いので、是非曲と合わせて読んでみて欲しいですね。