前回はバンドのアルバムリリースの時になされたインタビューを中心に探してみたが、切り口を変えると出てくる記事も変わるので、また更新していこう。
すでに1万字を超えたが(20220918時点)。
今回は対談やソロなど、バンド本体とは別な切り口のインタビューなどを中心に探してみた。
基本的にはアルバムなど作品リリースのタイミングで、プロモーションも兼ねてインタビューが採られることが多いのだけど、その際にソロや別バンド、あるいは他のアーティストとの対談やメディアの企画などもあって、そういうものも面白い。
こちらは2014年リリースの佐々木健太郎さんのソロについてのインタビュー(2014.03.12)。
ソロについてはライブで自主制作のCDを売っていたのだけど、それをまとめなおしたような側面もあるため、まさにファン待望というところだろう。
私はバンド自体を聴くようになったちょうどそのタイミングでもあったな。
2014年なので、まさに『最近のぼくら』の頃なんだけど、下岡さんが覚醒しまくりの頃に自分は何を書くのかという葛藤があって、それをソロの活動を通してうまく消化できたんだなというのが良くわかる。
元々彼の曲はパーソナルで内省的なものが多いんだけど、だからこそバンドとして社会的な目線が強くなっていく中でどういう世界を見せていくかというのは大きな転換点であろう。
結果的に、彼は下岡さんとは違う方面の才能が十二分にあって、自分なりの違う形で表現することができるし、なにより彼自身が音楽でやっていくんだという確固たる決意もあったから、成し得たんだろうなというのがわかる。
このアルバムは今でも不意に聴きたくなるんだけど、まさに30代半ばくらいで、周りの環境も変化してきて、自分の無限の可能性を諦めているようなタイミングで聞くとすごくささると思っているのだけど、その理由も改めてなるほどと思うようなところだ。
ちなみにこちらはレーベルのインタビュー。
先のインタビューでも語られているけど、このアルバムはある種ガス抜きであると同時に表現自体の見直しのタイミングだったんだろうなと。
全部のパートを自分で演奏して、歌ってというまさにシンガーソングライターなアルバムなんだけど、こうやってやっていたことを全部バンドにフィードバックされているし、ずっと変わらずに行っているのはバンドとしてどうやっていくか、というところが焦点にあることだ。
ファンとしては嬉しい限りだ。
ただ、また健太郎さんの世界全開のアルバムもきいてみたいから、ソロ第2弾も待っている。
公式ではないけど、めちゃくちゃいい曲があるのは知っているので、本当に待っているのよ。
そしてこちらが下岡さんのソロについてのインタビュー、21年5月のものだ。
前半はカレーを食べながら、若い頃からの活動の振り返りみたいなことも語られているのが面白い。
ソロについては終盤に語られているけど、HIPHOP的なものをやろうとしているのが面白い。
的なと書いたのは、トラックメイカーはいろんな人に頼んで、自分は歌詞を書くという作り方がまさにヒップホップのMCのソロみたいだなと思ったから。
最近の下岡さんの曲はループが多いし、言葉に軸足を置いていくほどそちらに接近していくのは必然といえばそうなのかもしれないが。
22年9月時点でまだ数曲発表されているくらいだけど、アルバムの構想もあるようなので引き続き楽しみに待ちたい。
ロックバンドな曲よりもポエットリーディングなので、健太郎さんとのコントラストも面白いところである。
しかし、こうやって2人のソロ作を並べてみても、これがバンドでちゃんと成り立っているのがちょっと不思議な気もする。
やっぱり変わったバンドだよな。
そのほか対談系をみていこう。
こちらは2013年、『Newclear』で客演したやけのはらと下岡さんの対談。
ここでは歌詞にフォーカスした対談になっていて、片やヒップホップ、片やロックバンドという違いはあれど、根っこの価値観では近いものを持っているようである。
下岡さんの、歌いたいことがないなんて理解できない、という感覚って面白いなと感じるところでもある。
本質的に彼はアーティストなんだろう。
後半のお互いの歌詞をみてここいいね!て言い合っているところがなんか微笑ましいんだけど、そこで取り上げられた“Gold Rush”の一節は激しく同意だ。
この曲って明るい曲調なのになんとも言えないポッカリ感があって、それを絶妙に言い表しているようで好きなんですよ。
改めて歌詞を噛み締めてみたくなる内容である。
こちらは2014年11月の前野健太さんと下岡さんの対談。
配信限定シングルで共演したので、その時のトピックを中心に話しつつ、過去の話に花開いている。
実はデビュー間もない頃に交流があったという。
珍しくというか、すごく下岡さんが楽しそうなのが印象的だ。
マエケンさんは正直あんまり知らないんだけど、結構ズケズケとした(というとネガティブに聞こえるがいい意味で)キャラのようなので、そこに引っ張られている感もあるが。
ただ、ここでも歌いたいことがないなんて信じられないという、音楽家としての根っこが双方に語られていて、こういう価値観の共感がお互いにあるからこういう空気にもなるのかもしれないね。
こういう同世代との会話はそれこそゴッチとのインタビューくらいか。
こちらも近い時期の対談、ヒップホップの田我流とのもので、2014年11月だ。
田我流さんは見た目にイカツイが、発言が率直というか素朴というか、面白いもので結構語っている話だったり世の中の見方だったりが確かにと共感できるところがある。
世の中がゾンビに見える、同じことばかりで気持ち悪いという発言も、すっごい感じるところだ。
このインタビューは2014年なので8年前だけど、当時と今って全然変わっていないどころかますますディストピアみたいな世界に近づいているように感じる。
そういう時代の空気みたいなものを感じ取る人って、やっぱりアーティストなんだろうな。
ところで、“抱きしめて”をリミックスしたそうだが、その音源を探してみよう。
Spotifyにないんだよな。。。
下岡さんの対談はヒップホップが多いんだけど、こちらはアルバムでも共演している呂布カルマとのもの。
2018年8月で、『Still Life』のリリース時のものである。
呂布さんがアナログフィッシュのファンだというのは界隈では有名なんだけど、彼のアナログフィッシュ分析がしっかり的を射ている感じが見事だ。
何かとSNSで炎上している呂布さんだが、当然だが言葉選びには相当意識的だろうし、むしろ案の定反応して発火している連中をみていると、ある種現代社会における大衆と呼ばれる人の在り方が炙り出されているようにも感じるところだ。
対談の前半ではプロテストソングをどう表現するかという話があって、“戦争が起きた”について語られているんだけど、わかるわ〜と思いながら読んでいた。
この辺りの切り取り方というか、ものの見方というか、やっぱりそこが共感できるって大事だよなと思う。
また、個人的に共感したのは、アナログフィッシュは一緒に年をとってくれるバンド、というところ。
等身大という言葉はよく使われるけど、それが自分についてじゃなくて社会との関わり方みたいなところで通じる空気感があるんだよな。
否定するんじゃなくて、あるものはあるものとして受け止めつつ、その上でどう向き合っていくかを考える、と言うことを2人ともに言っており、それはまさに下岡さんの歌詞から感じる価値観かなと思っていたので改めて得心した気分だ。
呂布さんも同じようなことを考えており、その共感できるところをお互いに言語化できている。
それが素晴らしいところである。
彼らは昨今シティポップという文脈でも語られるので、若手との対談も。
こちらは今をときめくYogee New Wavesの角館くんとの対談、2015年9月なのでデビューして、まさに注目度急上昇のころだ。
『Almost A Rainbow』の頃なので、そこに絡めた話もしつつ、当時シティポップとして話題にされていた真っ最中のヨギーの話も興味深い。
私はヨギーも好きで、どちらのバンドからも都会というものを感じているんだけど、田舎から出てきて都会を歌う下岡さんと、生まれた時から都会で育っているヨギーの角館くんでは受け取っている世界やそのアウトプットが違うのが面白いと思っていて、その背景も感じ取れるように思う。
芸術家のあり方として、壁と卵の話が出てくるけど、その解釈やスタンスも違うし、社会への対峙の仕方も違って、それが表現に表れているなと感じる。
また、それぞれの歌詞の書き方についても、なるほどそうやって書いてるんだなというのはファンとしてシンプルに興味深いところだ。
そしてこちらはトリプルファイヤーとの対談(2016年5月)。
だらしない54−71などと呼ばれるが、独特の歌詞世界を持っているバンドである。
今回は健太郎さんも参加である。
アナログフィッシュが声をかける形で対バンイベントがあったので、それに際してのものだが、下岡さんが食い気味に質問しているのが面白い。
他方のトリプルファイヤーは吉田くんと鳥居くんの2人だが、淡々として見えるのは単に私が彼らのキャラを知らないだけかもしれないが、あの絶妙な歌詞はかなり意識的にやっているんだろうから、そういう隠し持っている感がいいよな。
余談だけど、この吉田くんは呂布カルマとフロリースタイルバトルをやったことがあり、今もYoutubeでその映像が残っている。
ちょうどこのイベントと近しい時期だったのだろう、呂布さんがアナログフィッシュのファンだという話もしっていたので、バトルでそれを言おうと思ったけど言えなかったというエピソードが彼のキャラを語っているようで好きだ。
それにしても、この頃はミーターズやjb‘sの名前がよく登場しているな。
今度聞いてみよう。
こちらも対バンからの対談、Alfred Beach Sandalと健太郎さんの対談だ。
ここでは健太郎さんがアルフレッドのヴォーカルと話をしているのだけど、彼の曲作りのことだったり、あるいは歌について語られている。
タイミング的に一迷いあった後くらいなので、自分自身が何を出していくかという焦点を定めたような時だったんだろう。
ここ数年で健太郎さんの歌は明らかに変わったし、それに伴って歌曲も変わってきているから、その途中段階というのがわかって面白いし、この時期のインタビューはほぼ同じ発言をしているので、本当に思い悩んでいたんだろうなと感じる。
ソロの“Stay Gold”でも「手に入れられないものに気づいてしまった分だけ、残されたものが愛おしくなっていく」という歌詞があるけど、そういうことを考える瞬間ってやっぱりあるんだよね。
こちらも対談イベントをきっかけにした対談。
21年の6月ころかな、ライブが徐々に再開し始めた頃に開催されて、私も見に行ったんだけど、こちらもアナログフィッシュの方から声をかけて実現したもので、PaioniaとBetcover!!の2組との対談である。
Betcover!!はまだ20そこそこだという。
Paioniaが30代で、アナログフィッシュが40代とちょうど10代刻みの3組のクロストークだが、初めはジェネレーションギャップ的な話から。
カセットテープのハイポジとか超なつかしいな。
しかし、意外というとなんだけど20代でも音楽含めて知っているものは知っている。
親御さん世代が聞いているとその影響で耳に入ったり目にするものはあるから当然だろうけど。
その辺りのアイスブレイクは置いておいて面白いのはまさに20代の彼は音楽業界には期待していない中で何か仕掛けていきたいとすごくアグレッシブな考えを持っていて、映像クリエイターでも嫌いな人たちがいるとはっきり言ってしまうこと。
他方でアナログフィッシュとPaioniaは多分そういう段階は過ぎているから、そうして相容れない価値観だったり表現だったりしても否定すると言うことはせずに、違う文脈でそれぞれにポジティブな思いを持っているかもしれないしさ、なんて言って見せるのが大人というかなんというか。
10年て結構開きがあると思うのだけど、それぞれに思うところがしっかりあるから、歌詞の書き方、MVの位置付け、メジャーやインディーという価値観など、それぞれの時代ごとの悩みがあってなるほどなと思うところだ。
また、東京と地方のような話もあって、地方出身の私としてはすごく共感的に思うところがたくさんあったな。
地元では音楽の趣味の合う人は誰もいなかったし、文化的な暮らしなんてなかったもの。
単に行動範囲の問題もあるけど、少なくとも身近ではなかったから、関東に出てきてからの方が圧倒的に楽しい。
でも、ずっとここにいたいかと言われればそうでもないかもなと思いつつ、また悩ましく感じる時期にもなっているけどね
対談ではないが、こちらは下岡さんがプロデュースしたHelsinki Lamda Clubを中心にしたインタビュー。
ほぼヘルシンキの新作についてなので、下岡さんはちょっとしか話していないし、あんまり実際にどんな感じだったかは語れていないのが残念だ。
ただ、あれしろこれしろというよりは、やりたいことが明確な人たちなのでその背中を押すような役割だったのかな、という感じである。
こちらは海外のバンドとの対談。
台湾のバンドなのだそうだが、Spotifyなどでアナログフィッシュを知ったという。
アナログフィッシュの都市別のリスニング数だと、台湾をふくめたアジア圏が多く、東京は4位なんだとか。
彼らもたまたま耳にして気に入ったというが、台湾はもともと日本の音楽も馴染み深いようで、ceroなんかの名前も出てくる。
全体的に深い話をしているわけではないけど、アジアのバンドも面白いものをよく耳にするようになったな。
それこそ同じ台湾のElephant Gymはフジロックにも出演して、11月の単独はソールドアウトしている。
韓国のヒョゴは数年前に大きく話題になったし、かっこいい音楽をやっている人は世界中どこにもいるということである。
文化的なところではどんどん垣根がなくなっていくのが面白い世界だ。
最後に現時点での最新インタビュー、縁深いLamamaの周年に寄せたコメントである。
Lamamaとの思い出という観点で対バン的なトピックが多いけど、確かにいろんなバンドと胎バンしているバンドだなと思う。
それこそ私が初めてアナログフィッシュを見たのも対バンイベントで、相手はMOROHA とLITEである。
どっちもこれまたジャンルレスにあちこちで対バンとかしているバンドなので、そういう何かで惹かれあっているのかもしれない。
いずれにせよ、こういう企画を通して新しいバンドを知っていくことはよくあることなので、こういう思想のあるブッカーさんだったりライブハウスだったりというのは大事だよね。
対談の面白さは、自分が持っていない、あるいは明確にできていないものを相手の言葉だったりコミュニケーションを通して輪郭がはっきりしていくような展開が生まれることがある。
また、一見意外に思えるけど自分の中でもこの人ら好きだなというときに、音楽性は違うけどこういうところが確かに通じるぞ、という発見もあったりする。
最近活字を読む機会がめっきり減っているけど、改めてこういう文化は大事だなと思った次第だ。
これからもこういう記事は出てくるだろうから、また折に触れて更新していこう。
もし読んでくれた人の中で、このインタビューもれてまっせ、というのがあったらぜひリンク付きで教えていただければ幸いです。