先週と今週と、久しぶりにライブを続けて観に行った。
コロナもいったんは原因不明ながら落ち着いたとあって、街の人ではかつてのようだ。
ライブハウスも耐えかねて潰れてしまったところは少なくはなかったが、無事乗り越えたところでは徐々に再開されている。
とはいえ、入りはキャパの半分程度に抑えられており、またアルコールは出さないというところもまだまだ多い。
それでも生で聴けるのはやはり嬉しい限りだ。
配信も並行して行うところも多いのは今後もしばらくは続くのだろう。
まずは先週は毎年恒例、10/10を記念日として何かしらの企画をやっているアナログフィッシュだ。
以前はタウンミーティングとてアコースティックライブ企画を長らくやっており、それはそれでとても良かったのだが、コロナ禍以降は少し趣向も変えており、昨年はライブ映像を事前に撮影し、しっかりミックスしてものを配信、後にDVDとしてもリリースされており非常に素晴らしい映像作品になっている。
今年は彼ら自らも明らかな転換点となった作品と呼んでいる『荒野』の10周年記念として、東京では昼夜2回にわたりライブが行われた。
デビュー当時の彼らはある意味でわかりやすいギターロックバンドいった感じで、曲のテーマだったり軸だったりは今にも通じるけど、表現としてはもっとシンプルというか、ストレートであったし、健太郎さんの詞も下岡さんの詞もわりと内省的な印象のものが多かった。
アレンジもギター、ベース、ドラムでのシンプル編成で、しかしよく聴くと曲そのものやベースラインなんかは割とエキセントリックなものも少なくなかった。
そこから作風がぐっと変わったのは、当該の一つ前の『Life Goes On』ではないかと思っている。
曲もミニマルな展開のものが増え、特に下岡さんの曲はより抽象的というか、断片的な言葉が増えたように思うし、ヒップホップ的な感じも色濃くなったように思う。
他方の健太郎さんの曲は対象が少し大きくなったようにも感じられた。
その後に彼らを大きなブレークスルーに導いたのは、やはり"Phase"だろう。
「失う用意はある?それとも放っておく勇気はある?」という最高のパンチランを放つ曲だが、特に今の時代、今と言いながらここ10年くらいの日本の状況に対して強烈に問題提起を突きつけてくる。
この言葉は常に普遍的なメッセージとして響くだろうし、実際10年経った今でも色あせないどころかなお鋭さを増していると言っていいだろう。
今回はこの『荒野』収録の曲を中心にしたセットリストながら、順番はアルバム順というわけでもなくきちんとセットとして組まれている。
最近ではリアレンジverでの演奏となっている”戦争が起きた”もオリジナルverで披露されたのだけど、考えてみたらこのオリジナル版をックのは初めてかもしれない。
また"No Way"の絶妙な緩さと諸行無常な世界観もいいし、"チアノーゼ"なんかはこのマスク環境、コロナ禍のこの状況を見事に歌い上げているようで、やっぱりここでも改めてハッとさせられてしまう。
そして"Hybrid"のアンビバレントな歌詞もやっぱりいいんだよな。
この頃からのアルバムは3部作と位置付けられており、下岡さんのドライで鋭い社会的な歌詞が際立っており、アルバムの曲数も顕著に下岡さんの曲が多くなっている。
一方の健太郎さんの曲では、"ロックンロール"、"Fine"、"ハミングバード"なんかは非常にポジティブというか、いい意味でシリアスさが抜けた心地よくメロディのある曲なので、アルバム全体のトーンを絶妙に重くならないようにしている。
最近のライブのハイライトとなっているのがタイトルトラックでもある"荒野"だが、この曲の歌詞もまた秀逸で、「選べるものが1000あろうが一つだろうが変わりはしない、大事なものはどれかじゃなくて、これしかないの」という一節も本当に素晴らしい。
消費社会の云々とはよくいうが、そうした数に惑わされずに自分にとっての本質が何なのかをちゃんと見て行こうぜ、というメッセージがまさに荒野というタイトルにも込められた意味だろうか。
こうして『荒野』収録の曲の合間には新曲も披露され、既にシングルカットされていた"Satruday Night Sky"も既にだいぶ手慣れており、彼らのキャリアでも随一のデジタルファンクな1曲で、ベースラインが腰にきまくる。
カッティグギターも軽快だし、ドラムも電子パッドも駆使しているが、涼しい顔して叩く州一郎さんのプレイやビリティも光っている。
そして新たに披露された"Is It Too Late"も、どこか80年代〜90年代的なフレイバーを感じる1曲で、切なさとそれでも後半にはどこか開き直るような明るさというか前向きさを感じさせるように思う。
先にライブで披露されていた"Yakisoba"もそうだけど、やはり今を反映してか、当たり前の日常、特別ではない日々っていいよね、というような内容となっているのは面白いところである。
12月にはついに新アルバムもリリースされるとのことなので、楽しみで仕方ないね。
それにしても、やっぱり彼らのライブは定期的に見ておきたいな。
そして昨日は、これまた久しぶりのLITEの単独公演。
元々5/28に予定されていたが、緊急事態宣言に伴い延期となっていたものだったのだが、無事に開催できてよかった。
今回は単独と言いながら多くのゲストも参加予定なので、非常に豪華なライブとなっている。
彼らはこの2年の活動も非常にアグレッシブで、たまたまというところはあると思うが、The Roomというアプリを活用した独自のファンコミュニティを運営し始めたり、コロナになって早々に遠隔でのライブ演奏を実現してそれをnoteにまとめたり、間に書籍も出したりと、まさに音楽をなりわいとしながら先進的な試みをずっと行っており、そういった面も興味深くなっているバンドであった。
参考:
そして今回のゲスト陣についてだが、これまた豪華。
以前から交流のあったAvengers in Sci-FiやDe De Mouseをはじめ、The Fin.や青木ロビンさん、そして9mmの滝さん、Cinema Stuffの辻さんと、その筋での力のある人ばかりだ。
面白かったのはロビンさんで、何と沖縄からの遠隔出演。
ZOOMを使いながらタイミングはバッチリだ。
ただでさえ複雑で難しい曲にヴォーカルをつけたアレンジをしていたんだけど、それをこう言う形で実現するとは。
スクリーンにはメンバー全員も含めてカメラ映像も投影され、非常に演出としても凝っているし、これまでのリモートライブの成果も着実に生かしている。
すごい。
ちなみに演奏自体は相変わらずの鉄壁ながら、しょぱなからちょっとミスがあったり、演奏途中でちょいちょいタイミングを外すところもあったように思う。
こういう環境でのライブは久しぶりだろうから、やっぱり大変だよね。
何と2時間を超える長丁場だったんだけど、彼らのあの楽曲でこの時間の演奏は相当ハードだろうな。
特にDe Deさんとの曲は、彼ら自身1日3回までが限界、というくらいハードらしい。
どんだけだよ、と言う気がしてしまうな。
しかし、彼らのライブについても毎回本当に時間の感覚がぶっ飛んでいくし、毎回本当に驚く。
久しぶりと言えどさすがだったし、ゲスト陣もみんな良かった。
帰りには気持ちよく酒のんで帰ったね。
ところで、図らずも2週連続でこの2組を見たのだけど、実はアナログフィッシュを初めてみたのもLITEがきっかけだったんだよね。
それは、今や一般層にも認知が広がってきたMorohaの2ndアルバムのリリースパーティであった。
当時音楽雑誌で彼らのアルバムが絶賛されていた頃で、そこでLITEも出るということで暇だったので行ったろ、といって足を運んだライブだったが、アナログフィッシュは当時『Newclear』をリリースした頃だったようで、1曲目に演奏された"抱きしめて"がとても印象的で、それがきっかけで聴くようになった。
また、出番がアナログフィッシュが1番だったんだけど、その後のLITEのライブを袖で見ていた健太郎さんが、すごい複雑な表情をしていたのも印象的だった。
当時どんなことを思っていたのか、覚えていたら聞いてみたい思いだ。
ともあれ、個人的にはそんな思い出もある2組なので、いい週末を続けて過ごせている。
これからまた徐々にライブやイベントも再開されていくだろう。
しばらくは不自由さを強いられることはあるだろうけど、それでもこうして開催できていることに感謝だ。
LITEのライブの時に、メンバーからの声かけがあったにもかかわらず大声でほたえていたのがいたのが残念だったが、本当にもし何かあった時にそういう事実が本当の原因かどうかは別に槍玉にあげられてしまう世の中なので、そういうところは本当にちゃんとしたいところだ。
図らずもまたこの時期に私は転職をするので、しばらくは時間に自由な日々となる。
と言って既に結構予定が入っているんだけど、ともあれ楽しく文化的な日々を過ごしたいところだ。
でもやっぱり、ライブっていいですね。