人のルーツを聞くのは結構面白い。
この人ってなんでこんな風に考えるんだんろうか、なぜこんな価値観を持っているんだろうと言うことを、日常でも結構探ってしまう。
それを掘り下げていくのは結構面白いのだけど、中に掘り下げても何も出てこない人もあって、残念ながら私はそういう人に興味を失ってしまう。
有り体に言えば、つまんないやつだなと思ってしまうわけだが、存外ちゃんと語れる人の方が少ない。
別に影響源がなにかとか、自分を形成しているものがなにかとか、特定のものにこだわっているわけではなくて、要するにお前のこだわりってなんなんだということを言語化できる人が好きなんだよな。
割とこの価値観は通底していて、日常生活でもその語る言葉を持たない人は興味が湧かない。
少しみる側を変えると、いわゆる自分というものがなくて、常に発言の主語が別の誰かであるような人は、結構無理である。
つまんないやつだなと思うし、そもそも信用できない。
だって、判断軸が自分にないのだから。
そういう人って話していても本当にしんどいものである。
さて、私が高校生の頃からすっかりファンとなっているThe Mad Capsule Market'sの頭脳にして、いまだに一貫してそのスタンスを崩さないのが上田剛士だ。
デビュー当時からバッキバキのハードコアパンク、今もずっと彼の敵は社会というシステムだ。
昨年数年ぶりにAA=のライブへ行ったんだけど、ずっと変わんらないなと安心したものである。
そんな彼が、キャリアで初の自身の名義で作品をリリース。
それは彼が影響を受けた曲・アーティストのカバーアルバムだ。
元曲はハードコアからニューウェイヴ、YMOもいる。
彼らの作品を知っていればそりゃそうだよねというラインナップである。
シーナ&ザ・ロケッツ、リザード、アナーキーにINU、スターリン、ミチロウ、あぶらだこといった日本の面々からThe Cure、ピストルズ、デッケネといった海外勢、らしいラインナップだ。
彼なりにアレンジも加えているのだけど、見事に全てがTsakeshi印。
あの歪みまくったベースが聴きまくっている。
レコーディングではAA=のメンバーも参加している。
今の彼を表現しつつ、しっかり歴史も感じる。
控え目に言ってめちゃくちゃいい。
1曲目はリザードの曲らしいが、ハイファイなアレンジと、イントロがあのベースで始まる時点でもうこのアルバムはオリジナルだ。
スターリンは”Stop Jap”だが、ヴォーカルは大胆にアレンジされており、原曲は爆裂テンションの曲だが、それとは真逆に仕上がっている。
個人的にびっくりしたのが、あぶらだこから2曲も選出されていること。
ただ、特に”象の背”については歌詞自体が彼の表現してきたこととリンクしまくりなので、納得なのだ。
そしてこのカバーでも光るのがThe Cureのメロディの良さ。
そしてYMOのカバーの"Tighten Up"のポップさ。
そもそもカバーのカバーだが、あのセリフ部分をAA=のメンバーで置き換えているのがちゃめっけ満載、そしてベースラインが印象的な曲なので、ハマりまくりだ。
本編ラストはミチロウの”仰げば尊し”だが、そのアウトロには”あやつり人形”のあのイントロギターだ。
仰げば尊し自体は卒業ソングの一頃の定番だ。
先生賛美みたいな曲なので、個人的にはクソみたいな曲だと今は思うが、だからこそミチロウverをカバーしているのに意味がある。
そしてそのラストにあやつり人形を絡めるのがセンスだなと思うわけだ。
ちなみにボートラはアナーキーだが、Babymetalの曲を作ろうがアニメの主題歌やろうが、彼は本質的にずっと戦い続けているし、根っこの問題意識は変わっていないというのがよくわかる作品だ。
人ってやっぱり変わらないし、歳を取れば丸くなるかと思ったら、そんなことはなくて、むしろますます厄介になっていくらしいということに最近気がついた。
若い奴らから見たら大人気ないとか思うかもしれないけど、人間ってやつは変わらないどころか、本質はどんどん加速していく。
世界にムカついている人はずっとムカついているし、納得できることの方が少ない。
まあいっかって思うことも多くなるけど、譲れないことは徹底的に譲れない。
こういうもんなんだなと思うよな。
ともあれ、そんな彼のアーティスト活動の根っこが見えるようで、とてもいい作品である。
最近聴くアーティストも自分と同じように歳をとっていることが多くなっている。
そんな彼らをみてますます思うのってそれなんだよな。
Trent Reznorの大人気なさって言ったらハンパないだろ。
でもだからこそ私は好きなんですよ。
大学生くらいの時に色々と音楽を聴くようになって、なんなら自分で音楽を選択するようになったその瞬間から今でも本質は変わらないし、多分死ぬまで変わらない。
せめて同じ気持ちを持っているんだろうなと思える存在がいることが、私にとっては数少ない救いだ。 zdfg
ともあれ、どれだけ好きなバンド、楽曲でも自分色はかならず出してくるところとか、彼が好きな理由なんですよ。
またライブにも行こう。