ロックも多様化しすぎなほど多様化していて、もはやカテゴリというものはほとんど意味をなさず、CD屋で探すのに便利、という程度のものになった。
いや、むしろ不便になったかもしれない。
おいてある棚がどの棚なのかがわからなくてね。
ダンスミュージックとのクロスオーヴァーも進んで、今や踊れるという要素がロックにも求められるのが当たり前のようである。
かつてはロックンロールと呼ばれた音楽も、いつの間にかロックとされ、しかし昨今ようやくロールを取り戻した、なんて話もあるくらいである。
しかし、やはりいわゆるダンスロックはダンスロックであってロックンロールな訳でないように思う。
なんというか、感覚的にね。
結局のところロックンロールと呼ぶにふさわしい音楽をやっているバンドは少ないように思う。
既に時代が違いすぎるのかもしれない。
そんな中、個人的にロックンロールとしか呼べないと思えるバンドがある。
Eagles of Death Metalである。
Queens of the Stone Ageのジョシュのサイドプロジェクトのような位置づけで認識されているが、実際はそういう訳ではない。
彼に取っては自分のバンドがQOTSA、そしてバンドメイトとして参加しているのがEODMであろう。
だって、かなり本気でやっているっぽいし。
このバンドは彼の友人であるジェシーと2人組で、メインソングライターなどはジェシーである。
ジョシュはレコーディングにおいて絶大な力を発揮している(ほとんどの楽器をプレイできるマルチぶり)のと、あとはプロデューサーのポジションにいる為、実質ジェシーの補佐のようなポジションと言えよう。
何故なら、このバンドの音楽性において、ジェシーはなくてはならないから。
あの胡散臭いげな風体と、セクシー&クレイジーなハイトーンヴォイスがあってこそ、EODMはロックンロールなのである。
彼等の楽曲は極めて軽い。
軽いというよりは軽快という表現の方が好ましいかもしれないが。
前作『Death By Sexy...』(タイトルからして最高すぎる)では、70~80年代的なテイストを強く感じたが、今作の方がそういう意味では現代的である。
かなり気合いが入っているのはアレンジや楽曲のテンションでよくわかるが、一方でシリアスになりすぎず、あくまで自分が楽しいこと、そして聴く人も楽しめることを第一義としているようなフィーリングがある。
適度に肩の力が抜けて、でもかっこいいのである。
前作は全編にわたってとにかくふざけていた印象があったが、今作は一著マジになっちゃう?みたいなのりかな。
マジなんだけどどこか笑えるような、そんなおかしさがあって、とってもいいのです。
相変わらずブックレット内の写真もふざけていて最高だし。
このバンドのよさは、やはりやっている当人たちが思い切り楽しんでいる点である。
最近のバンドは良い音楽を作っているけど、ともすれば真剣すぎるきらいもある。
それは良いことだし、それで良いもんが生まれているのだから決して間違ってはいない。
しかし、そうした中でこのような良い意味でふざけたバンドを聴くとかえって新鮮で、しかも楽しいのである。
やっている当人たちは本気で楽しんでいるしね。
きちんとやることはやっているし。
歌詞は大概にせいよ、というくらい下世話だけどね。
ともあれ、この適度にロックで適度にエッチで、そして最高に楽しい音楽は実は少ない。
そしてロールを忘れない。
良いバンドだよ、彼等は。
ちなみに新譜のタイトルは『Heart On』というのだが、この言葉は「Hard On」をもじったものだとか。
その意味は、是非調べていただきたい。
多少下品でも、こいつらなら笑って許せる空気がある。
ああ、ライヴ行きたいな。