音楽放談 pt.2

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世界の毒性 ―System Of A Down

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今日は何について書こうかしら、と考えているところにScars on Broadwayが流れてきたので、今日はそれつながり。

わかる人ならもうわかっているであろうが、そうSystem of A Down(以下SOAD)である。

先の大統領選挙においては、それほどバンドマンたちの目立った運動は無かった気がするが、それはいかにG・ブッシュが駄目だったかを物語っているのであろう。

今回は「大統領が変わる」という事実さえあれば世界は変わると思われたから。

それが実現するかはこれから先の話である。


さて、そういう政治的な活動をするバンドというのはアメリカには非常に多い。

まあ実際には世界のあちこちにいるとは思うんだけど、セールス的にも成功しているアーティストというとやはりアメリカの方が多いように思う。

イギリスなんかは、確かに政治的な姿勢を示すバンドはいるんだけど、それを音楽にダイレクトにぶつけるという手段はとらないように思う。

もう少し観念的というか、間接的な立場からなされる場合が多いのは、大きな影響を及ぼした先達の手法ゆえかもしれない。

アメリカという国は、そんな風に文学的な語り口では届かないのかもしれない。

人種のサラダボウルなんて言うように、多種多様な民族のひしめく国である。

誰にでもわかる形で無いと賛同は得られないのであろう。

何かを広めようと思うのならそう言う視点は欠けないからね。


SOADの歌詞はかなり直接的で攻撃的で過激であるが、どこかユーモラスであるのが特徴的である。

いわゆるメタル系のハードコアなサウンドでありながら、他に類を見ない成功を収めている所以は、そうしたインテリジェンスによるところが大きかろう。

なんといってもヴォーカルのサージは元IT会社の社長らしいからね(しかもかなりもうかっていたとか)。


彼らが政治的な姿勢をとるのはそのバックボーンによるところが大きい。

彼らはアルメニア人であり、かつて大虐殺という惨状に合わされた民族であり、人種差別の対象にもされてきた。

そうした経験は彼らの音楽活動にもきわめて大きな影響を持っている。

先ほど歌詞はユーモラス、ということを書いたんだけど、辛らつなものは辛らつである。

今回画像に載せたのは彼らを一躍トップに押し上げた傑作2nd「Toxity」である。


このアルバムの冒頭”Prison Song”は、まさにアメリカ社会を攻撃した曲である。

刑務所(Prison)を作ろうとしている、と叫ばれる曲では、薬物対策に対する批判がなされる。

さまざまな思惑のためにドラッグは使われ、それを口実に取り締まることでいかにも国家警察でも気取っているかのようだ、みたいな感じかな、と思う。

この曲はかなり直接的であり、彼らのラジカルな側面が全開に出ている。

つづく"Needle"も、クスリとかを批判した曲なのかと思うけど。

3曲目"Deer Dance"では、弱者ばかり搾取しようとする権力者への批判が歌われる。

「子供達が自動小銃で押される」なんていう過激な表現がすさまじい。

この冒頭3曲は大好きで、カラオケにも結構入っているので割りと歌うんだけど、ま引かれるよね。


それはともかく、すでに3曲でもかなりの破壊力であるこのアルバム。

最後まで聞いていると結構疲れることもあるんだけど、その迫力はやはり本モノである。

以前「Mezmarize」のインタヴューのときに、ちょうどイラク戦争の後だったんだけど、ある雑誌で「はっきり言って俺は日本にも失望している。イラク戦争を止めようとしなかった」というような発言をしていた。

彼らはポーズでもなんでもなく、本気で音楽で現状を訴えようとしている。

一方でユーモラスさは欠かさないというのは、人に届けることを念頭においているということでもある。


日本にはまずいないタイプのバンドである。

というよりも日本の社会では生まれえないだろうけど。

よく言われるのは、日本で流行るのはあくまで極個人にとっての問題でしかない。

観念的で抽象的で自己陶酔的な歌ばかりである。

ハイハイとしか言いようが無い。

まあそれだけ平和てことだし、悪いことじゃないんだろうけど、今のこの時勢になってもなおそんな生ぬるい感傷にばかり浸ろうとするのはいかがなものかという気がしないではない。

だから自分勝手で被害妄想ばかり溜め込んだ馬鹿が量産されるんだよ。


まあいいや、最近はソロ活動の活発なこのバンドであるが、それぞれの活動においてもその軸はぶれることはない。

自分も含め、もう少し日本人も世界に対して意識的でなくてはいかんと思う。