変態的な音楽は大好きである。
予想もつかない展開、期待をまんまと裏切られる感じ、時にがっかりするが、実に刺激的だ。
俗にいう実験的な音楽という奴は、いずれにしろ聴いて損はない。
まあ、損と感じるかどうかは個人の問題だが。
しかし、一方で安心して聴ける普遍的な音楽やフレーズが恋しくなるのは人情というもんであろう。
とはいえ、本質的に軽い奴には感動もしようもがないし、心癒される事もない。
むしろその上っ面のきれいごとにむかつくばかりで、その反動とばかりにアヴァンギャルドと謂う名の変態性に走るのである。
重要なのは、やっぱり本気かどうかだよ。
いいポップもアヴァンギャルドも、自分に忠実という点は同じであろう。
イギリスの、いわゆるブリットポップ全盛の頃にでてきたバンドの一つにASHというのがある。
当時高校生ながらにデビューした彼らは、既にキャリア10年以上でもまだ30そこそこである。
Nirvana大好きな彼らの音楽にはそこかしこにその影響が見られる。
しかし、根幹には非常にポップなメロディと甘い歌声もあって、素直にいい音楽である。
昨年出された新譜は、彼らの最高傑作との呼び声も高いだけあって、いいアルバムであったね。
シャーロットも、抜けてしまいファン的にはやや不安とガッカリ感もある中で、3人でも平気というところ見せつけた、というと純粋なファンに怒られるかもしれないが。
ただ、今までツインギターだからかっこ良かった曲もあったからね。
で、私が最初に聴いた彼らのアルバムは、おそらくファン人気でも1位にくるくらいじゃないかと思うような秀逸なアルバム、「Free All Angels」である。
シャーロットが加わって2枚目となるこのアルバムは、美メロにティムのヴォーカルやシャーロットのコーラスが非常映えるキラキラと煌めくようなアルバムである。
1曲目"Walking Barefoot"からして既にさわやか。
眩しい、眩しすぎる。
続く" Shining Light"はまたキラキラのラヴソング。
10代の感覚はこんな感じだっただろうか。
かのノエル・ギャラガーも褒めたたえたという美メロの冴える曲である。
続く"Burn Baby Burn"はシャーロットのギターイントロで始まるロックな曲である。
細かいフレーズとティムのダイナミックなリフが非常に効果的な曲である。
このアルバム、正直にいうと好きな曲とそうでない曲は別れる。
曲のできにはちょっと差があると思う。
まあ、個人的な趣味の問題でもあるけど。
"Candy"は、個人的にはあんまり好きでない。
しかし、そのあとの"Cherry Bomb"は大好きさ。
やたらポップで、幸せな曲である。
10代男子は聴いておくといいだろう。
これ以降はいい曲、今一な曲が交互にくる。
好きな曲だけピックアップすると、”Someday”、"Sometime"、"Nicol"、"There's a Star"。
後半の曲には総じてやや切なさが漂う。
メロディは綺麗だし、一回聴けばサビだけは歌えるくらいのキャッチーさもあり、まさにポップである。
彼らの真骨頂はやはりこういう曲だと思う。
ティムの歌はうまいとはいえないけど、その声の青臭さと相まって曲と非常にマッチするのである。
青春というキーワードの非常によく似合う声である。
本編でも十分いい曲はあるんだけど、何気に日本盤のボートラがすごくいい。
"Warmer than Fire"という、カバー曲みたいだけど、この曲はめちゃくちゃいい曲である。
大好きなテイストである。
青臭くもなんだか微笑ましくもある歌詞にも、ここまでいけばもはや何をもいうまい。
綺麗な曲だよ。
あえて内容は書かないけど、一度チェックしてみるといいですよ。
このバンドは同級生3人組でスタートし、シャーロットが加わって4人になり、彼女が抜けてまた3人になった。
90年代からいるバンドで、色褪せる事なく自分のペースで進んできている数少ないバンドの一つである。
音楽的に大きな変化をする事はないが、少しずつ進化をしていくあたり今の時代にあっては珍しく、それゆえ唯一無二でもある。
昨年のフジでは最高動員を記録したとか。
アジカン主催のフェスにもでているので、日本のロックファンにもなじみ深い存在でもある。
例えばFoo Fighterなんかも、音楽性自体はそれほど新鮮でもないし、比較的ストレートなロックなんだけど、でも彼らの曲は聴けば彼らとすぐにわかるし、ああいうタイプのバンドはあまりいない。
不思議な存在感を放ちつつ、今なお健在の青臭いベテランバンドである。