Analogfish "Pinfu" (Official Music Video)
先日実家の母からずいぶんと長いLINEが届いた。
何事かと思ってみると、ネットで流布しているというコロナウイルス対策という。
海外のサイトを翻訳機か何かで直訳したような諸所に破綻したような文章と、いかにもそれっぽいが誰か知らない学者の名前が添えられている。
名前的に中華系の人っぽいあたりが味噌だなと思いつつ、さして読むでもなく何気ない返信だけしておく。
そのしばらく後にまたLINEがきており、みると先のものがガセだったとのこと。
普段はちゃらけている母だが、文面からはなんとなく神妙な面持ちが感じられ、おそらくニュースで見る東京という街がいかにもやばそうだと思って心配して送ってきたのだろう。
幸か不幸か私は死んだら死んだでしょうがないやと思っているタチなので、よくはないが大して気にしていない。
ともあれ、地方の郊外といった風情のあたりに住んでいる母だが、こうして見える姿はわかりやすいくらい情報弱者の地方の高齢者である。
もう若くはないのだ。
私自身がそういう話に疎いのであまり普段意識しないけど、こういう現実を目の当たりにすると急に心配になってしまうし、こうして離れて暮らしていることが本当にいいのだろうかという気持ちにもなる。
父は大病を患って以来すっかり弱くなってしまったので、仮に罹患すれば本当に命が危ない。
それでも遠くの子を思うのは親というものかもしれないが、その子であるところの私はロクでないものである。
それにしても、震災以来ではないだろうか、こんな感じの空気感。
早々にマスクは売り切れて店頭からなくなり、最近ではトイレットペーパーがなくなっていた。
それだけじゃなくて、保存の聞く食品もことごとくスーパーから姿を消しており、最近忙しくてちゃんとニュースも見ていなかった私にとっては一体何が起こったのかと店頭で戦いたものだ。
どうしてみんなトイレットペーパーを買いまくったの?
まるで戦後のような有様に、どれだけ技術が進歩しても日本人は永遠の田舎もんなのではないかと改めて思う訳だが、田舎ものってそもそもなんだろうか、などと余計なことを考えつつも、仮に日本を滅ぼそうと思ったら公平な不幸をもたらす大きな兵器よりも
、一部の個人だけだ損をするかのように見せる心理作戦さえあればどうにでもなるのではないかという気さえする。
危ないな、これは。
私のようにボケボケしている方が本当は危ないのかもしれないし、でも実は安全なのかもしれない。
世の中には真実なんてありはしないと思っているので、ある時自分の世界が急に崩れて地獄のような状況に陥るのではないかという不安が私には昔からある。
そもそも不安気質なので、その不安に少しでも鈍感になることが私の努力だった。
ちょっと行きすぎてしまった感はあるものの、そうやって平静を気取って見ていると、世の中を滅ぼすのは過激なテロリストじゃなくて、普段は温厚ながら自分勝手な一般庶民と呼ばれる人たちなんだろうなと思ってしまう。
今日も帰りがけにスーパーに寄ると、笑っちゃうくらいトイレットペーパーがない。
マスクは1週間以上前からすでにない。
米もないし、インスタント麺も品薄だ。
世のお母さんたちが休みになった子供たちの飯のために買ったのだろうと思っているが、極端にしか触れないな。
日本は平和だ、なんだかんだ言ってもいい国だと私は思っているし、日本は大好きだ。
だけど、たまに怖くなる。
なんていうか、不気味な国だとも思っている。
その正体がわからないし、他の国も似たようなものなのかもしれないけど、ちょっとしたことで極端に自分勝手が吹き出すようなところが、たまにとても怖い。
ディストピアの小説ではないけど、ありふれた現実が静かに、しかしはっきりと崩れ去る日が遠くない気がして。
このえも言われぬ不安感みたいなものはなんなんだろうか。
放出の仕方が違うだけで、私もトイレットペーパーを我先にと買い漁る人たりと、根本は変わらないのかもしれないね。
この街は平和に見え。
日々一部の個人を不幸に陥れる事件は起きているが、自分がその貧乏くじさえ引かなければ平和でいられる。
だからこそ、自分に降りかかった瞬間に個が集団に変わるんだろうな。
だからこそ、強い個である必要があるんだろうなと思ってしまう。
怖い世の中だ。