音楽放談 pt.2

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10代のアンセム足り得るか ―昆虫キッズ

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青春時代、といって綺麗な思い出を携えている人はどれくらいいるのだろうか。

映画やマンガで美しく描き出される純粋さや、いかにも綺麗な女の子の色恋沙汰なんて、世の中にはそうありはしない、というは当たり前で、もしそれが当たり前ならそんな映画や物語はきっと誰もみない。

だって、日常をわざわざ金を払ってみるというのはエンターテイメントではないからね。

そう、エンターテイメントという段階でそれが希有な例であるということを物語っているのではないだろうか。

実際あんな物語を書く方も撮る方も、多分悶々とした日々を送ったから自分の欲求とか果たされなかった願望をああして形にするんじゃないかな、なんて思う。

かく言う私も、正直あまり綺麗な記憶と言うよりはどこか鬱々とした日々だったように記憶しているが、一方で一旦距離を置いている今に至ってみると決して暗い訳でもどうしようもない日々でもなかった。

だって、バレンタインでチョコ貰ったり、友達も一応いたし、勉強もそこそこ出来たし、成績良かったし、女の子とつき合う事はなかったけど普通にしゃべっていたし。

一体俺は何をやっていたんだ!!と叫びたくなるほど後悔に駆られることはあるものの、思い返せば当時そうして外面は良かったが自分自身は鬱屈していたから、どこか他人との距離は保ち続けていた。

だからかわからないけど、高校時代の友達は極めて少ない。

一部だけ、今もって付き合いのある連中のことは大事にしないとな、なんて思う。

またある友達の結婚式で同級生の女の子と卒業以来10年以上ぶりに会ったのだけど、その子にも「良い意味で普通っぽくなったね」なんて言われた。

そこから恋にでも発展すればそれはそれでロマンスなのかもしれないが、生憎そんな気配もないのはまあ色々の事情があるわけだが、いずれにせよ自分が思っているほど世界は黒くなかった、というのが今の私の振り返りである。

私にはそんなに不幸はなくて、単に自分がそう思っていただけなのであるが、そう思う自分はいつもそこにいるからなかなか抜け出せない、というのが本質的な問題だと思う。

だから果敢に人の中に飛び込んでいく人って、皮肉じゃなくてすごいなといつも思うのである。


さて、今日書くのはそんな青春まっただ中の高校生達にお薦めした音楽である(あくまで個人的に)。

以前も一度書いたが、昆虫キッズという日本のバンドの1stアルバムだと思うけど、『My Final Fantasy』というアルバム。

私のこのアルバムの感想は、一言で言えば青春の焦燥みたいな感じだと思っている。

1曲目は女性メンバーがヴォーカルをとる”きらいだよ”という曲なのだけど、いかにもはかなげなメロディと歌声と相反する毒を持った言葉、でもそこはかとない愛もあって、そのアンビバレントな感じがすごく良いのですね。

男に振られてそれでも強がる少女の葛藤が表現されているのであろうか。

続く2曲目”ブルーブルー”はむしろ少年のどうしようもないタカぶりを無闇矢鱈な言葉で疾走していくような力強い曲。

言葉は断片的で意味不明なところもあるけど、このなんかよくわかんないけど全力疾走、みたいな感じがいい。

3曲目は個人的にすごく好きなんだけど、”まちのひかり”という曲。

この曲の情景ってなんかキラキラしていて刹那さがあってね。

切なさではなく刹那さという表記ことが敢えてあうのではないだろうか。

下品な歌詞もあるけど、それが青春って奴だろ、なんて思ってしまう訳だ。

このアルバムの曲はそんなラブソングが溢れているけど、必ず何かを失ったようなフィーリングがあって、ハッピーな曲は正直あんまりないかな、と思っている。

まあアルバムタイトルが『My Final Fantasy』ってつけているくらいだから、人にとって最期のファンタジーって実は10代後半くらいなのかなと思っている。

Radioheadのトラックの一節でも「10代ほど愚かな時代はない」みたいなのがあったと思うけど、そこから人生は急に現実味を帯びていくんだよね。

なんて30過ぎると思うようになる訳である。

ちなみに”27歳”という曲があるのだけど、これは今の自分がそんな昔をどこか懐かしむ風情もあるのかな、なんて印象である。

懐かしむ、というよりはその頃に戻りたいという希求もあるかもしれない。

アルバムのハイライトは”いつか誰もとも会わない日々を”という曲なのだけど、何気ない日常の描写の中に実はささやかな幸せが潜んでいる風景が浮かぶんだけど、結局その幸せはもうないのでしょうね。

最期は嗚咽のような叫ぶような謳い方なのだけど、いつか誰とも会わない日々を、いつか誰とも会えない日々を、なんていう言葉で括られるけど、そんな絶望感に打ちひしがれてしまう瞬間は結構あったな、なんて思ってしまう。

最期は言葉にならない言葉を叫び続けるバックに流れる静かな女性コーラスとの対比も良くて、ここのファンタジーの終わりがあるのかもしれないね。

ラストは”胸が痛い”という曲なのだけど、急にテンション変わってあっけらかんとして、あたかもエンドロールで流れるメタ的な視点の世界が急にくるような曲になっている。

そうしてきっと次のファンタジーを見つけるのが所謂青春というものなのかもしれないね。

「胸が痛い」なんて悲しんでみせても、どこか其れを求めているもので、それをポジティブに受け取るかネガティブに受け取るかでこのアルバムの評価は変わるかもね。


ジャケットも何か示唆的な男女の絵なのだけど、モノクロ映画のようなキザッタらしいワイン片手の男に持って、涙を流す女はきっと良いところのお嬢さんなのかもな、なんて思える。

裏ジャケは封筒から抱き合う男女がにょこっと出ている不思議な絵。

皮肉っぽい作品なのかもしれないけど、だけどその中で謳わせる世界なんかはなんとも美しいと思えるもので、もし私がこの音楽に高校生の頃に出会っていたら、どんな受け取り方をしたのかな、なんて思うよね。

考えてみると、大人になると急に出会いがないとか色々言う訳だけど、そんなファンタジーに身を浸している時間が相対的になくなっていくから、結果的にそう感じられるのかもしれないね。

ともあれ、アコースティックな曲もありつつ、でも基本はどたどたしたロックンロールで、でもメロディもあって良いアルバムです。

是非青春まっただ中と世間では言われる感受性を持った10代にこそ聴いてほしい音楽ですね。

”ブルーブルー”