音楽放談 pt.2

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待ってるぜ -アナログフィッシュ

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頭の中に不意に流れ出す音楽っていうのがあって、その時に直面する場面に応じてテーマソングのように頭の中に鳴り響くのである。
 
それは最近聞くようになった音楽もあれば、昔から好きな音楽もあるし、そもそも好きでもなんでもないのになぜか頭の中に鳴り続ける音楽もある。
 
人間の記憶というのは、基本的に自分の過ごしてきた人生の文脈に沿ってなされている場合が多い。
 
懐メロがいつまでも輝いているのは他ならぬそれを含む記憶、思い出が輝いているからである。
 
その文脈を残していくことが人生とも言え、それがない人はつまり人生がないと言える。
 
その記憶を共有できることが人間にとってはとても幸せなことで、昨今のSNSの流行もそんな心持ちを反映しているのではないかという気がする。
 
だから、反面そうしたSNSにあげることのない人にとっては、自分の人生のアーカイブがないように感じられて、不安になってしまうのかもしれないね。
 
実際はそんなものはあってもなくても何かが変わるわけではないのだけどね。
 

アナログフィッシュが好き、という話

さて、そんな私のよく頭の中で響くアーティストの一つがアナログフィッシュである。
 
音楽的な要素もさることながら、何より言葉がとても刺さって仕方ない、そんな存在である。
 
多分人生に対する態度とか、そういったところに共感してしまっているのだろう。
 
彼らは1999年結成で、2004年にメジャーデビューしている。
 
私がちょうど大学生の頃になるんだけど、聴き始めたのはつい数年前で、長く聴いているわけではないけど、今ではとても大きな存在である。
 
毎年都内でのライブはほぼ欠かさずみているが、いつでも観たいと思えるし、いつ聴いても素晴らしい音楽がそこにある。
 
彼らはギター、ベース、ドラムの3ピースなのだけど、ライブでは打ち込みも使いつつ実に凄まじいアンサンブルをかましてくる。
 
ギターは下岡さん、ベースは佐々木健太郎さん、ドラムは斉藤州一郎さんというのだけど、下岡さんと健太郎さんは共に曲を書いて歌っているという、つまりシンガーソングライターが2人いるのだけど、それぞれに色が違うからそれがとてもいいのですね。
 
行くたびに感動するし、歌だけじゃなくてちゃんと音楽的なところでもしっかり勝負してきているのが本当に素晴らしい。
 
何よりやっぱり曲がいいから、それが一番なのかもしれない。
 
そんな彼らの次の作品に思いを馳せつつ、個人的にオススメしたい曲を初期から順にピックアップ。
 
もはや代表曲と言われる曲もあるけど、それ以外のところにも焦点を当てていきたい。
 

1st アルバム『世界は幻』(2003年)

まずはインディーズの頃の曲。
 
1stアルバム『世界は幻』からはご存知”夕暮れ”。
 
今でもライブで必ずといっていいほど演奏される初期の名曲の一つである。
 
ギターやベース、歌にも全てに彼らを感じることができる。
 
下岡さんの初期作によく観られた日常を寓話的に描写した歌詞も秀逸だ。
 
真っ赤な空を見ると流れ出す。
 
 

2ndアルバム『日曜日の夜みたいだ』(2003年)

初期作の中で好きな曲はこの曲。
 
2ndアルバム『日曜日の夜みたいに』からは健太郎さん作曲の”行くのさ”。
 
わかりやすいロックンロールという感じの曲で、彼の価値観とか性格みたいなものがよくあわられている曲だと思う。
 
下岡さんの曲はどちらかというとちょっと俯瞰的に眺めるような視点で描かれているのだけど、健太郎さんは常に自分から出発している印象がある。
 
それに、基本的に物事について考え込んでしまうところがあるように思っていて、だからこそそれを振り払うように疾走感のある曲を書くことが多くて、その熱量が出ているのである。
 
沈んだ時に頭の中に流れるんですね。
 

すでに鉄板、メジャーデビューの3rd『KISS』(2005年)

メジャーデビュー盤からはこちら。
 
3rdアルバム『KISS』からはこちらもライブ定番の”Town”。
 
田舎から都会に出てきた人には結構共感できる人っているんじゃないかなと思う。
 
下岡さんの大きなテーマというか、通底している価値観に都会の孤独感みたいなものがあると思うのだけど、寂しくてなんとなく外に出てみるとたくさん人がいて、みんな楽しそうなんだけど、その輪の中に自分はいなくて、孤独感で風邪をひきそうになる、なんていう話なんだけど、そんな時につい故郷を思い浮かべてしまう人は少なくないだろう。
 
人がいないから孤独なんじゃなくて、人がいるからこそ孤独は際立つのである。
 
この曲は聴いていると泣きそうになってくる。
 

メジャー感満載の充実作5th アルバム『Rock Is Hermony』(2006年)

続いては彼らのキャリア通して一番ポップな曲が多いアルバム『Rock Is Hermony』から、やっぱり代表曲。
 
ライブでも合唱必死の”アンセム”。
 
こちらは佐々木さん作曲のロックンロールな曲である。
 
彼のそもそも後ろ向きな性格だからこそ頑張って前を向いてやる、みたいな歌詞ってのはとても普遍性があると思うし、ストレートで飾りっ気とかそういうのがないから刺さるんだよね。
 
しんどいのはわかっているけど、それでも希望を持ちたいと思う願いみたいな。
 
健太郎さんのライブ中の「エベバディー!!!」ていうのがいつも素敵だ。
 
今も変わらないトーンで彼は叫んでいる。
 
余談だけど、この曲はオードリーの若林が大好きらしく、それをラジオか何かでいったことをきっかけにオードリーの出囃子を彼らが作って提供しているのである。
 
それが”Showがはじまるよ”という曲なんだけど、Youtubeになかった。
 
残念。
 
 

苦難の6th『Fish My Life』(2008年)

次のアルバムでは、一時的にドラムの斉藤さんが体調不良で離脱してしまい、様々なサポートを入れて作られたアルバムの曲なんだけど、その中でもこの曲を。
 
『Fish My Life』からは"Paradox"という曲なんだけど、このあたりの曲から特に彼の社会的な視点というものが色濃く出始めている印象がある。
 
基本的な描写は虚無的な感じもあるし、なんか腑に落ちないな、でも世界は回っているし、みたいな感じが出ている。
 
下岡さんって喋るのを聴いてもライブでの佇まいを見ても、とても飄々としている印象があるのだけど、多分最終的にはそれらを真正面から受け止めて、戦う強さのある人なんだろうなと思う。
 
おかしいものややっぱりおかしいよ、と真正面からいうという感じかな。
 
その辺のキャラクタというか、価値観は健太郎さんとはまただいぶ違うと思うんだけど、その2人がずっと一緒にやっているのがこのバンドの面白いところである。
 
ちなみに2人は同じ村の幼馴染だ。
 
 

今につながる転換作、7thアルバム『Life Goes On』(2010年)

この次のアルバムからは斉藤さんが復帰して、音楽的にも大きく舵を切り始めるのだけど、その代表的な曲といえそうなのが”平行”という曲なんだけど、動画がなくなっていた。
 
ミニマルなリズム隊の上で上物がたまになるという曲の構成とか、ちょっと皮肉っぽい感じの歌詞もこれからの3部作につながる曲である。
 
あったかいようでどこか冷めていて、展開するごとにフラストレーションが溜まって行くような展開である。
 
個人的にこのアルバムの曲の温度感てすごく好きで、他にも”曖昧なハートビート”とかってたまらないのですよ。
 
一方で”ハッピーエンド”という曲は、嫁ぐ娘に向けて歌ったような曲で、とても愛に溢れたいい曲なのである。
 
こうしたところからも見て取れるように、この頃からこの2人の作風に大きな違いが出てきて、それがアルバムで見事なコントラストを描くようになる。
 
ちなみに、この曲の収録されているアルバムの表題曲"Life Goes On"は、今しんどくてくじけそうな人にはぜひ聴いてほしいとても素晴らしい曲である。
 
なので載せておこう。
 
人としてのあったかさとか優しさって、背中を押すことじゃなくてそっと寄り添うような時に感じるものだと思う。

覚醒の8thアルバム『荒野/On The Wildside』(2011年)

そして彼らの作風がぐっと上の次元に行ったのがこれからの3部作。
 
その1作目となる『荒野/On The Wild Side』からはやっぱりこの曲を。
 
アグレッシブなドラムイントロから始まって、かなり社会的な要素の強いメッセージを投げかける歌詞がとても力強い”Phase”。
 
「失う用意はある?それとも放っておく勇気はある?」というラインは今の時代には最強のパンチラインだと思う。
 
この頃の曲は、人によっては受け付けない人もいるかもしれない。
 
日本ではこういう歌は得てして受け入れられにくいからね。
 
だけど、この曲が発表された少し後くらいに色々日本でも政治的な問題や社会的な問題が取り沙汰されるようになった。
 
歌詞にテロリストという言葉も出てくるから、それがちょっと誤解を招くこともあるけど、彼らはあくまで真摯である。
 
こちらも人気曲だが、"Hybrid"も今という時代にはとても示唆的な歌詞だと思う。
アンビバレントな感覚の間で、最後には「それでも君を愛しているよ」で終わるあたりが彼らの価値観の根本ではないだろうか。

金字塔、9thアルバム『Newclear』(2013年)

次のアルバム『Newclear』は件の震災後にリリースされたのだけど、もう少しテーマや描いてる世界は身近になっている。
 
だからとても重い感じもするし、なんとも言えない喪失感が漂っている。
 
その中にあって、これぞラブソングと言える珠玉の名曲がこちら。
 
”抱きしめて”という曲で、とてもシンプルなアレンジで耳馴染みするメロディと、どこかとぼけた中に温もりの溢れる歌詞が素晴らしい。
 
人が人生に求めることなんて実はそんなに多くなくて、安心できる場所がそこにあることが一番なんじゃないか、なんて思わせる曲である。
 
その安心感の正体は、危険のない場所や心配事が一つもない場所でもなくて、ただ寄り添う人がいてくれたり、自分を受け入れてくれる人がいてくれることなんじゃないかな、なんていう曲であると思う。
 
それは別に恋人には限らないし、友人かもしれないし親兄弟かもしれない。
 
あるいは赤の他人かもしれないけど、そんなささやかなつながりを大事にすることが大事ななないかと思わされるのではないだろうか。
 
私がアナログフィッシュを聞くきっかけになった曲でもあるし、アルバム自体も一番好きなアルバムである。
 

日常に寄り添う10thアルバム『最近のぼくら』(2014年)

そして3部作最後のアルバム『最近のぼくら』は前作以上にもっと個人的な視点にフォーカスしている印象。
 
とても静かで、派手さのない曲が多いけど、だからこそ凹んでいる時にやたらしみる曲が多い。
 
中でもこちら。
 
"Wednesday"という曲。
 
圧倒的な喪失感と、それと必死に戦うような姿を描いているのだけど、淡々とした曲が却ってその切なさを煽って仕方ない。
 
「この街の中で僕を知る人は君以外にはいないのに・・・」というラインが圧倒的な孤独感を表しているし、もうその君はここにはいないから、だからどうしようもなく寂しさが溢れている。
 
”Town”とも通じる、都会の孤独感というのがよく表現されている。

名刺代わりの11thアルバム『Almost A Rainbow』(2015年)

3部作を経てそれほど魔をおかずにリリースされたのが『Almost A Rainbow』、このアルバムからはやはりこの曲。
 
下岡さん的ラブソングの真骨頂と言える”No Rain No Rainbow”。
 
多分理解できない人には絶対に理解できないと思うけど、こちらもとても温もりのあるラブソングだと思う。
 
日常の何気ない描写から愛の本質を描いているような歌詞がとても素晴らしいし、アップテンポで明るい曲調もとても素晴らしい。
 
「愛はコスパじゃない」ということを書いたレビューがあったけど、現代的な価値観に対するアンチテーゼとしても素晴らしいと思う。
 
ライブで聴くと泣きそうになる。
 
と、この3部作から下岡さん作の曲がやはり目立つというか、耳を引くのだけど、健太郎さんの曲も素晴らしく、下岡さんには書けないであろうみずみずしい世界感は健太郎さんならではである。
 
 
"Baby Soda Pop"のまばゆさですよ。
 
田舎町の青春映画のようだ。
 
このアルバムは全編にわたって明るい曲調の曲も多く、彼ら自身が名刺がわりになる作品を、と言って作られた作品なので、他にも彼ららしさが全編にわたって展開されているので、初フィッシュな方にもおすすめである。

 back-to-motif.hatenablog.com

 音楽的な広がり、12thアルバム『Still Life』(2018年)

その後のアナログフィッシュは音楽的な幅も広がり、年齢も手伝ってかしっとりした曲を中心にした『Still Life』をリリース。
 
いわゆるブラックミュージック的なテイストをふんだんに盛り込んだ作品で、トータル30分ちょっとというキャリア史上でも短尺のアルバムだ。
音的にもアナログな温もりのある音像、"Sophisticated Love"という曲だが、こうしたラブソングの主人公のあり方が私は大好きだ。
 
一方で相手の女性の大人な感じというか、憧れる女性像がある。
 
このアルバムはとにかく構成が秀逸で、30分強という短さもあるけど、1曲目はコーラスのゴスペルみたいな"Copy & Paste"に始まり、こうした静かで穏やかな曲が続くんだけど、ラスト2曲のギアチェンジがすごい。
 
アルバムラストは呂布カルマとのコラボ曲"Pinfu"で締め括られる。
目を覚ませ!とでもいうような曲だ。
 
アナログフィッシュの音楽で面白いなと思うことの一つが、その時の社会情勢にバシッとハマる瞬間がしばしば起こることだ。
 
しかもそれが極限定的な瞬間ではなくて、多分今後も幾たび訪れる「今」においてもハマる瞬間がきっとあるんだろうと思える。
 
このアルバムに限る話ではなくて、どのアルバムでもそう。
 
これが普遍性という意味ではないだろうか。

 

back-to-motif.hatenablog.com

 

課外活動、健太郎さんソロ『佐々木健太郎』(2014年)、elephant『day dream』

バンド名義以外でも、数は少ないがいくつか課外活動も。
 
まずは健太郎さんのソロアルバムも非常に素晴らしい。
飾りっ気のないストレートな表現になっており、健太郎さんの人柄がよく出ている。
 
派手さはないけど、ふとした時に聴きたくなるような作品で、アナログフィッシュほどとんがってもいないので、広くお勧めしたい作品だ。
 
また、下岡さんとドラムの斎藤さんが、髭のメンバーと組んだのがelephantというバンドで、1枚だけアルバムもリリースしている。
歌詞の鋭さは下岡さん節前回だが、楽曲はアナログフィシュとは異なる色になっており、かっこいい。
 
肩の力もいい意味で抜けていて、アルバム1枚だけしか作っていないのが惜しいくらいだ。
 

アーティストであるということ

と、彼らのアルバムからちょっとずつピックアップして見たけど、やっぱり代表的な曲が多くなりましたね。
 
だけど、本当にいろんな曲があるので、もし1曲でもいいなと思える曲があったら、アルバムとしても聞いて見てほしいアーティストである。
 
最後に、もう何度も張っているけど、やっぱり彼らの曲の中で珠玉だと感じるこの曲で締め。
 
世界平和のヒントは、同じであることを望むことじゃなくて、違いを許容するところからはじまると思うし、人間関係も自分とお案じであることを求めるんじゃなくて、違うということを受け入れるところから始まると思うのである。
 
だって、みんな違うんだから。
 
次のアルバムも、期待して待っていよう。
 
"City Of Symphony"