音楽放談 pt.2

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この感じはどの感じ? ―TV On The Radio

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音楽を聞くにあたって重要になる事は人によって違うだろう。

歌詞が大事、曲が大事、アレンジが大事、ヴォーカルの声が大事、ヴォーカルの顔が大事、などなど、どこに力点を置くのかは好みの問題である。

私などは、色々重視するけど、割とフィーリングなどと言ういい加減なものをしばしば重要視する。

フィーリング、言葉で説明しろといわれてもフィーリング(感覚)であるからして、それは非常に難しい。

しかし、わかりやすく言えば、楽しいときに楽しい曲が、悲しいときはダウナーな曲がしばしば好まれるのと同じような事である。

とはいえ、楽しい感じが好き、とか、そういう話ではない。

むしろ重要なのは、えも言われぬ感じである。

別に悲しい訳じゃないけど、殊更面白いわけでもない。

何となく物寂しいような、でもどこか気分が良いような、そういう曖昧な感覚に襲われる事ってないだろうか。

感情的には極ニュートラルなんだけど、感覚はどこかに振れている。

決して無ではないんだよ。

だけど何とも表現のしがたいときが確かにある。


音楽というのは、アーティストのなにかしらの感情も含めた心的状態を振動と言う物理的な感覚に置き換えたものであると言える。

その振動の羅列が聴くものに様々な感覚や感情を呼び起こす訳である。

表現する為には、何かしら強い感情なり何なりがあった方がやりやすいのは確かで、世の流行歌がしばしば似たような傾向(最近でいえば女子中高生に人気なJ-POP系などで失恋などがモチーフになっているものが多いとか)が見受けられるのも、ある意味ではそういう元となる感情の出所が同じであると言うことがあるだろう。

だからこそ大衆受けするともいえるのかもしれないけど。

逆に、曖昧な感覚を表現するというのは実に難しい。

言葉にできないんだけど、なんていう経験は誰しもしているだろうから感覚的には理解できるだろう。

その言葉にできなさは、別に何もない訳ではないという事を物語っている。

うれしいやら、悲しいやら、ムカつくやら喜ばしいやら、そんな一見相反する感情が同時に存在する事は、思いのほかザラである。

ザラではあるが、しかし表現することはやはり難しいのである。

そんな微妙な感覚を何となく表現しているな、と時に感じる事があり、そんな音楽に出会うと思いがけずハマってしまい、自分でも何が良くて聞いているのかはわからないが、それでもやけに好き、と感じるものがある訳である。


以前にも「よくわからないけど好き」と書いた事があるが、ふとそんな事を聞きながら思ったのはTV On The Radioである。

今日は2ndを聞いていたのであるが、これがよかった。

夕方、ちょっとした用事で出掛けたその帰り道に聞きながら、夕暮れの中でふとそう思ったのである。

ちょっと週末は色々ありまして、思うところもありまして、そんな訳であれこれ考えつつ、至極複雑なものを内面に抱きながら歩いていた。

このアルバムは年間ベストにも世界中で選出された作品ではあるが、個人的な感想としては一番地味な作品だと思っている。

1stの方がもっとわかりやすいフィーリングだと思うのですね。

3rdは文句なくポップだし、明るい感じが全編にみなぎっている。

パワフルで、名盤だと思うから、初めての人には是非このアルバムをお薦めしたい。

ちょっと変わった奴あよければ1stも、とは思うけど、2ndに関しては"Wolf Like Me"という曲以外は特におすすめしようとは思わない(この曲はキャリア随一のポップでイカした曲だと思う)。

興味が湧いたら最後に手を出せば良いと思う。


そんな感想のアルバムであるが、そのえもいわれなさが何とも良いのである。

心地よいのである。

基本的に夕暮れの風情が一番似合うとは思うけど、トーンや曲展開や、ヴォーカルの声や曲自体も、なんか今日の感じにすごくマッチしていて、いいなぁ、と思いながら聞いていた。

こういう感覚を一度味わうと、もうそこからは逃れられない。

ふとしたときに聞きたくなってしまう。

第一、他にこのフィーリングを埋められるようなアルバムというのがないのであれば、これを聞くしかないと言う訳である。

そういう意味では、既に私の中では唯一無二の存在感をこのアルバムは獲得していると言える。

もっとも、それでもやはり他人に好んで推薦しようとは思わないし、ベストアルバムに選出されたからと言って商業的な成功を望める作品でもないと思うけど。

でも、なんかなんともいえない感覚をわかってほしいな、という人であれば、試しに聞いてみるのは良いかもしれない。

虚脱感を伴うけど、やけに気持ちいいのは確かである。

こういう音楽はわかりにくいけど、でも良い音楽なんだと思うし、こういう音楽を作れる人は、アーティスト、特にミュージシャンとしての資質は極めて高いのではないか、などと思ったりもする。