Nirvanaはデイブくらいしからいないしスマパンはビリー太ったし、Soundgardenはクリスが死んでしまったし、90年代アメリカを彩った数多のバンドの中で、引き続きバンドをやっている人もたくさんいるけど、今は映画スコアもこなすアカデミーアーティストが、かつての暗黒王子である。
彼には健全な野心があったし、売れる曲と実験性のバランスが絶妙だったのだろう。
しっかり結婚もして、子供はMUSEのマシューの子供と同じ学校だそうだ。
人生はどう転ぶかわからす。
一時は辞めるとも言われていたが、バンドとしての活動も変わらずで、今年ソニマニでの来日も決まっている。
一線級かと言われればもうベテラン枠ではあるけど、ファンとしては嬉しい限りだ。
6月に3部作の完結版を出すことも発表されて、先行シングルはこれまたNINのキャリアにあっては新しい要素に取り組んでいるようで、頼もしい限りだ。
好きなアーティストが元気なことは、やっぱりファンとしては嬉しい限りだ。
彼の代表曲についてはすでに過去に書いているので、今回のテーマは個人的アルバムランキングである。
根本の音楽性はデビュー当時から変わったとは思わないが、それでも時期によって異なる作品を作っているし、個人的な思い出や好みも合わされば、人によって色々意見も異なるだろう。
ソニマニに先だって、少しでもNINで騒ぎたいだけなんだけどね。
リミックスアルバム、ライブアルバムを除くEP含む12枚でやってみよう。
さて、では下から順に行こうか。
まず11位はこちら。
無料配布された『The Slip』(2008年)。
この直後に機材も売り払って休止状態に入るので、個人的には完全なファンサービスアルバムだと思っている。
曲は全般的にポップで聴きやすく、収録時間も40分くらいと彼らのキャリアにあっては短いため、初心者には進めやすい反面、旧来のファンとしてはちょっと物足りないのではないだろうか。
"Descipline"はこれぞというトレントのポップフォーマットの曲だが、やっぱり作り込みは弱かったと思う。
続いて10位はこちら。
デスクトップで製作されたという『Year Zero』(2007年)。
全曲アグレッシブで、9.11以降の彼らなりの社会に対する働きかけで、これ以降で表現が大きく変わった。
それゆえに賛否両方があって、ライトリスナーには好意的に受け止められたが、コアなファンにはなんか違う、と言ってあんまり評価が高くなった気がする。
私も最初に聞いた時には単純にかっこいいと感じたけど、聞き重ねるうちに物足りなさを感じてしまった。
とはいえ、NINのファンは基本的にひねくれていて暗い奴が多い。
だから、普段あまり彼らを聞かない人には、一番進めやすいアルバムでもある。
続いて9位はこちら。
インストアルバム『Ghost』(2008年)。
「ずっとこういうアルバムを作りたかった」とは当時のトレントの談だが、私は実はちゃんと聞かなかった。
しかし、最近改めて聞いていて、悪くないなと思っている。
Horrorsの昨年リリースされたアルバムの参照点にもなったというアルバムである。
アンビエント系がすきならぜひ聞いてみてもいいだろう。
続いて8位はこちら。
最近の作品、『Not The Actual Events』(2017年)。
EP3部作の第1作目で、音楽的にはかなりアグレッシブで、らしさもありつつちょっと新しい要素も入れつつで、しかしトレントのベースにはハードロックがあるんだろうな、ということを感じさせるものであった。
ちなみに7位はその2作目。
『Add Violence』(2017年)。
1曲目はエレポッスで軽快なNINを聴けるが、ラストは延々続くようなノイズ。
ここでこう攻めてくるか!と驚いたものだ。
何よりトレントが楽しんでいるようで、それが一番嬉しかったね。
そして第6位。
『With Teeth』(2005年)。
このアルバムのリリースで来日した際に初めてライブを見る機会にも恵まれた。
彼のキャリアの中では転換期となった作品である。
当時DFAを中心としたディスコパンクという動きがある中で、その影響も反映されたアルバムは、その前のアルバムからの激変ぶりに結構な面を食らったファンも多かった。
実際シングルとなった"The Hand That Feeds"の歌詞が明らかに外向きなので、私も驚いたものだ。
ちなみに、"Only"のMVは今ではすっかり御用達、David Fincherである。
続いて第5位。
彼らを一躍スターダムに押し上げた『Broken』(1992年)。
もっともインダストリアルっぽい作品だし、ハードロック的な感じもあって、この時グラミーも受賞している。
ちなみにこのアルバム収録のMVは何かと物議をかもした。
そして第4位。
アカデミー賞受賞後の復活作『Hesitation Marks』(2013年)。
電子音と生楽器という黄金フォーマットを獲得してからのアルバムだが、そこからもまた距離をおいて、打ち込み色の強いアルバムになった。
活動再始動の報とともにこのアルバムのリリースは、マジで嬉しかったな。
リリース前、再始動後初のライブはフジロックで、私のフジ初参加のきっかけにもなりました。
ファンからはやっぱり賛否あったらしいが、変わらず挑戦的でしっかりとクオリティを高いところで示しつつ、基本的なところは彼ららしくて、ファンとしてはやっぱり嬉しかった。
ちなみに先行シングルのPVはDavid Lynchだ。
そして第3位。
世間的には稀代の名盤と言われる『The Downward Spiral』(1994年)。
アルバムのテーマは自殺、と言われている通り、実際めちゃくちゃくらい鬱なアルバムだ。
しかし、反面最後まで聞くとちゃんとすいは残されていて、決して死にはしないのである。
すでにこの時からトレントらしさというのはあったのかもしれないね。
いまだにライブでの定番曲も満載だし、稀代のバラード”Hurt”はジョニー・キャッシュもカバーしたほどだ。
ロック史的には、インダストリアルの一つの完成形と言われるアルバムだが、その枠組みを完全に超えているのがトレントの才能だ。
しかし、やっぱり初めましての人にはオススメしない。
いよいよ第2位。
記念すべきデビューアルバム『Pretty Hate Machine』(1989年)。
画像はリマスター盤のものだが。
20代半ばまで当時Ministryのアルからは「ただのポップアルバムだ」なんて批判的に言われていたし、発売当初は全然売れなかった。
音楽的にも、打ち込みオンリーでどちらかといえばエレポップ的な色の強い楽曲になっている。
しかし、メロディは健在だし、いまだにライブでも演奏される曲多数。
単純に一人でやっていたので、打ち込みが強いだけで、アレンジが変われば全く姿を変えるような楽曲は、すでに高いレベルの曲だ。
何よりアルバム冒頭を飾る一番の代表曲"Head Like A Hole"の一節「I Rather Than Die, Than Give You Control」というのは、今に至るのトレントの根本の哲学だろう。
来れなくてNine Inch Nailsは語れない1枚だ。
あまりロックに親しみのない人にはこのアルバムからの方が、入りやすいと思う。
個人的にも大好きな曲で、こういうところの共感が私が彼らのファンでいる理由だろう。
さあ、いよいよ第1位だ。
このアルバムは私が初めて聞いたアルバムでもあり、一時休止前のアルバムでもあり、時代的な背景も含めてある意味節目的なアルバムかもしれない。
そう、4枚目のアルバム、2枚組の大作『The Fragile』(1999年)だ!だ!だ!
当時高校生だった私が彼らに出会ったきっかけである。
『The Downward Spiral』によってインダストリアルの代名詞になったトレント、そのアルバムのリリースの前年にはあのカートの自殺?という衝撃的な事件もあったため、その絶望感にも呼応した格好にあったアルバムにより一躍時代の中心に押し出されたわけだが、その期待感溢れるタイミングでリリースされたこのアルバムは、ビルボードで1位を獲得、しかし翌週から急落してしまうという、非常に極端な反応を得たのであった。
世間的には期待はずれと受け取られたわけだが、このアルバムが駄作かといえばとんでもない。
私は彼の最高傑作だと今でも思っているし、実際今に至ればその声は少なくない。
完全にインダストリアルという枠組みを超えて、ヒップホップや非ロック的な要素もふんだんに盛り込んでおり、時代的にも実は先取りしていたのである。
後から評価されたという理由もうなずけるだろう。
アルバムの曲を個々に見ても、インストあり、インダストリアルあり、アンビエントあり、ヒップホップあり、ロックありと実にさまざま。
音の処理も凝っていて、聞くたびに発見満載だ。
と、言いつつもやっぱりはじめましての人にはオススメし難いんだけど、コアな音楽ファンになら自信を持ってお勧めできる。
私はまだ洋楽すらまともに聴いていない当時だったが、正直このアルバムはよくわからなかった。
事前に見ていた彼らの評は激しいとか鬼才とかそんな感じだったので、このアルバムには面食らったのだ。
どこが?と。
しかし、なんとなく聴き続けて、歌詞カードなんかも読むうちにガチッとハマる瞬間があったのだ。
それからもう10年以上過ぎたが、いまだに私のフェイバリットだ。
"Into The Void"
と、極個人的なランキングを作ってみました。
考えてみると結構難しいし、甲乙つけ難い、それぞれにいいところがあるし、などと思ってしまうのはいたしかないというものだ。
とはいえ、たまにこういう視点で自分の好きなアーティストを振り返ってみるのも面白いですね。
少しでもNINに興味を持ってもらえれば、これ幸いである。