
最近は日本のバンドもよくきいている。
しかも割と最近めの奴も。
その中でもよく聞いているのがアナログフィッシュのアルバム『Newclear』。
今年出たものであるし、バンド自体先日の対バンイベントで初めましてだったのだが、今はかなり気に入っている。
元々アルバムを買った同期は”抱きしめて”という曲が気に入ったからである。
その他聴いていていい感じの曲が多かったので、とりあえずともって買ったのだが、大正解でしたね。
アルバムのテーマ的には3.11以降。
それこそ絆という言葉が世間でもてはやされたように、身近に起こったどうしようもない大きな出来事に対してからの周りに対する在り方なんかを謳っている曲が多い気がする。
他のアルバムをまだ聴いていないので、この人たちの作る音楽自体がそういう性質のものなのかもしれないけど、割と都会的な情景が多く、その中で感じる孤独感やおきざられ感を謳ったものが多い。
"My Way""Gold Rush"とかもわかりやすくそうだし。
一方”Super Structure”なんかはある種の陰謀的な世界というか、ややSFチックな妄想のような曲だけど、たとえどんな力が働いていたとしても、つまるところ自分が楽しめばいいじゃん、ということなのかなと思う。
ラストの曲の”City of Symphony”なんかは非常に正直でいい歌詞だと思う。
やけのはらとの共作だけど、いくらでも世に垂れ流される綺麗事とそれを裏付けるある種の願望。
しかしそんなものは本質的に理解不可能じゃん、だけど理解できないことってそんなに問題かな?みたいな感じだと思っている。
個人的にも、人の心なんてどんなに深く付き合ってもつまるところわからない。
だからそこに想いを巡らせるしかできないわけだけど、世の多くの人はその理解を求める。
そりゃ無理だよって話で、かくいうそいつも人のことなんてわかってなくて、わかったふりだけしている。
だったらいっそわからないと開き直り、それでもわかろうとする努力さえしていればそれでいいじゃないかと思うよ。
そして何より”抱きしめて”。
この曲について、作った下岡さんがウェブ雑誌かなんかのインタビューで語っているのだが、その内容も含めて非常に共感できる内容でよかった。
歌としては、極素朴なラブソングである。
危険があるから、事件があるから、そんなことの起こらないどこか遠くへ引っ越そうという男に対して、彼女は言う。
そんなところがどこにあるの?そんなことはいいから、抱きしめて、ってね。
この歌の中には愛しているという言葉は出てこない。
だけど、こんなに温かい、ある種本質的な歌はなかなかないと思う。
愛しているという言葉を人はすぐに求める。
だからJ-POPチャートの上位にはその言葉をちりばめた曲にあふれている。
だけど、そこにある種のむなしさもあることを理解しているから、みんなどこか空寒い思いをしているのではないだろうか。
言葉や情報があふれた現代にあって、それでもなお孤独を感じるのはそういう背景じゃないかと思うけどね。
それよりも最近、よりリアルなつながりを求めるようになったのはやっぱりただ人のぬくもりを欲しているからではないかと思うけど。
結局この世界は、生きている限りは、どこにいても、何をしていても、危険もあるし不安もある。
そんな世界で生きていこうと思ったときに何より助けになるのはそんな素朴なことなんじゃないかと思う。
実際、彼自身この歌詞はそうした世の中に対しての一つの問題提起もあり、また別な方法での愛の表現都の事らしい。
そして何よりびっくりするのが、歌詞の内容としては明らかに震災後の世界と言う感じなのだけど、書いたのはそれ以前で、だから一部は震災を配慮して書きなおしているらしいのだ。
この人は時代に対する嗅覚が優れているのだろうね。
だから、そういう空気を感じて作った曲なわけで、震災によって結果的に多くの人が目に見えて意識するようになっただけなのだろう。
そういうある種の文学のチカラみたいなものにもちょっと感動する。
詩人としての才能というかな。
いずれにせよ、言葉のぬくもりや細かなニュアンスなんかも日本語の方がやっぱり理解できる。
そして私が一時期日本語の歌をあまり聴かなかったのも、いまでもJ-POPの大半が下らないと思えるのも、詰まるつころこの言葉に対する感覚何だと思う。
大字に吐き出された言葉はおのずと力を持ってくる。
美辞麗句を並べただけなら、それはどこまでいっても綺麗事でしかない。
こういうのが本当の歌ってものだと思う。
もっといろんな人にも聴いてほしい歌ですよ。
”抱きしめて”
”“City of Symphony