音楽放談 pt.2

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マイペースが故に ―Moools

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最近また日本のインディ系バンドをよく聴いている。

以前は70年代くらいのバンドを中心に聴いていた時期があったが、今は2000年以降のものである。

しかもあまり雑誌には出てこない、しかし業界人中心に評価の高いバンドが多い。

それこそ54-71とかもそうだろうし、Plasticzoomsとかもそうかな。

で、最近聴くようになったのがMoolsというバンド。

このバンドは実は数年前に一度ライブを見た事があった。

インディ界隈ではそこそこ名の知れたバンドをあつめたイベントだったのだけど、いかんせん強烈にコアな奴らばかりで、しかも会場が渋谷の0グループの複数会場。

史上稀に見る人の少ないイベントで、まあそれはそれで面白かったけどね。

私はNingen OKとNew Houseが目的で行ったのだけど、その合間にいくつか見たバンドの一つであった。

正直其の時にはちゃんと聴いていたなかったし、名前も知らなかったから見るともなく見ていた感じだったのだけど、やけに印象には残っていた。

理由はMCなんだけど、ライブ中にメンバーの一人がバーカウンターで酒を買いにいくという緩さ、それをヴォーカルが謎の当てレコをして遊ぶという場面があり、それが面白かったんだけどね。

音楽ではなくそんな事が記憶になるとは。


その後大分長い間思い出す事もなかったのだけど、彼等はアナログフィッシュとも永らく交流があるらしく、そこで名前を目にして思い出したのですね。

ちなみにバンド名は、当初ムールスと読むのかと思っていたのだけど、モールスなんだと其の時知った。

その後何の気なしに調べていると、このヴォーカルが実はなかなか面白い人で、Twitterなんかもネタっぽいつぶやきもあり、こいつは愉快な人だと思って改めて興味を持ったのですね。

ちなみに彼は一部では神と呼ばれているらしく、そのキャラの濃さは有名らしい。

神奈川方面のニュース番組で、インタビューを受けている映像がキャプチャされていたのだけど、其のインタビューは別にミュージシャンとしてではなく、所謂一般の方に聴きました、という感じで「40代男性」みたいな形で出ている。

「1回戦敗退で・・」とか言っていて、意味が分からない。

どうやら息子さんが将棋をやっているらしく、その将棋大会を観戦に来た保護者として答えていたらしい。

知らない人からすれば何の事はない映像なのだけど、知っている人からするとそのさりげなさがやけに面白い。

ちなみに彼のTwitterの発言も面白いので、よかったらチェックしてみてほしい。

そんなキャラクタばかり立った印象になってしまうが、音楽的な評価は非常に高く、それこそModestMouseらアメリカのインディ勢とも交流があったり、彼等を慕うバンドも多い。

先のアナログフィッシュや、Orge You Assholeなど、蒼々たるメンツが彼等をリスペクトしている。

にも関わらずこの緩さ、マイペースさというのはある意味で非常にカッコいいと思う。


さて、すっかり前置きが長くなってしまったけど、音楽だってもちろん素晴らしい。

なんて生で見てスルーした奴が言うのもなんだけど、彼等の音楽は決してキャッチーではないのだ。

私が買ったのは現時点での新譜の『劈開』と言う奴。

バンド的には結構転換作らしく、旧来のファンからするとちょっと敷居が高い印象という評価らしい。

正直私も聴いてすぐにこれはいいぜ!となったかというとそうでもなかった。

音的にはインディ然としているというか、メインストリームな所謂邦楽的な楽曲ではないし、売れ線でもない。

割とミディな曲調なので、ある時ふっと入ってくる感じがするのである。

私もふとある瞬間に「ん、なんか、いいな」みたいな感じである時から一気に好きになった。

そして一度好きになると、ふとした時に聴きたくなってしまうのである。


そんな彼等の楽曲では、歌詞が非常に独特で面白い。

アルバム1曲目を飾る”単位”という曲も非常に独特な表現である。

「君は単位だね」というのが所謂コーラス部分になるのだけど、こうした印象的なフレーズが多数ある。

個人的に好きなのは2曲目の”退屈”と言う曲。

「優しい言葉の優しさや、汚い言葉の汚さが、その言葉よりもよく見えて、言葉が見えなくなるのなら、退屈」というラインがすごく印象的なのである。

他にも”一秒二秒”と言う曲の、行間からにじむ風情が非常に素晴らしい。

「一秒、二秒泣いただけ」というのが何を表現しているのかという話しである。

実際彼等の楽曲で大きな評価を締めるのは、先の神と呼ばれる男、ヴォーカルの酒井さんなのだけど、非常に詩的な詞を書く人である。

音楽的なイニシアチブも彼が握っているようで、メンバーは彼の才能を非常に高く評価しており、一方の酒井さんも自分の出したい音を出す為には自分だけでは限界がある事を理解しているので、そこでバンドとしてうまいバランスが出ているのだろう。

また良い意味で野心的ではないからマイペースな活動をしており、表立って派手に売れる事はないだろうけど、なんかもっと評価されてしかるべきものを持っていると思うのである。


こういうじっくり聴くタイプの音楽は、今の世の中ではなかなか受け入れられにくい(わかりにくいから)ところがあるけど、たまにはこういう音楽にも耳を傾けてほしいですね。

特に今日みたいな穏やかに晴れた日に、散歩でもしながら聴いていると、ふっとしみ込んでくる瞬間があるのである。

ちなみにメンバーはこんな感じ。

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左端の男が神である。

それにしても、そろいも揃ってヴィジュアル的には恵まれていないバンドである。

唯一緑のギターを持った人はしゅっとしているが。

余計な色気がないから、余計に純粋に良い音楽作りに向かうのかもしれない。

見た目に惑わされずに、是非聴いてみてくれ。

”単位”