
先日ある記事がYahooのトップに上がっていた。
このブログでも幾度も触れている音楽の価値、みたいな話である。
ある調査についてだけど、要旨としては音楽に無関心な層が拡大している、というもの。
ひいて音楽業界の不振が言われる原因としては、CDが売れないことではなくそもそも興味がないからだということが問題だ、的な問題提起っぽい感じで終わっている。
残念なのはそこの背景については一切書かれていないことであった。
まあ、そこまでは調べてないよって話なのかもしれない。
で、そういった記事に対して出てくるおきまりのコメントは「いい音楽がない」「作る側がもっと努力すべき」「AKBとExileばっかでチャートがつまらない」という紋切り型のそれっぽいコメントである。
一番腹がたつのは「価値のあるものなら金を出す」というやつ。
この件についてはストリーム配信サービスが出たときにも似たようなコメントが出てきて、毎回腹がたつんだけど、そもそもそういう連中こそが音楽に興味がない層なんだと思う。
音楽好きです、という人はそんなことはないことはわかっていると思うし、そうしてこうだったら金を出す、とか言っているやつはどっちにしろ出さない。
むしろ聞いている連中なら「たまにはちゃんとお金出して買おう」というハズだ。
だいたいそういう奴らの発想自体が音楽を商品としてしか見ないしていないから、そういう連中こそがやり玉に挙げるAKBとかExileとかみたいな即効性はあるが味の薄い音楽が増えていくのだ。
いい音楽って具体的になんだよ、って聞いてやりたいよね。
そんな一連のを見て思うのは、そもそも大衆娯楽としての音楽がもはや大衆ではなくなったのだろうという話。
ポピュラーミュージック、なんて呼ばれるものであってももはやポピュラーではないのである。
音楽が好きな人からしたら、何気ない日常にも音楽がかかっているだけで楽しくなったり癒されたり、慰めれたり単純に楽しかったりと、メリット満載やん、と思うわけだが、別にそうは思わないという人が増えてもおかしくない。
20代以下で無関心層が以前よりも増えた、ということを憂いるわけだが、彼らの場合はすでに遊びの価値観が違って、どちらかといえばリアルな体験の方をより娯楽と捉えるから、そこで音楽がかかっていることはあってもあくまで装飾の一つでしかなく、音楽そのものに価値を見出すことはないのだろうね。
ちなみにリアルな体験を求めるというのは20代以降でも顕著らしい。
音楽での売り上げ自体は下がっているのかもしれないが、ライブの動員などは増えてるとか。
ライブイベントも増えたし、一段落したフェスブームではあるが、それでも毎年新しいフェスは増えてるしね。
そこでも楽しみ方は音楽を聴くということそのものが目的というよりは、そこでの仲間内とのわちゃわtやしたいとか、そんな印象である。
別にそれはそれでフェスとかイベントの楽しみ方だからいいんだろうけど、完全に私のような人間とは音楽の接し方が違うと思うわけである。
そもそも昔は能とか歌舞伎とか絵画鑑賞とか合唱とか、およそ文化と位置付けられるものも元々は娯楽として生じたもののハズである。
それが時代によって大衆のものかある種の階級のためのものかの違いはあるにせよ、そもそもがそんな高尚なものではない。
しかし、次第に伝統芸能になって文化に推移していったんだろうと思う。
その意味で、ポピュラーミュージックもそういう過渡期に入っている部分もあるんじゃないかね。
大衆娯楽としての役割は終わって、ちょっと違う方向に向き始めているのだと思う。
もっとも後年になってもこのジャンルは娯楽の一つという位置付けは変わらないんじゃないかな、とは思うけど、ある種の文化史として位置付けられる状態にはなっているんじゃないかとは思う。
アーティスト側ではいろいろな野心を持って頑張っている人は今の若いアーティストにもたくさんいる。
聞いてもらうためのキャッチーさとやりたいことのバランスの中で苦悶する人もいるし、もはやそうした受けとは完全に切り離した価値観の中でやっている連中もいる。
彼らは一様に「いい音楽を作りたい」と思って勉強もして努力もしている。
そして「(自分たちの作ったものに限らず)いい音楽をたくさんの人に聞いてほしいし、そこで得られる素晴らしい体験を是非味わってほしい」という非常に前向きな人もたくさんいる。
そうした人たちの気持ちを挫くようなことは音楽好きとかを自称するなら言って欲しくないし、本当に憂いるならマニアックと片付けず、ひとまず聴いてみてほしい。
私も全てを好きなわけじゃないし嫌いなタイプの音楽もあるから、好みがあるから好き嫌いはあるにせよ、それは次の話である。
文化として崇めるにはまだ早い。
そんな小難しく考えずとも楽しめる音楽はたくさんある。
与えられるものだけを見て評価しないで、そこにコメントする暇があるなら、そんなアーティストを探してみてくれって。
これだけ情報網が発達しているんだから。
どこにあるかわからない、なんていう人にちょっとでもそんなアーティストを紹介できれば、本望である。