音楽放談 pt.2

SEO強化をしていこう。

小休止140「漫画原作の是非」

イメージ 1

今日は久しぶりに映画を見に出かけた。

私が大好きな『無限の住人』の実写版である。

映画化の報が出た時、そして主演が木村拓哉だと知った時のあのわなわなした感じ、同じく漫画原作で映画化された作品のファンの人であれば一度は味わったことがあるだろう。

キャストは、主人公・万次がキムタク、凛ちゃんが杉咲なんとかという麻婆豆腐のコマーシャルに出てくる子、天津が福士くんで、槇絵さんが戸田恵梨香、百琳さんが栗山千明で偽一は不明、尸良には市原隼人、凶には満島ひかりの弟、といった具合で、役者はそこそこ人気俳優を集めているが、原作イメージを踏襲しているのは誰もいない。

映画の中では、満島弟の凶はそんなに悪くなかったけど、見た目だけでなく役者の演技含めてもはや無限の住人ではなかった。

もちろんこちらも原作通りなど期待していないし、このキャストを見た瞬間から別物と割り切って、あくまで無限の住人の世界観とキャラを使った別の世界だと思って臨んだわけだけど、中途半端に原作を引っ張るからタチが悪いことになっていた。


この映画のダメなところは正直上げて行ったらきりがないのだけど、特にダメなのが物語性のなさ、各人物の描写の薄さ、原作ではもっともポイントとなっている会話や各キャラクタの哲学の省略、無駄に多く登場するだけのキャラクタ、そして何より凛ちゃんのキャラ。

まあ、残念なのはむしろ全キャラで、天津がなぜ道場潰しをするのか、槇絵さんと天津の関係性、人間らしさと不死によるさとりの一歩手前的な万次さんのキャラ、まさに江戸の武士たる吐鉤群の強さ、尸良のクソっぷりなど、本当に不十分。

セリフで善と悪について万次が凛に問うシーンがあるけど、映画の中では凛の主張や存在が正義として描かれていて、他のキャラクタの正義が全くと行っていいほど描かれてない。

同じシーンなのに大事なセリフを削ってしまっていて、それでは彼らの価値観が全くわからないから、共感もできないし、そこにはもう善も悪もないだろう。

キャラで言えば凛ちゃんね。

演じた杉咲なんとかさんは可愛い子だと思うよ。

だけど、舌ったらずな喋り方や、あまりにも幼い見た目で、凛の持っている必死に強気に頑張ろうとする姿が見えず、ただただ万次に甘えて人の手を借りて復讐をしようとする子供以上ではなかった。

途中で急に出ている場面もあるけど、あれも子供の行動以上ではなくて、何かを決意したとも思えないし、ただただ迷惑なだけである。


で、個人的にやっぱり違うなと思ったのはチャンバラシーン

仮に万次の百人斬りというキャラクタ設定を生かすためであれば別だが、そういうわけじゃなくて、たんにやりたかっただけの感じで、やたら長いしあまりに現実的でないし。

そもそも逸刀流がみんな弱いし、万次はそこまで強くない。

不死じゃなかったらとっくに死んでいるくらいの戦いはいくらでもあったし、だからこそ不死であることの意義が出てくるのに。

もっと言えば、1対1を信条とする逸刀流への復讐が軸なのに、チャンバラシーンではそれ以外と戦っていて、逸刀流との戦いがほとんど存在感を無くしている。

ラストでそれをおにぎり食べながら悠々と見ている鉤群も謎だし、あの武士として頑なにあり続けた男が鉄砲隊を引き連れてくること自体がありえないし、あんなに魅力的なキャラの魅力を完全に削ぎ落としているのがびっくりした。

物語をはしょるにしても、もっとやり方があっただろうに。

市原演じる尸良にしても、外道っぷりが中途半端。

それを表現できるシーンもちゃんとあったのに。


いいところをいうと、役者さん自体はこの設定の中でよく頑張っていたと思う。

特に海老蔵は結構原作も読んでイメージを膨らませたんだろうなというセリフ回しや発生だったし。

市原も表情とか頑張ってたと思う。

だから、もっとちゃんと描けばもう少しちがったのに。


今朝シューイチで三池崇史のインタビューがあり、言っていること自体は別にどうとも思わない。

そうだろうなということを言っているし、漫画原作ものについて自分のいいと思うところを表現するんだ、という考え方もそれでいいと思う。

しかし「反対的な見方のファンでもどこかは共感してもらえると思う」ということを言っていたが、私はどこにも共感できなかった。

途中万次が不死で無くなる的な描写もあったことから、おそらくテーマは「武士道とは死ぬこととみつけたり」というところだろう。

原作で万次自身が好きな言葉として挙げるものだし、不死の主人公だからこそ効いてくる言葉でもある。

それ自体は原作でも重要な概念だと思うけど、この映画でそれが描けていたかと言えば疑問である。

原作にはない、死に瀕した万次と八百比丘尼との会話からもそういう話が出てくるけど、こういうところはむしろ無粋だなと感じる。

もっと会話として描くべき部分を端折って、こんな大した意味もないところをセリフにしている。

まあ、万人向けの娯楽作とした場合には、これくらい適当な方がいいのだろうか。

でも、原作を知らない人があの映画でストーリーって理解できるのかな。

とりあえずチャンバラがすごかった、という以外の感想が出てくるのか謎だ。


個人的には漫画原作の映画自体は別に否定はしない。

海外の作品だって結構な数がそうだし、それが日本でもヒットしているわけだしね。

それに原作ファンだから、批判的な一方でちょっと期待している部分もある。

形はどうであれ、こうしてタイトルが注目を集めるきっかけになるのは嬉しいしね。

だけど、この映画って原作が無限の住人である必要性が本当にあったのかがわからない。

それが一番残念だ。


せめて原作の世界観を捉えたこの曲を貼っておこう。