私が好きな漫画の傾向を考えると、、とりあえずある一つのベクトルが見えてくる。
私が中学生くらいの時に流行っていた漫画の一つがシャーマンキングという漫画だったが、話題になり始めたそのタイミングでコミックスも全部売っぱらった。
また、最近アニメがリメイクされているダイの大冒険という漫画も、当時リアルタイムでアニメも見ていたが、ストーリーなどは全く覚えていなかった。
懐かしさもあってアマゾンプライムとかで見ているんだけど、正直ストーリーというか、軸になっている価値観があまりに肌にあわなくて、つまらないなと思っている。
その理由は、主人公たちが絶対の正義で、それは果たされるべき絶対の価値観であるというような世界観に対する嫌悪感にも似た感情のせいである。
私は元々素直な子だったが、色々あってすっかりひねくれてしまった。
おかげでいわゆる勧善懲悪だったり、わかりやすいヒーローが正義でみたいな話には胡散臭さしか感じない。
私はプロレスも好きなんだけど、考えてみればその隙の理由もここに通じるのではないかと最近思うがそれはまた別な機会に譲るとして、いずれにせよストレートな漫画よりもひねりのある考え抜かれたストーリーの漫画はとても好きだ。
最近になって読んでハマってしまったのが、ヤンマガで連載されているらしい『マイホームヒーロー』という漫画である。
先日のアメトークの漫画好き芸人でも名前が出てきていたが、漫画アプリに入っていたので暇な時に読んでみたんだけど、めちゃくちゃ面白い。
あまり語るとネタバレになるけど、物語は娘の彼氏を父親が殺害するところから始まるという非常にエキセントリックな内容である。
これだけ書くとさぞ懺悔に満ちた鬱々としたものをイメージするかもしれないが、この漫画の絶妙さは、その自体の重大さに対して全体にどこか間が抜けていると言うか力が抜けていると言うか、なんだかほのぼのしているのである。
絵の雰囲気のせいもあるけど、主人公はその父親と妻である母、そしてその娘である。
読み初めは設定だったり色々のところが意味がわからないところもたくさんあるにせよ、単純にその展開だけでも毎回唸らせられる。
そして、今14巻まで出ているけど、ストーリーが進むにつれて色々と明らかになってくる部分もあって、今改めて1巻から読み直すと色々の伏線にも気がつくのでまた唸るのである。
この話の面白さの一つが倫理観、法律を含むルールと正義というものの相克のようなところだと思っている。
明確に語られる部分と物語の構造的なところから感じるものとあるんだけど、その辺りの描き方が巧妙なのである。
最初に書いたが、主人公は殺人犯である。
にもかかわらず、読んでいるとこの主人公に感情移入してしまうし、なんなら主人公たちの幸せを願わずには言われないのである。
自分の家族を守るためだったらなんでもやってやる、という思いこそが人間らしさだろう。
この漫画タイトルの意味も読み進めていく中で、そこに込められた意味もわかってくるけど、この漫画は私の中の価値観に非常にマッチするところもあるので、めちゃくちゃハマってしまい、結局KINDLEで全巻買ってしまった。
その価値がこの漫画にはある。
先が気になって仕方ないが、新しいコミックスが出るのを歯を食いしばってまとう。
こうしていくつか衝動的に買ってしまった漫画あるのだけど、上記以外だと『あせとせっけん』というラブコメである。
私が普段読んでいる漫画とは全く毛色が違うもので、フェティシズムから始まった恋愛漫画なので、大まかなストーリーはコンプレックスを抱えた女の子が自分を受け入れて幸せになるまでの物語であるので、非常に古典的なストーリーでもある。
別に何が新しいわけでもないし、他人からみればどういうことはないのではと思うような出来事ばかりだけど、とにかくずっと平和というか、穏やかな世界が展開されていて、絵も可愛らしい感じなので読んでいてほっとするのである。
青年誌なのでセクシー要素もあるものの、割と生々しい大人の恋愛という見方もできるだろう。
この物語では、主人公である麻子さんの個人的な問題が、ある男にであったことで少しずつ解かれていくんだけど、全てを乗り越えるわけではないくて、評価を見るとそこに対して批判的な見方をしている人もいるらしい。
だけど、現実にはなんでもかんでも乗り越えないといけないわけじゃないし、本当に嫌いな奴とは一生関わらない選択肢はあるんだから。
逃げるは恥だが〜というドラマもあったけど、実際そうだと私は思っている。
嫌いな奴とは極力かかわらない、どうしようもないことはうまく折り合いをつける方法を探す、それでいいじゃないか。
とりあえずこの漫画には心底悪い奴がほとんど出てこない。
そういう優しい世界もたまには触れていたいじゃないか、というわけである。
ちょうど先日最終巻も出て完結しているので、よかったらみてみて欲しい。
その意味だと、こちらも漫画アプリで読んでいるだけだが、すけべ心で読みはじめたのに図らずもだいぶ感動してハマってしまったのがこの漫画だ。
『2.5次元の誘惑』という、いわゆるアニオタ、コスプレイヤーを題材にした漫画である。
主人公は高校生で、廃部間近の漫画研究部にガチオタの女の子が入部、その子がコスプレイヤーとして有名になっていく中で主人公たる2次元にしか興味のない男子高生と、その周りの子達も成長していくというちょっと変わった青春漫画だ。
新しいタイプのスポ根漫画ともいえるかもしれない。
エロいシーンもあるので初めはスケベ心で読み始めたんだけど、読んでいくうちに胸熱になっているのである。
一応言っておくが、私はいわゆるアニメオタクではないし、残念ながらアニメのキャラに恋をする感覚はわからない。
もちろん好きな女性キャラクタとか、こういうタイプの女性好き、とかはあるけど、多分普通の感覚以上のものはなくて、リアルの女の子にしくはないと思っている。
そんな私の感覚からすると、いわゆるコスプレの世界のコアな部分にも触れているので、そういう世界もあるのかという興味関心もあるにせよ、出てくるキャラクタが尽く優しいのだ。
嫌な奴がない。
この漫画で主人公がよく発する台詞の一つが、「オタクは人の好きを否定しない!」という言葉だ。
私はジャンルは違うけどオタク気質なところはあるので、この点については非常に共感できた。
私は音楽が好きだしプロレスも好きなので、その辺りについてはついあれこれめんどくさいことを話し出すことがある。
相手は興味ないのはわかっていても、つい楽しくなってしまい後から後悔するのだ。
その時に、「そんなもの何がいいの?」と(笑)みたいな感じで反応する奴とは仲良くなれない。
「なるほど、すまんがわからんけど、取り合えず好きなのはわかったよ」くらいで言ってくれるとその人のことも好きになる。
別に肯定なんてしてくれなくていいし、わからないのは仕方ないとわかっている。
だけど否定だけはしないで、それをされると相手が思っている以上にこっちは凹むし、その人のことを信用できなくなるのである。
アニメオタクとかの人は、そういう思いに晒されやすいんだろうなとは思うけど、この漫画にはそんなやつは出てこない。
後ろめたさを抱えているキャラも登場するが、みんなそれを受け入れていくし、なんなら好きな人しか出てこないから、とても平和なのである。
ここでいう平和というのは、全てが肯定されていると言う意味ではない。
受け入れられているということが大事である。
こちらはアプリ内で読めるところまでしか読めていないけど、こういう漫画って読んでいて嫌な気持ちにならないし、先にも書いたけどコスプレのコアなオタク漫画かと思いきや、結構スポ根的な展開や人間ドラマみたいなものもたくさんあって、面白いのである。
表紙から美少女キャラのちょっとエッチな絵柄なので、書店で購入するにはいささか恥ずかしさもあるけど、この漫画は最近よく言われる自己肯定感だったりコミュニケーションというものを考えさせてくれるいい漫画だと思う。
世界平和ってこう言うところにあるんじゃないかと本気で私は思っている節もあるので。
最後に、なんだかんだ私の中で善悪の話を考える時に素晴らしいと考えると、やっぱりこの漫画の価値観や世界観は大好きだ。
一部カルト的な人気を誇っていたネオ時代劇漫画『無限の住人』である。
アフタヌーンで連載しており、10何年も連載された大作で、数年前に完結している。
アニメ化は2回されており、実写でも木村拓哉主演で映画化もされているが、残念ながらいずれの映像化もこの漫画の本質を完全に欠如していると私は思っているので、是非漫画で読んで欲しい。
主人公は不死の体をもっており、腕を切られてもくっつくし、心臓を疲れても頭を疲れても死なない。
そんな彼をもう一人の主人公である、親を殺された少女が用心棒として雇い、仇討ちの旅に出るというのが大枠のストーリーなので、基本的なプロットはわかりやすい時代劇と言える。
この物語においても正義や悪について語られるところがあるのだけど、その価値観は常に中立で、おそらく見る人によっても感情移入するキャラクタも違うだろうし、だからこそ結末をよしとしない人もたくさんあるだろう。
この物語では、各々の立場や価値観から正義を考えているが、自信を正義と唱えるものは幕府の役人くらいのものである。
面白いのは、彼の言う正義には多分多くの人は賛同できないであろう反面、かといって共感的に感じられるキャラも普通に考えれば悪人なのである。
大体主人公の万次は百人の役人を殺したお尋ね者、敵討ちの相手も市井の道場を叩き潰しまくっているし、その構成員は人斬りに外道ばかり、幕府サイドも罪人の集まりを使役させていたり、役人が多くの人を理不尽な理由で殺していたり、誰がどうみても正義だといえる存在がそもそもいないのである。
だからこそ人間臭いし、世の中一筋縄ではいかないよねという話にもなるし、色々と考えさせられるわけである。
「自ら正義を語るものは世を滅ぼし、自ら悪を語るものが得てしてよを救う」というのは、この漫画の物語においても非常に重要なエピソードの中で語られる台詞であるが、ある種の真理だと思っている。
そうした絶妙なきびを映像作品では尽く落としてしまっているので、見る価値はない。
このような描き方や世界観だけでなく、漫画として絶妙な間があり、静かな展開も好きなんだけどね。
作者も元油絵を描いていた芸術学科出身だったと思うので、絵も綺麗でかっこいいのもあるけどね。
余談だが、この漫画の中での最強キャラはアダ的側の女性剣士であるが、理想の女性と言われるとこの人はかなり上位に入る。
蒔絵さんみたいなクールながら熱い感じ、大好き。
少し前の作品だけど、この漫画は私はことあるごとにおすすめしている。
もっと知られて欲しい作品である。
と、今回は急に最近読んでいる漫画をいくつか紹介してみた。
色々のエンタメ作品がある中で、そこに様々なメッセージだったりを忍ばせている作品は、ある種の芸術と同じ暗い価値のあるものだ。
また、別にWe Are The Worldみたいに分かり合う必要なんて私はないと思っているし、分かり合えると思っていること自体がエゴだから、それによって争いは加速すると思ってる。
大事なことは違いを許容することで、分かり合えない存在でも認めることしか平和はありえないと思っている。
そう言うことを感じさせてくれる漫画は、メインのテーマやモチーフによらず、私は好きになる傾向がある。
善悪なんて立場がかれば変わるし、強いて言えば一面的な正義や悪を自分の価値観ではない背景で語るような奴こそが悪だと思っている。
それも私の考え方でしかないので押し付ける気はないけど、優しさの正体は肯定ではなく受容にこそあると私は思っているけどね。
その観点で本当に救いがなくて読んでいて鬱になる漫画は、『軍鶏』だろうか。