ありがたいことに、最近ではYoutubeで様々なライブ映像を見ることができる。
海外のフェスやテレビ番組、単独ライブでも結構な数が上がっており、なかなか来日しないアーティストのものなんかは特にありがたいものである。
かつてはライブDVDというのものがその手段だったのだけど、今ではその価値が世間的には薄れているのだろう。
しかし、それにもかかわらず敢えてDVDをリリースするアーティストもいる。
例えば、私の好きなやつの中で言えばTha Blue Herbなんかはそうである。
アルバム毎のツアーの模様をDVD化しており、それぞれの段階での彼らのライブを見るのもとても面白い。
今度4月には彼らの20周年の野音ライブのDVDが出る。
私も行ったけど、台風直撃の中でのライブ、10月末でそろそろ肌寒い季節になっている頃であった。
現場ではそんな環境の過酷さもあったけど、曲自体に集中していたかと言えばそうでもなかった。
楽しかったんだけどね。
それをまた違う角度で見るのは面白い。
それにしても、先にも書いたようにこれだけ無料でライブ動画が見られる時代にあって、敢えてDVDで出す意味というのはどこにあるのだろうか。
同じ問題はアルバムに言えるかもしれない。
曲単位で聴く習慣になって久しいが、その中にあってアルバムをどういう意義で出すのかは大きな岐路だろう。
それは一旦置いて置いて、ライブDVDも単にライブ映像を写すだけではあまり価値はないだろう。
単なるファングッズに成り下がりうる。
ちなみに私は先のYoutubeのライブ動画ってあんまり見ない。
別に大層な理由があるわけではなくて、単純に見ていて熱くなれない。
なぜなら粗々のライブ音源を録音しただけのものはやっぱりいまいち足りないのである。
ライブの面白味って、会場の熱量だったり、演奏のバイブスというやつも含めて、それが全部がライブの醍醐味だったりする。
それを映像だけ切りとっても、音は耳だけでしか響かないし、カメラ越しに温度は伝わってこない。
その時点で既に面白味に欠けているのである。
では、映像以外の面白味ってなんだろうって言えば、やっぱりアーティストの表現というのがDVDとしてちゃんとリリースされるものが映し出される。
先のTBHのライブDVDは基本的にライブ1本を丸々写している。
しかし、ただ定点カメラから写すだけじゃなくて、カメラ割りやカットの切り方でだいぶ変わるものである。
実際にLillies and RemainsやBoss名義のDVDでは実際に行ったライブの映像も買って見たんだけど、正直リリーズのライブDVDはいまいちだった。
単純にただでさえ短いライブ時間を敢えて削ってさらに少なくしたというボリューム感に対する満足感の足りなさもあるけど、いまひとつはせっかく全国流通するDVDでこんな素っ気なさでいいのか、という思いもあったからである。
一方のBossのDVDはかなりカット割りも何も凝っているし、その作品として楽しめる要素がちゃんとある。
またNine Inch NialsのDVDもステージセット含めて現場とは違う見え方をするから面白いしね。
結局わざわざ出す価値って何?というと、その瞬間の表現というものを残しておくということだろう。
単なるドキュメントとしてではなく、何を表現したいのか、伝えたいのかということが重要で、私も実感があるけどその瞬間はわからなかったことが数年後にはたと気がつく瞬間がある。
それがアルバムという単位で示されるものかもしれないし、映像として表現されるものかもしれない。
逆に言えば、表現というものにそれほどこだわりがあるほどに彼らにとってそれを残す価値があると思うし、見る側としてもそれが面白くもある。
アーティストという人はすべからく表現する人である。
それを音で表現する人もいれば、言葉、映像、いろんな手段がある。
DVDを出す意味って、結局その映像とかビジュアルで表現する才のある人以外には意味のないものになるだろう。
ファンとしては色々な側面から見られる方が嬉しいし楽しいけどね。