音楽放談 pt.2

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いぶし銀のロックンロール -The Coral

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最近は日本でもまた少しずつ洋楽の人気が回復しつつあるようなきらいがあり、結構コアなアーティストの来日も続いている。
 
まさかQOTSAが2年連続で来日するとは思ってもみなかった。
 
さらにNINもくるし、今年は素晴らしいことだ。
 
しかし一方ですっかり来日のないアーティストも相変わらずいて、例えばBroken Social Sceneなんかそうだ。
 
彼ら周辺のアーティストもすっかり来日がなくて、彼らが大好きな私には非常に切ない事態だ。
 
とはいえ、一度はライブを見たことがある分まだいいんだけど、大好きなのに一度もライブを見られていないバンドもいる。
 
現役バリバリで、音源もライブもずっとやっているのに。
 
そんなバンドの一つがThe Coralである。
 
2000年代前半、The StrokesThe White Stripesらと時を同じくして出てきて本国ではThe Libertines、The Musicらと同時期で新時代の幕開けを宣言したバンドの一つである。
 
リバイバル的な動きの多くある中で、彼らはどちらかといえば伝統的な音楽性であった。
 
伝説の先輩、The Beatlesと同じリバプール出身、音楽性はザ・イギリスな音楽で、Captain Beefheatを彷彿させるようなしゃがれたヴォーカルとフリーキーでサイケな音楽が、明らかに異彩を放っていた。
 
それでも彼らが評価された一番の理由は、何と言っても曲が良かったからに他ならない。
 
ポップでぬくもりがあって、キャッチーでそれでいて独自性満載。
 
私は彼らの音楽は3rdからなんだけど、それから旧譜は全て買って、以降はリアルタイムで追いかけてる。
 
昨年もアルバムを出しており、メンバーの脱退はあったもののデビュー当時から変わらないメンバーでやり続けている。
 
メンバーそれぞれのソロ作もあって、特にメインスングライターでもあるヴォーカルのジェームスのアルバムは本当に最高にいい作品だった。
 
彼の弟のソロ作はサイケ臭満載で、バンドのマジックがどうやって働くかもよくわかるものだ。
 
 
そんなThe Coral、一部の音楽好きからは絶大な評価を得ているには得ているが、大きく売れているかといえばそうでもないというのが実際だ。
 
要するに、世間的にはややコアな部類と言える。
 
しかし、そんな言葉で片付けてしまうには本当にもったいないいい曲満載なのだ。
 
ぜひ今一度彼らに耳を向けてほしい、というのが本稿の趣旨である。
 
 
と、いうわけで代表曲をさらっとご紹介。
 
まずはこちら。
1st アルバム『The Coarl』(2002年)の代表曲、”Dreaming Of You”。
 
アレンジはサイケで初期の破天荒さを伺えると同時に、メロディはとてもポップ。
 
2分ちょっとという尺もあるが、もっとも聴きやすい曲の一つだろう。
 
声質は今も変わらないしゃがれたいい声だが、確かに若さと向こう見ずさを感じさせるのが、いかにもデビュー当時という印象だ。
 
1stからはサイケ臭、フリーキーさ満載のこの曲も見逃せない。
"Skelton Keys"。
 
ビーフハート臭もばっちりだろう。
 
彼らののちのキャリアからは想像しづらいが、不遜な感じもあってとてもかっこいい。
 
実はシンプルなメロディで一聴すれば耳に残るだろう。
 
これがポップだ。
 
 
2ndアルバム『Magic And Medichine』(2003年)では、1stのこうした破天荒さからは一転、彼らの曲の良さが際立つフォーキーな曲が並ぶ。
 
まずはこの曲だろうか。
とても穏やかで綺麗な"Leizah"。
 
1stからの落差はかなり衝撃だが、とにかくこのアルバムの曲は心地いい。
 
ちょうど今くらいの時期に、外を散歩しながら聞いていると本当にいい感じなのでオススメだ。
 
このアルバムで一番好きなのはこの曲。
"Pass It On"
 
どこか諦めにも似た感情がある一方で、後ろ向きではなくむしろ前向きなフィーリング。
 
諦めというよりは受け入れるというところかもしれない。
 
ギターのリフもベスラインも、控えめなドラムも全てが素晴らしい。
 
 
ここでミニアルバム『Nightfreak and the Sons of Becker』(2004年)を挟むんだけど、このミニアルバムはまた奇妙で怪しげな曲が並んでいる。
1st的なサイケでフリーキーな雰囲気を持った"Migrain"。
 
ちなみに中には普通にいい曲もあるんだけど、全体的に皮肉っぽくて毒っ気があって彼ららしくて素晴らしい。
 
このアルバムはサイズ的には3rdとしてリリースしても遜色ないんだけど、制作の仕方ゆえか彼ら自身がアルバムじゃなくてあくまでEPといったそうだ。
 
ぜひチェックしたい作品だ。
 
 
そして私にとっての出会いであった彼らの3rdアルバム『The Invisible Invasion』(2005年)から、まずはこれ。
少し大人になった印象こそあれど、彼らの怪しげなサイケでフリーキーな雰囲気があって素敵だ。
 
このアルバムのプロデュースは、Portisheadのジェフである。
 
いい仕事しやがる。
このアルバムの中のポップの代表といえばこれ、"In The Morning"。
 
彼らのポップな曲は、ポップといえども陽気さというよりは違う感じがあって、現実をそのまま受け入れた上での感情があるようで、それが本当に好きなの。
 
まあ、しのごのいうだけ野暮だ。
彼あのフォーキーさの出ているしずかなグッドメロディは、アルバムラストを飾るこの曲"Late Afternoon"。
 
アルバム通して聞いた最後にこの曲が来た時の夕暮れ感。
 
私はこの曲を聴いていると泣けて来る。
 
 
続く4thアルバム『Roots & Ehoes』(2007年)は、一体何年選手だよ!と誰もが突っ込みたくなるぐらい貫禄満載、とにかくいい曲だけを詰め込んだクラシックと呼ぶにふさわしいようなアルバムであった。
 
刺激的な要素は確かに減ったけど、そんなことは問題にならないくらい素晴らしい曲だけを詰め込んだアルバムは、いつの時代にも同じように響くだろう。
この"Jaquline"とかね。
 
このアルバムにあって比較的ロックなこの曲もかっこいい。
これはライブ映像だけど、あのノエル・ギャラガーも客演している。
 
ノエルも彼らのファンで、このアルバムは彼のスタジオで録音されたと記憶している。
 
 
これまで毎年作品をリリースしていた彼らからすると、このアルバムはリリースに2年をようしており、またこの後のアルバムはさらに3年を経ることになる。
 
まるでベストアルバムみたいなこのアルバムを持ってギターのビルが脱退してしまうのである。
 
1回やりきった感のアルバムをリリースして、さらに長年連れ添ったメンバーの脱退もあって、彼ら自身次に進むべき方向に迷っていたのかなと思うんだけど、そんな中でリリースされたアルバムが、少しとっちらかった印象だと個人的には思った。
 
とっちらかったというよりは、アルバムというよりは曲の寄せ集めというか、そんな印象を受けたのだ。
 
だから、実はこのアルバムについては多分一番聴いていないアルバムでもある。
 
それが5thアルバム『Butterfly House』(2010年)である。
 
改めて聞けばやっぱりいい曲満載だし、イギリスでは非常に人気の高いアルバムらしいね。
アルバムの1曲目は"More Than Lover"。
 
「Good Friend For me」という歌詞も出て来るんだけど、全部をちゃんと訳したわけではないからなんともいえないけど、脱退したビルのことが頭にあるのかな、なんて気もするよね。
 
このアルバムは4thも延長的な印象もあるけど、それよりはどこか落ち着きがないようにはなんとなく感じる。
 
 
それから次のアルバムには、さらに4年を費やす。
 
その間にまた準アルバムみたいな作品も挟んでいる。
6thアルバム『The Curse of Love』(2014年)で、当時日本ではリリースしてすぐの報はなかった記憶だ。
 
全体に覇気がないというか、なんとなく元気がないというか、焦点の定まらないような印象が個人的にはしている。
 
しかし、そこはかとなく新しい方向性も見えているところもあって、その後リリースされた今の最新作を聞くと、ちょうどいい助走だったのだろうかというきもする。
 
 
そして7thアルバム『Distance Inbetween』(2016年)では、また力強い彼らを聞くことができる。
 
これまでよりもより攻撃的な感じもあるけど、新しい方向性をみつけたのだろうか。
 
彼らも大人なので、さすがにデビュー当時のような破天荒さというか、山っ気みたいなものはなくなったけど、その分円熟というものをこれでもかと感じさせる。
 
さらにサイケ色の強い曲調も増えている。
 
 
そして、ようやく再度のブレークスルーかと個人的に思ったのが8thアルバム『Move Through the Dawn』(2018年)だ。
アルバム1曲目を飾る”Eyes Like Pears”のかすみが晴れたような曲調に、「 All My Trouble Seems So Far Away From Me」という歌詞も出てきて、勝手に色々想像してしまう。
 
そして2曲目がまたいい曲なのだ。
"Reaching Out For A Friend"という曲だが、PVの鮮やかさもだし、暗い気分も無理にではなくふきとばしてくれるような明るさが、聴いていてとても励まされる。
 
このアルバムは全編にわたり非常にポップで明るい。
 
作品的にはヴォーカル・ James Skellyのソロ作に近いかもしれない。
 
ラストの曲は静かな夕暮れ時のような風情があって、アルバム全体の構成も本当によく、サイケとポップのバランスも素晴らしい。
 
The  Coral初心者にもおすすめなアルバムである。
 
 
そして今年新作をリリース。
 
もう9枚目になる『Coral Island』(2021年)というアルバムだ。
 
まだ聞き込めていないので、また追って更新できればと思うが、バンド名をタイトルに冠している。
先行して発表された曲の1つ”Vacancy”というサイケ風味満載の曲。
 
PVでは歌詞も表示されて、割とシンプルな単語なので私くらいでもどんなことを歌っているかはわかる。
 
曲のタイトル(Vacancy=空虚、空室)通り、なんとなく寂しい感じの曲ではあるが、悲観的な感じはしない。
 
私の眠る部屋には誰もいない、空虚、ていうのがサビ付近の歌詞だが、最後の方では、私は一人だ、でも自由だ、と歌われる。
 
今この瞬間の、この状況を鑑みてしまうとそう感じる人、状況はあると思うけど、必ずしも悪いことではないのかもしれないしね。
このアルバムからはもう1曲、"Love Undercover"を。
 
かなり重厚なアレンジの曲で、珍しくヴォーカルもくっきりしていない。
 
聞き取りづらいっていう意味じゃなくて、彼らの曲って歌もとても重要な要素なので、こういうアレンジって珍しい気がするな。
 
ともあれ力強さも感じられる演奏で、いい曲である。
 
これからまた聴き込んで行こう。
 
 
そんな感じでさらっといくつかを紹介してみたわけだが、彼らは同世代のバンドと比べると圧倒的に多作である。
 
ベストアルバムにはアルバム未収録の曲もあり、それだけでアルバム1.5枚分くらいある。
 
なんだかんだ私がいいなと思うのって、曲がいいバンドだったりアーティストだったりする。
 
彼らはいい曲を書いているし、ことごとく私の琴線にも触れてくれる。
 
なのに、私がちゃんと聞くようになってからの来日がないのよ。
 
フジで1度あったんだけど、単独とかがなくて私は悲しい。
 
 
ともあれ、流行りすたりとは別なところで、時代に対して普遍性を持っているのはこうしたいい曲である。
 
多分私が50になっても60になっても彼らの曲は聴いているだろう。
 
イギリス臭が強いので、どうしてもドメスティックな活動が主体かもしれないけど、せめてもう1度だけでも、来て欲しいなと思うアーティストである。