ここ2、3年は再結成ブームとて日本でも海外でも再結成に世間が湧いた。
再結成なので、基本的には大御所であるわけで、ほとんどが懐メロ化しており、おっさんファンを喜ばせるのが仕事のような状態である。
ほとんどのバンドには生憎興味ないのであるが、大学の頃から(ようやく)聴くようになり、しかもドンはまりしてしまったばっかりにすっかり喜んだバンドもある。
オルタナティヴの雄、Smashing Pumpkinsである。
グランジ/オルタナブームがまさに燃え上がるその瞬間、Nirvanaより僅かに先んじて世に出た彼らであったが、なぜかニルヴァーナの2番煎じ的な扱いをされてしまって非常にかわいそうな思いをしているらしい。
タイミングが悪かったということであろう。
そんな彼らも2ndの頃にはきちんと評価を確立していたので、実力は本物であったということであろう。
負けん気の強さも功を奏したのだろう。
Smashing Pumpkins通称スマパンは、アルバムごとに少しずつスケール感を増してゆくのが非常に印象的なバンドであった。
1stでは確かにグランジと通じるディストーション・ギター(というか、歪んでいると当時は全てグランジにされてしまったのだろう)、へヴィーなドラムで、正直強烈な個性というよりは良質な種を見るような思いであった。
彼らの楽曲の大きな魅力は、やはり美しいメロディにあるわけであるが、それは既に見えている。
で、2ndではよりへヴィに、よりエモーショナルに進化して、彼らのベストと推す声も非常に多い。
続く3rdでは、スケール感を爆発的に増大させ、曲も静と動を行き来する、非常にでかいアルバムを作り上げた。
そこで確固たる地位を獲得したわけであるが、ここでドラマーがクスリ関係で一時首になる。
そして3人で次のアルバムを作ったわけであるが、音楽性を大きく変更して、打ち込み主体のDepech Mode的エレポップの色合いの強いこのアルバムは、商業的には大コケする。
でも、アルバム自体は非常に美しく、個人的には一番好きといってもいいくらい好きなルバム。
そして何故か日本では好意的に受け止められたらしい。
その後今度はベースがクスリで脱退、逆にドラマーは復帰し、新たにベースを入れてメタル職の強いアグレッシヴなアルバムを作るも、リリースと同時くらいで解散してしまう。
このアルバムは「スマパン復活」と歌われたが、正直自分はそんなに好きでない。
曲は良いし、かっこいいんだけど、なんか女々しさのようなものが強い感じがしてね。
まあそうして解散してしまったわけであるが、その間別のバンドをやったりソロをやったり人のツアーに参加したり曲作ったりしていたんだが、ついに復活となったのである。
しかし、再結成とはいえ、オリジナルメンバーはビリーとジミーの二人だけで、イハもダーシー(オリジナルのギターとベース)は参加しなかった。
そのため世間では「スマパンじゃない!!」という声も多かったし、私もそう思ったんだけど、インタビューやアルバムを聞くうち、なんとなく納得した。
ある意味ではビリーの誠実さというか、一途さのようなもんだと思うんだけど、彼の目指した、本当にやりたいと思った音楽はスマパンでやっていたことであって、そこに必要だったのはギターとドラムであったわけである。
他の形態(別バンドやソロなど)で違うことをやってみたけど、どれもメンバーとの不仲などもあり自分が100%満足できるものではなく、やりたいと思う音を素直に出すとスマパンになってしまう。
しかし、スマパンでないのに「スマパンじゃん」といわれるのを良しとしなかったので、だったら名乗ればいい、となったのであろう。
そして、それをかなえるのに理想的なプレイヤーがオリジナルではジミーだけだった、という話である。
ビリーはジミーのドラムが本当に好きみたいね(別バンドでも二人は一緒でした)。
そんな二人で作り上げた再結成盤は、一聴してスマパンと解る音である。
なんせドラムイントロだし。
そして分厚いギターが続く。
「Machina」よりもスカッとした印象があるし、ストレートな印象である。
好みで言えばそんなに好きになるアルバムじゃないんだけど、ビリーが自分の好きなことを思う存分やってやったぜ、という気持ちの非常に強い曲たちである。
このアルバムはアルバムとしての完成度よりも自分がやりたいことをとにかく吐き出すという目的の下作られたのであろう。
要所要所ではソロやZwanでやっていたことの片鱗も伺えるので、本当に楽しんで作ったんだろうと思う。
いいことだよ。
全体的には、期待されるいわゆるスマパンな曲が多いわけであるが、後半に行くほど少し違った面が見えてくる。
特にラスト曲は今までにない雰囲気の楽曲で、初めて来たときはすごく不思議な感じがした。
スマパンにこういう希望しかないような曲ってない気がするし。
サンサンとやさしい日差しが降り注ぐようなその曲は、向こう側に満足顔のビリーが見えるようである。
「あ~すっきりした」みたいな。
なので、個人的には次のアルバムでより完成度も高く、メロディアスで、それでいてスカッとするようなアルバムを出すんじゃないだろうか、と期待していた。
ところが、先日ビリーは「もうアルバムは作らない!!」と発表しようだ。
i-Podの普及によりアルバムという概念が崩れつつある中で、再結成に対する評価も過去にまとわりつくようなものばかりなのが腹が立ったらしく、曲は出すがアルバムにはしない、というスタンスになったそうだ。
やっぱりタイミングが悪かったのだよ。
どうして雨後のたけのこのように再結成が真っ盛りなときに再結成しちゃうのよ。
この人はあんまり社会には興味ないんだろうな、でもそう言うことはもう少しちゃんと考えろよ、と思う。
まあ、素直な人なんだろう。
でも、私はいまだにアルバムで聴くし、ダウンロードではなくCDを買っている。
1曲1曲で聴くのはすら好きな歌ならいやなわけはないんだけど、やっぱりアルバムとしての面白さって、あるでしょ。
アルバムだからこそ見えてくるものもあるし。
スマパンなんてアルバムのクオリティが高いからこその評価でもあったのに。
今からでも遅くはないので、ぜひ発言を撤回し、アルバム、作るよ、といって欲しい。
そして、日本にもライヴしに来て欲しいな。
一度はみたいバンドですので。