なんだかよくわからないけど、自分の感覚にフィットする音楽というのがある。
もちろん理由を付けようと思えば浮かぶんだけど、そうして列挙しているうちに、あれ?とはたと思うのである。
並べてみたところで、実際はいいと思うからいい、としか言いようがないなあ、ということを。
私にとってはNine Inch Nailsであったり、joy Divisionであったりと、割と暗めな奴がそうだったりする。
なんていうか、曲の持っているムードと自分のフィーリングがすごくマッチする感覚がするんですよ。
心地よくて、どんどん深みに沈んでいくような、そんな感じ。
危ないよなぁ、と最近ちょっと思うけど。
ちょっと疲れているんですよ。
そんな音楽に対して、すごくポジティヴなムードでありながら、同じようにものすごくハマる音楽がある。
そう、Broken Social Sceneである。
既に何枚か書いているので、詳細は省くけど、BSSの一連の作品は、どれも外れなく私の感覚を癒してくれる。
すごく心地の良い音楽である。
早ければ今年新譜を出すんじゃないかと期待を寄せているが、まだ詳報は届かないので何とも言えないが、とりあえず何か本が出るらしいね。
多分邦訳されたものは出ないだろうから手は出ないだろうが。
それに、私が好きなのは彼らの顔ではなく音楽ですので。
別に嫌いって訳じゃないけどね。
で、そんな彼らは前作を出してから4年近く経とうとしている。
最大17人という大所帯バンドで、さぞクリエイティヴィティも高かろう、と思うと意外と長いこと空いてしまっている。
どうしたことか。
とはいえ、昨年もその前も、実は名義を少し変えてスピンオフなアルバムは2枚出しているのである。
バンドの中心人物、すなわちKevin DrewとBrendan Canningがそれぞれイニシアチヴを取ったソロ名義ですね。
BSS本体とは違った味わいのある音楽を展開しており、実に興味深く、また非常に良質なので新作出ずともうきうきである。
そのうちで、今日はKevin の奴を。
Kevinと言えばひげ面(2人ともだけど)で優しい目をしたFeistの彼氏である。
そんな彼はPavementに多大な影響を受けて(2人ともだけど)音楽を志した。
結構高い声なんだけど、それが青臭いというか、そういう空気をすごく醸し出していて、BSSの音楽的要素としても欠かせない。
非常に温かみもあり、いかにも人柄がにじみ出ている。
昨年3月の来日のときも、ライヴ後サインや撮影に快く応じてくれたものである。
そんな彼が音楽的趣味を全開に作ったのが「Spirit If...」。
BSS presents第1弾としてリリースされた訳であるが、BSSのイノセンス的要素を凝縮したような内容になっており、はっきり言ってメチャクチャ素敵である。
印象的にはBSS本体とそれほど変わらない分、ファンに取ってはまさに準新作的に受け入れられたはずである。
本体よりもアンビエント・エレクトロニカ的な空気が強いかな、という印象が個人的にはあるけどね。
アルバム中好きな曲は結構あるんだけど、"Tbft""Fucked Up Kids""Lucky Ones""Broke Me Up"は特にいい。
"Tbft"なんて、イントロの効果音がドラえもんが道具出すときの音に酷似しているんだけど、曲は最高である。
例のドラムパターンも軽快に、アップリフティングな展開はいかにもって感じでね。
ちなみに"Tbft"Too Beautiful To Fuck(馬鹿げたことをするには君は美しすぎる)の略みたい。
いい曲ですよ。
"Fucked Up Kid"は、もう少し切なさをたたえた曲で、詞を読むと捻くれものの視点で描かれている。
すごく観念的な言葉で紡いでいるので、正直意味はよくわからない。
多分色んなところからの引用があるんじゃないかとは思うんだけど。
どの曲も、すごく具体的な経験を詞にしているようなんだけど、いかんせんすべてが個人的な文脈で書かれているから一つ一つの言葉が断片的に感じられるのかもしれない。
アルバムはPressure Kidsという言葉で象徴されるものが通してテーマになっている気がする。
子供の純粋さと、繊細さ、ささやかな反骨心なんて言うものを、うまく表している詞だと思う。
よくわからないけど、感覚だけは理解できるような、そんな感じである。
それは曲のムードにも現れているし、Kevinの声もすごくそれにマッチしているんだよね。
こういう音楽にかくもめり込む自分という奴のメンタリティが、たまにわからなくなる。
もうじき24になるが、なんだか昔以上に潔癖で、単純で、でも捻くれて、なにかにつけ腹が立って仕方ない気がしてしまう。
他人の不誠実さが、不真面目さが、無責任さが、許せない。
それでも、昔みたいにどうしていいかわからずそれらを溜め込むようなことはしないし、むしろ攻撃的な性格になったな、と最近思う。
まあ、ちゃんと社会性なんてもの身につけて入るから、その発散の仕方が変化したってだけかも知れないけど。
BSSの音楽自体もそうなんだけど、彼らの音楽ていうのは、そういう子供じみた純粋さみたいなものと同時に大人のような視点も介在しているんだよね。
わかってる、でも我慢できない、ていう感じというか。
生きていれば、それぞれがそれぞれに色々なものを抱えるようになるし、苦悩しながらも仕方なく良くないと思う方を選ばざるをえない場面だってたくさんある。
それはよくわかっている。
それでも、そうしない人もいる訳で、そこで弱さを出してしまうことへの怒りというか憤りのような感情。
うまい言葉が見つからないが、そういう葛藤が見てくる感じがするんだよね。
あえて分析すれば、私が彼らの音楽にすごく心地よさのようなものを感じるのは、そういうフィーリングだと思うんですね。
ひょっとしたら、当人たちは、いやそんなことはない、というかもしれないが、私はそう思うのであるからそう思うのである。
いずれしろ、この感覚のあるバンドはあんまりないんじゃないかな。
ただ怒りをぶちまけるでもない。
現実に悲嘆する訳でもない。
すべてを拒否する訳でもない
受け入れた上で尚反抗する強さ、というかな、それが大事なんじゃないかしら、と彼らの音楽を聴いていると思うんですね。
これは素直にお薦めしたい音楽です。
特に大人のあなたには。
子供の感性には、まだ理解できない部分があると思うよ。
冗談とかじゃなしにね。