音楽放談 pt.2

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噛み付くように ―SPEAK!!!!

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非常に重苦しいムードに包まれたミニアルバムを経て、次にリリースされたのは超攻撃的で挑発的なアルバムであった。

社会やそれを構成するシステムと言うものに対してかなり直接的に攻撃を展開するこのアルバムは、かなりデジタル処理を導入している点で興味深いものでもある。

「SPEAK!!!!!」というこのアルバムは、キャリア中でもかなりわかりやすい形で尖っている。

歌詞もさることながら、サウンド自体もバキバキに尖っていて、要するに半端じゃない。


冒頭の曲は、"マスメディア"、タイトルからして既にモロストレートであるが、彼らなりのメジャーフィールドにおけるスタンスをここで一つ、固めたのかもしれない。

「頭の固いおっさんは取り残されてゆく/俺とお前は最初から頭の中身がまるで違うんだ」という表現もさることながら、「菜食主義のマスメディア何を恐れている/少しばかりの緊張を俺が与えてやろう」なんて。

徹底的にやってやるよ、という決意表明のようにも感ぜられる。

次も”Public Revolution”ということであるが、この曲には後期マッドに顕著な精神がよく見えてきているように思う。

ややアジテーション的な感覚もある訳で、かなりメンタリティに変化が起きたんじゃないかな、ていう感じかな。

続く”システム・エラー”は、かなりデジタル処理された音がキマっているファストな曲。

個人的にはこのアルバム中で一番好きな曲である。

社会というシステムの中でうまく適応できなくなりそうでも、結局はそこにとどまろうとする人、言ってみれば事なかれ主義にも近いものを批判いているように思う。

気にいらねぇならぶっ壊しちまえ、とでも言いたげなんだけど、それができない連中が多すぎる、といことかな。

TakeshiとKyonoのツインヴォーカル全開な曲なんだけど、そういった面でも非常にマッドらしい曲じゃないかな。

この曲はかっこいい。


その延長のような、あるいはテーマ的には同じといっても差し支えないと思うけど、これまたかなりストレートな”権力の犬”。

マッドの青くさい部分を感じさせる曲なんだけど、そのストレートさがやっぱり重要な場合ってのがあるんだよね。

わざわざ解説するまでもなく、この曲はそういう曲ですよ。

要するにそんな奴は信用できない、ということであろう。

続く"Underground Face"は、そういう犬になってしまった人の内心を少し擁護してやるような内容ともいえるかもしれない。

「ある朝僕は殺された」という衝撃的な下りで始まるんだけど、これはあくまで精神的に、てことだけどね。

パブリックプレッシャーって奴の強大さを表しているのかもね。


で、注目すべき且つ興味深いのが"Solid State Surviver"。

あのYMOのカバーである。

結構意外な感じのする組み合わせである。

スターリンとかならともかく、YMOと言えば一般層にも抜群の認知を含むテクノポップユニットである。

もちろん単なるポップアイコンではなく、今も尚絶大な支持と影響力をもつ3人組である訳だが、それにしたって、という話である。

しかし、彼らの中にあるポップ性や、デジタルの趣向と言うのはYMOの影響によるところも大きいようである。

で、このカバーがメチャクチャかっこいいのである。

オリジナルでは、ゆるいとすら思える中に奇妙な歪さというか、なんかちょっと不気味なムードもある曲なんだけど、マッドヴァージョンは激パンクなハードコアで、これは痺れるよ。

Kyonoのヴォーカルがかなりキーになっていると思うけど、ほんとこいつらのセンスは最高である。


これ以降はやや重たい曲が多く、彼ら独自のポップ性がやや薄れる印象がある。

こういう展開はあんまりないかな、という印象である。

全般的に"Underground Face"的な印象が強い。

ただ、前作のような深みにはまって動けなくなるような重苦しさはないんだけどね。

で、いよいよ終盤と言うところで、インディズ時代の再録曲となる”Goverment Wall”。

このタイミングでこの曲を選んだあたりが、彼らが一つ決意を固めたような証明かもしれない。

ある種開き直りのような歌詞の内容でもあるんだけど、それが彼らの後のキャリアに強い支えとなったのではなかろうか、なんて。


そしてラストは”家畜”。

”権力の犬”の続きのような曲なんだが、こちらはその犬がついに反を翻したような内容である。

「うまく行ったと思っているだろう、飼いならしたと思っているだろう、だけど飼い犬は主人の首をくちぎる隙を待っているんだ」という歌詞が、静かな、しかし強い曲調と相まって迫力を放っている。

曲調もかなり強烈で攻撃的なこのアルバムの中にあって、この曲で締めくくるあたりが実に心にくい。


このアルバムは、はっきり言って曲の粒は一番低いと思う。

おそらくその原因は、他のところに神経をもっていかれていたからだろう。

デジタルな処理をかなり導入し始めたのはこのアルバムからだと思うし、それゆえそうした部分に関心が集中していたのだろう。

もちろん適当に作ったとか、そういう意味でないけど、色々見えてきたんだろうな、という感じがする。

聴く頻度でいうと一番低いものの、そういった意味では興味深い作品であるし、またストレートな作品でもあると言えるだろう。

これ以降、今にいたるマッドのメンタリティがかなり明確になったんじゃないかな、と思うね。