最近またThe Mad Capsule Marketsを聴いている。
何故かと聴かれてもわからないが、たまに無性に聴きたくなるのである。
彼等の音楽を聴き始めたのは高校生のときで、初めて聴いたのは『010』というデジタルハードコアの成熟期的なアルバムで、当時は何故かバンドブーム期のバンドやKing Crimsonとか聴いていたので、彼等の音楽はぶっ飛んだ。
なんだこれ、と高校生の私は結構な衝撃を受けたものだ。
その後大学に入って、引っ越した先で始めて買ったのが彼等の当時の新作『CiSTm C0nFLiqT』だった。
結局そのアルバムがラストアルバムになるとは思わなかったけど、1度だけでもライブを観れたのは良い思い出である。
今聴いても余裕でカッコいい彼等の音楽は、ぜひとも語り継がれて欲しいものである。
さて、そんな彼等について当書庫では時系列にアルバムを追っていたがすっかりご無沙汰になっていた。
改めて書こうかな、なんて思いながら、とりあえず彼等のキャリア前半たるハードコアパンク期~ミクスチャー移行期のベストを挟んで、彼等のベースに迫れればと思います。
早速まずはこの曲から。
わかりやすく攻撃的な歌詞で、若さが溢れている。
”Humanity”はのちにAA=でもその続編曲が書かれている。
それにしても、メンバーの格好が各々全然違うから観ていて面白い。
チンピラ臭丸出しのヴォーカル・Kyono始め、Takeshiはリーゼント、モヒカンみたいに立ち上げているのがモトカツだし。
ちなみにギタリストは2代目のIshigakiであるようだ。
この頃はStalinゆずりの超ハードコアパンクを展開していた。
歌詞も直接的で攻撃的な内容である。
一方で”Dear歩行者天国の皆様”のように、社会と自分という対比の中での葛藤を歌った曲では、彼等の曲でしばしば観られる感傷的というか、影の部分が見えてくる。
ちなみにベスト未収録の曲だが、是非チェックしてほしい1曲だ。
こちらはメジャー1st『POP』から”ハリネズミとポリス”、権力の象徴としての警察を出して、つばを吐きかけるような曲である。
曲自体はポップなのは昔から変わらず、それがやはり大きな魅力だ。
ちなみにこのアルバムのジャケットは南国の風景を使っているが、中をめくると「このジャケットはお捨てください」という文字とともに、おどろおどろしいジャケットが現れるという趣向があった。
若いというか、青いというか、ともあれ彼等の尖りっぷりがよく現れているエピソードだ。
続いてはミニアルバム『カプセルスープ』収録の"GMJP"。
本当は別の曲を載せたかったが、多分検閲に引っかかるので自粛。
この頃から神という概念がしばしば登場するようになるように思う。
音楽的には大きく変わらないけど、歌詞の内容が少しずつ変わってきている頃である。
次は『Speak!!!!』から”マスメディア”、攻撃対象が漠然とした社会から、大きな権力とか仕組みとか、すこし焦点が定まってきている。
このアルバムからサウンド面でデジタル的な要素が強くなってくる。
デジタルといってもギターなんかを歪ませ方が激しくなってきている感じだけど。
その証左と言う訳ではないだろうが、こんな曲もカバーしている。
YMOの"Solid State Survivor"のパンクアレンジ。
彼等のインストはどれもカッコいい。
影響源としてはスターリンが一番強いんじゃないかという初期に対して、この頃から音楽的な充実度が上がってくる。
次のアルバム『MIX-ISM』はロンドンでレコーディングされているのだけど、この頃から少しずつ海外志向が出てきたらしいね。
ベストにも収録された”プロレタリア”は、言っても彼等のパンクソングだ。
このアルバムは全体的に実験色が強いと思っていて、正直アルバム全体で統一感がないと感じる。
その分曲調やメロディなどが後期につながるものの萌芽が見えはじめているのも面白いアルバムである。
特にラストの”黄色いピエロ”はアコースティックな静かで叙情的な曲で、キャリアと押しても変わり種の曲なので、是非聴いてみてほしい。
次のアルバムは、彼等のキャリア前半の総決算的な内容だと思っていて、個人的には最高傑作の一つだと思っている。
相変わらず辛辣な言葉を吐く一方で、叙情的な曲もあるしメロディもポップで完成度も高い。
その中で最近省みられたこの1曲、”Hi-Side”は、ヴォーカルがちょっとラップっぽい感じを取り入れている。
一方で今なお素晴らしいのはこれ。
”公園へあと少し”。
迷いと葛藤と、何かの諦めとか色々な要素が感じられるが、その先にはしっかりと決意も見える名曲だ。
このアルバムで一番好きな曲は、やっぱり”Park”である。
他にも”LIMIT” "パラサイト"など、このアルバムは名曲ぞろいなので是非全部聴いてほしい。
彼等のキャリア前半のラストにして大きな転換点となるのが『4 Plugs』である。
全編英詞でヴォーカルパートも後期の楽曲に近い。
内容も抽象的だし、ここでもBuddahが出てくる。
所謂ミクスチャー的なスタイルを感じられる”WALK!”、これがまたカッコいい。
この映像は日本語詞のようだが、元々はこちらも全編英詞。
Kyonoの声もデス声を含ませた謳い方に変わっている。
そしてこのアルバムではなんと言ってもこの曲だろう。
最期の方まで彼等の代表曲となった”神歌”である。
サウンド的には初期のパンクスタイルながら、曲構成や歌詞、ヴォーカルなどは後期のもので、まさにミクスチャーという中に踏み込んでいった曲である。
ライブでは寄り早いアレンジで演奏されるのだけど、実にカッコいい。
こんな訳で、マッド初期はパンクで社会に唾を吐きかけながら、激しい音楽と激しい言葉で戦っていた。
一方で音楽的には徐々に様々な要素を取り入れて、どんどん成長していく。
元々メロディはポップでわかりやすい音楽なので、より受け入れやすい土壌はあったはずだ。
今聴くと青臭い歌詞ではあるし、音的にはもろスターリンな感じもあるけど、それでも彼等の本質は一環して出ているし、それが私にはいい感じに響いてくる。
世界に飛び出すまでの彼等の軌跡も、ベスト盤でさらっとおさらいできるので、是非要チェック。
そしてベスト未収録の素晴らしい楽曲もたくさんあるので、是非そちらも聴いていってほしいですね。